自民党内からも慎重論や延期の声が相次ぐ「マイナンバーカードと保険証の一体化」。岸田総理大臣も「現場の声を聞きながら対応」とするなか、河野デジタル大臣は改めて「延期する考えはない」と明言した。
【映像】「2024年秋にこだわる必要ない」 保険証廃止に自民党からも“慎重論”
2024年秋を目途に現行の保険証を廃止し、“マイナ保険証”としてマイナンバーカードへの一体化を進めている政府。一方、現場では「他人の情報が誤って登録される」「資格情報の確認ができない」などのトラブルが発生している。こうしたトラブルについて、岸田総理は6月21日「(保険証の)全面的な廃止は、国民の不安を払拭する措置の完了が大前提だ」とコメントしている。
現行の保険証廃止が延期される可能性はあるのだろうか。『ABEMAヒルズ』に出演した東京工業大学准教授で社会学者の西田亮介氏は次のように指摘する。
「(第1派閥の安倍派の有力議員から延期の声が出ているので)延期もありえる。それにしても、岸田総理も河野大臣も不誠実だと感じる。『国民の不安』と述べるが、事実としてマイナンバーカードをめぐる行政トラブルは生じている。問題の規模をどう見積もるのか、大きな問題と捉えるか、小さな問題と捉えるかは議論の余地がある。ただ、実際に様々なトラブルが生じているのだから、単に『国民の不安』というのは明らかに間違いだ。政府や行政の課題を認めることが出発点だ」
続けて、西田氏はマイナンバーカードへの一本化についても考えを明かす。
「デジタル化されてマイナンバーカードに統合した方が、便利なことは多いかもしれない。ただし、住民票を取る機会はそもそも多くないし、マイナ保険証に一本化する最大のメリットは、国民ではなく行政のコストにある。紙の保険証は配布するコストや更新するコストが生じるが、マイナンバーに保険証などの情報を統合することで、紙のコストを減らすことが期待できるし、複数あるとマネジメントコストも当然高くなる。2024年秋に一本化したいというのも、行政の都合が優先されている。
世論調査でも『拙速だ』という声は多い。高齢者の人たちにしてみれば、紙の保険証のほうが慣れていて安心だという人もいるだろう。行政コストの視点を無視するのであれば、紙とデジタルどちらの選択肢もあるほうがいいに決まっている。実際にトラブルが出ていることを考えるとやはり拙速だし、行政の都合だ」
さらに、西田氏は「マイナ保険証に一本化しても各種病院への通院情報などが一本化される世界は、すぐには訪れない可能性が高い」と述べた。
「現状は病院ごとで個人情報管理のやり方が紙だったりデジタルだったりとバラバラだ。そういった状況を考慮すると、マイナンバーカードに一本化されても病院情報が自動で統合されることはないだろうし、そうすべきでもない。また、飲んでいる薬などの個人情報は『知られたくない』という意見もあるし、重要な個人情報だ。何かしら同意を取る仕組みが必要になってくるはずだ。
過去の事例を思い出してみると、『消えた年金問題』では、当時の社会保険庁が解体されて日本年金機構に変わった。それでも問題は解決していない。最悪なケースは、マイナカード自体が使えなくなることだ。政策的には、あまりに評判が悪くなると『やっぱりやめよう』ということもありえなくはない」
(『ABEMAヒルズ』より)
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