将棋の伊藤園お〜いお茶杯王位戦七番勝負第4局が8月15・16日の両日、佐賀県嬉野市の「和多屋別荘」で行われ、挑戦者の佐々木大地七段(28)が藤井聡太王位(竜王、名人、叡王、棋王、王将、棋聖、21)に初勝利。シリーズ成績を1勝3敗とした。藤井王位を相手に、自身の得意戦法「相掛かり」を採用して快勝。タイトル奪取にはここから3連勝が必要と厳しい戦いが続くが、「変わらず開き直って淡々と指したいと思います」とクールにコメントしていた。
“夏”はまだ終わらせない。佐々木七段が若き絶対王者・藤井王位に挑むダブルタイトル戦「十二番勝負」継続へ、大きな1勝を手にした。本局は、佐々木七段の先手で得意の相掛かりの出だしに。「6八玉型の相掛かりもやってみよう」と自身のバリエーションの中から作戦をぶつけた。1日目は互いに持ち時間をたっぷり投入。「本譜は先に横歩を取られてこちらの主張をどこかで作らないといけないという展開になり、危険な筋もあったのでかなりリスクを負った序盤となってしまった」と振り返った。
1日目夕方には、藤井王位の浮き飛車が佐々木七段の金による飛車取りになり、二択の局面で封じ手に。飛車を切って一気に決戦になだれ込む激しい展開も予想されたが、藤井王位の選択は天王山に飛車を回る一手だった。終局後、藤井王位は「飛車を切る手も考えたが、駒損の形で清算が持てないかなと思っていた。本譜は飛車の配置が悪くて、ちょっとずつ苦しくなってしまう展開にしてしまった」。55分を投入して指し掛けとした手順に後悔する場面もあった。
2日目に突入しじりじりとした中盤戦では、陣形を整え合う展開に。藤井王位は銀を前に出て戦いへの整備を続ける中、佐々木七段が主導権を握るべく飛車角交換を狙う角打ちを決断した。「後手の駒が前に出てきたので、飛車を取れる展開になればこちらも狙いができるかなと思っていた。他に有力な手もわからなかったので、あまり見ない筋ですがそれに懸けるしかない」との狙い通り、ここから形勢は挑戦者側へ。異筋への角打ちは藤井王位をもってしても「見落としていた」と振り返る目の覚めるような一着となった。
藤井王位は「何をやっても苦しい局面にはなってしまっている」としながらも、8筋から猛追。「一応攻め合いの形になったので、何とかアヤを付けられればと思っていました」と佐々木七段に勝負を挑んだ。リードを広げていた佐々木七段も「局面に自信がなかった」。神経戦とあり「実践的に迫ろう」と着実に寄せを目指し、最後は「たまたま見つけた」という角打ちで藤井王位を即詰みに討ち取った。
3連敗で後が無くなった佐々木七段が手にした大きな一勝。終局後は疲労困憊の様子で、「なかなかポイントがわからずに、終始難しいかなと思っていました」とコメントした。藤井王位との夏はまだまだ終わらない。次戦も負ければ終わりの厳しい戦いに挑むことになるが、「変わらず開き直って淡々と指したいと思います」。注目の第5局は8月22・23日に徳島県徳島市の「渭水苑」で指される。
(ABEMA/将棋チャンネルより)