最低賃金引き上げも「生活は苦しい」 物価上昇、上がる社会保険料… 自分の賃金を上げるためにはどうしたらいいのか?
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 今年度の最低賃金の目安額が全国平均で初めて時給1000円を超え、1002円となった。41円の引き上げは過去最大となる。

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 労働者側からは「時給1000円で年2000時間のフルタイムで働いても年収200万円のワーキングプア水準にとどまる」、使用者側からは「最低賃金の大幅な引き上げとなれば地方の中小企業中心にコスト増に耐えかねた廃業・倒産が増加する懸念がある」といった声が上がっている。

 この最低賃金の引き上げについて、『ABEMAヒルズ』に出演した経済アナリストの森永康平氏はこう解説する。

「大前提として、賃金が上がっていくことは良いことだ。ただし、今回の最低賃金の引き上げは物価上昇に合わせた形で起きている。物価上昇には2種類あるが、日本で起きている物価上昇は、コロナやウクライナ侵攻の影響で原油や天然ガスといったいろんなものの価格が上がってしまったため、『仕方なく価格転嫁』しているだけ。もう1つの物価上昇は、消費者の需要をみて企業側が行う値上げによって起こるもの。本来は後者の需要を押し上げる形のインフレが起こった結果、儲かった分で給料を上げるといった良いサイクルを回していかないといけない。岸田総理は経営者に賃上げをお願いしているが、政府がまず経済を成長させなくてはならない」

 コストコの「時給1500円」というニュースも話題になったが。

「本国で儲かっている外国企業は日本で時給1500〜2000円を提示しても支障はない。ただ、このまま放っておくと力のある外国の企業が日本に進出してきて、日本のリソースを奪ってしまうことが起きる。今回のコストコの件は小売なのでまだいいが、インフラ系の産業が入ってくると、日本の技術者などが外国の企業に持っていかれて、技術が流出するリスクもある。そのため、日本の企業がちゃんとした賃金を出して、海外と競争力をもてるような状況を作っていかないと、安全保障の面でも大きな問題になりかねない」

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 そして、賃金のことでよく問題とされるのがアルバイトやパートの「年収の壁」。最低賃金が上がったことで、手取りが減らないようにと“働き控え”が増えてしまったら人手不足に拍車がかかるがこれはどう考えたらいいのか。

「2つ考えがあって、1つは制度を変えること。壁となる年収を上げる。最低賃金が引き上げられていく中で制度だけ変わらないとなるとどこかのタイミングで歪みが生じてしまうので、制度をフレキシブルに変えること。2つ目は、働き手が減ることをボジティブに捉えて、AIやロボットを使っていく発想も大事だ。ただ、初期投資がかかるためそれができるのは大企業だけで、中小零細はできないという問題もある。だから僕は、経産省の会議などで国が支援していく重要性を提言している」

 また、物価上昇や社会保険料が上がり、生活が苦しい人も少なくないはず。自分の賃金を上げるためにはどうしたらいいのか。

「厳しいことを言うようだが、自分が高い給料を払ってもらえる人材になっていくしかない。岸田政権のリスキリングは新しいスキルを学ぶことに対して補助金を出してくれるので、身につけたいスキルがその講座の中にあるなら、制度をうまく利用してなるべく支出を減らして自分の価値を高める自助努力も大事になってくる。また、何を学んだらいいのかがわからない場合は、『自分が何を学んでスキルを上げれば給料にダイレクトにつながるのか』を戦略的に考えるといい」

(『ABEMAヒルズ』より)

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