「いじっていいよ」障害者=笑えない? 芸人の夢をあきらめ…“かすり傷”きっかけで片腕を失った男性に反響
【映像】ブラックジョークの壁どう超える? 片腕男子と議論
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 再生回数800万回を超え、今、人気を集めるYouTubeチャンネル「片腕男子」。

【映像】「ガンだった」大きく腫れた親指(画像あり)

「問題。片腕の僕はどうやって洗濯物をハンガーに掛けるでしょうか? 下から滑らせて掛ける。なので〈椅子を用意する〉が正解。両手でやったらええのに……できたらやってんねん!」(YouTubeより)

 底抜けに明るい内容に、動画には反響が続々と寄せられている。動画投稿者の宮野貴至さん(26歳)は「『元気をもらっています』という声をいただく。元気づけたいから動画を出しているわけじゃないが、結果的に元気になってもらえることにびっくりしている」と話す。

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 腕切断のきっかけになったのは、20歳の頃、バスケットボールで親指にできたかすり傷だ。ニュース番組「ABEMA Prime」に出演した宮野さんは「最初からしこりみたいなものがあった」と当時を振り返る。

「しこりがバスケをしていた時にかすり傷になった。かさぶたになって取れての繰り返しで、なかなか治らなかった。放置した結果、それが悪性腫瘍だった。何万人に一人みたいなものだ。後々に病理検査をしたら最初のしこり自体がもうガンだった可能性もあるし、かさぶたを何度も剥がしたことも何か関係があるかもしれないと言われた。医師からは、解決方法として『切断がベスト』という診断を受けた」

 遺伝子検査の結果、ガンを抑え込む機能を持っている遺伝子に「少し欠損があった」という宮野さん。宮野さんは「かすり傷が原因とは言い切れないが、何かあったらみなさん早く病院に行った方がいい」と呼びかける。

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 YouTubeでは、切断の決断をする際の医師とのやり取りも公開している。公開に至った理由について、宮野さんは「理由は2つある」と話す。

「1つは本当に注意喚起だ。こんなことで腕を取ることになってしまった。2つ目は『実は数年前にどこかを切断しました。今はこうです』という動画はあっても、『今から切断します』という動画を見たことがなかった。見せているものと心の内は一緒で、本当に発信したかった。病気と分かって、腕を取ることになった時から『もう発信しよう』というスイッチに変わった」

 宮野さんは元々お笑いの養成所に通っていたという。片腕を切断した後の暮らしもイメージしていたのか。

「ちょうどこれから芸人をやっていこうと思ったタイミングだった。理想に思っていたことができないと思って、芸人は辞めた。やっぱり、どうしても『腕を取った障害者』というバイアスがかかるからだ。例えば、M-1で“どうも”と僕が出てきたら『腕どうしたんだろう?』が先に入る。それが嫌だった。憧れていたものがそこじゃない。どうしようかなと思って、一番身近にあったYouTubeを選んだ」

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 これに対し、お笑い評論家のラリー遠田氏は「ちょっと色眼鏡で見られちゃうようなところはある」と述べる。

「日本の社会は、障害を持つ人に対して『どうやって接したらいいか分からない』『気を遣ったほうがいいのかな』と過剰に考える。お笑いを見る時にも、その気持ちやイメージを引きずる。起用する側の方も『この扱いでいいんだろうか』『何か問題が生じないだろうかと』と考えてしまう」

 動画が大反響を呼んだ後も、時にブラックジョークを交え、くすっと笑える動画を配信し続けている宮野さん。片腕を失い、漫才を諦めた自分にしかできない新たなエンタメを作りたいと意気込んでいる。

「障害×笑いみたいなものが、まだそれほど開拓されていないと思う。カッコよくいうと、パイオニアみたいな感じになりたい。そもそも障害を持っている人で死ぬほど面白い人がいない。1回、トークライブみたいな企画をやって、YouTubeの視聴者さん30人ぐらいに来てもらえた。終わった後に握手会があってプレゼントをもらった。普通に『どうぞ』と言われて、縄跳びをもらった時に『いや、できひんねん!』といったやり取りができた。僕の『いじっていいよ』という気持ちが伝わっているんだと思った」

 とはいえ、今や障害だけでなく、容姿や体重、身長など、見た目をいじるような笑いには批判の声がある。多様性への配慮について、ネット掲示板「2ちゃんねる」創設者のひろゆき氏は「見た目をいじることと『手がない』はちょっと違うと思う。ブスや美人などの表現は評価の言葉だ。手がある・ないは事実だ。そこの受け止め方も考える必要がある。腕がないのは誰がどう見たってないのだから」と指摘する。

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 お笑いコンビ「ぺこぱ」の松陰寺太勇は「最近の風潮だと、例えばバラエティ番組のひな壇で、そういういじりがあった時、昔なら間髪入れずに笑えていたのが今は一拍空いてしまう。本人がそれを良しとしてやっていても、正直『これ笑っていいんだっけ?』となっているのが現状だ」と話す。

「ただ、難しいのが『これ笑っていいんだっけ?』と思うパターンと、シンプルにつまらないパターンがある。フラットに『面白いかどうか』で見なくちゃいけないが、今はいろいろな要素が入ってきてしまっている。今、宮野さんはYouTubeでネタをやられているが、いつか舞台で何かやってほしいなと思った。どういう世間の反応になるか気になる」

(「ABEMA Prime」より)

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