ごく普通のサラリーマンが億万長者に。『ABEMAヒルズ』では、資産35億円を手にした男性に「FIRE」のメリットやデメリットを聞いた。
SNSで資産状況や日々の生活を発信するMasaさん。働いていない状況を表現するため、「資産35億円のニート」を自称しているが、8月にさらに増えて36億円になった。(※定義上、ニートという言葉は35歳以上には使われない)
「僕の目標は(生涯で資産を)使い切ること。上げすぎても“使い切る目標”を達成できない」(Masaさん、以下同)
SNSでは華やかな生活ぶりが目立つが、現在40代のMasaさんは大学卒業後、就職して間もなく節約と貯蓄を始めたそう。
「朝早くから夜遅くまで仕事をしていて、より労働に縛られないFIREへの思いが一段と強くなって、そこから本格的にFIREを目指そうかと」
FIREとは、「経済的自立と早期リタイア」を意味する言葉で、早期退職し、会社からの給与収入がなくても投資の運用益(不労所得)で生活できる状態のこと。
アメリカで生まれたライフスタイルだが、日本でも関心が高く、「FIREをしたいと思うか」と聞いたアンケート調査(Alba Link不動産総研 調べ)では、「とても思う」「まあ思う」と答えた人が78%に上った。
「一番は仕事のストレスがないこと。サラリーマン時代に長時間労働していて人間関係で悩んでいたこともあったが、そのストレスが全く、今はほぼノーストレス」
他にも、「家族と過ごすなど、自由な時間を楽しめる」「好きな時に好きな場所で生活でき、旅行も満喫」「新しい趣味にチャレンジしやすい」など、利点は多いという。
しかし、良いことばかりではないそうで、自由時間が増える分、暇な時間を過ごすことが苦痛だとMasaさんは話す。贅沢な悩みにも思えるが、平日に時間があっても仕事をしている友人らとは会えず、働いていた頃のような達成感が得られないなど、社会との距離や孤独を感じることもあるそうだ。
さらに最近、ショックな出来事が……。
「無職だと社会的信用力がないと感じることがいつもあって。資産は私35億円あるのでそれなりに支払い能力はあるのに、なぜかクレジットカード審査に落ちてしまい……。審査内容(の基準)を見ると、やっぱ“定期収入がある”であったりとか」
FIREを成し遂げる=無職になるということ。社会的な信用を失うというのだ。35億円も資産がない普通の人は、どうすればFIREを実現できるのか。FIRE事情に詳しいマネーコンサルタントの頼藤太希氏も、想定外の支出や将来の収入について検討の必要性を指摘する。
「自分や家族が大きなケガや病気した時にお金を用意しないといけない。働くことをやめると、厚生年金を脱退するので、65歳からもらえる年金額が減るということを意味する」(頼藤太希氏)
さらに、FIREの継続には、まず十分な資産が必要だ。その目安に、「4%ルール」がある。
アメリカの株式の年平均成長率「7%」から、物価上昇率「3%」を差し引いて計算されたもので、生活費などの支出を投資で得る利益の範囲内に抑えられれば、資産を目減りさせずに生活を続けられる、という考え方だ。
つまり、1カ月の支出を25万円、年間支出300万円と仮定すると、その25倍の7500万円の資産が投資のために必要となる。さらに、投資の利益変動や物価上昇など、不確定な要素も加わる。
「市場が暴落してから回復するのに、1〜3年くらいかかる。そのため生活費の1〜3年分は、預貯金として持っておくと比較的安心だ。医療費や介護費は別途用意しておく必要があるので、まずは預貯金をしっかりと用意しておくこと」(頼藤太希氏)
FIREを実践するMasaさんにも、堅実な面が垣間見える。
「アメリカン・エキスプレスのセンチュリー、ブラックカードの招待は来ていたが、年会費が高すぎて……。そこにステータスは求めていないし、お金の管理については非常に気を遣っている。周りから『資産30億円あるとなくならないでしょ。使い切れないでしょ』という声もあるが、数億円あろうが数十億円あろうが一瞬で破産する」
将来、Masaさん自身の子どもにも、FIREはお勧めできるものなのか。
「こればっかりは…。どうかな…。まずはリスクしか多分言わないとは思う。たまにFIREをしていて苦痛に感じる時もあるが、FIREをして良かったという思いの方があるので、もし子どもが(FIRE)をやりたいと言ったら、応援したいなと思う」
(『ABEMAヒルズ』より)