9月1日で関東大震災から100年。「首都直下地震」が近々発生するとも言われていることから、デジタル技術を使って次の世代に「防災」を伝えようとする東京大学大学院の教授を取材した。
東京大学に置かれている7面ある大きなディスプレイ。そこには震災直後の空撮写真とその場所の“今”を重ねた映像が映し出されている。
現在の東京・浅草は、浅草寺など歴史ある建物や近代的なビルが共存していて、2022年10月の水際対策の緩和以降、多くの外国人旅行客が訪れている。
実はこの浅草、関東大震災当時は木造建築が軒を連ねていて、そのほとんどが全焼。しかし、写真をみると、浅草寺一帯だけが境内に植えられた樹木に守られたのか、まるで「陸の孤島」のように焼け残っている。
現在の江東区。隅田川の対岸にある月島には、何棟もの高層マンションが建ち並んでいる。そんな月島も地震が発生した正午前、多くの家庭で昼食の準備をしていたことから、建物火災によって立ち上る煙が空一面を覆った。
「驚くのが今の東京と道などほとんど一致している。たくさんの人が居住しているところが100年前は埋立地で、当時はほぼ全滅だったことがわかる」
こう話すのは、この映像を手がけた東京大学大学院の渡邉英徳教授。「1枚の地図に落とし込めば、被災状況をより実感できる」という想いでデジタルアーカイブを作ったと話す。
「もし、同じ規模の地震が東京で起きたら、全焼することはないかもしれないけど、甚大な被害が大きいのは間違いない。そういうことを再確認させてくれる」
そんな渡邉教授にはもう一つ取り組んでいるものがある。それは白黒写真のカラー化だ。白黒写真をどのようにカラー化するのか、復興する浅草を撮影した写真で教えてもらった。
まずリアルな色に近づけるため、当時の人が残した「作品」を参考にしながら最新のAIで写真に色をつける。絵の具などで彩られた着物から色をサンプリングして上から塗り直し、模様はそのままにスプレーのように色づけしていく。
こうして白黒だった写真に色がつき、写っている人たちの表情が生き生きしているのがわかる。1枚をカラー化するのに約2カ月。渡邉教授は、半年かけて10枚の白黒写真を生まれ変わらせた。
「100年前の災害を今に色を取り戻してよみがえらせると、今後起きるかもしれない災害と重ね合わせやすくなる。恐らく被災した時に僕らがこんな体験をするかもしれない」
空撮写真やカラー化された写真は震災から100年を迎える9月1日から11月26日まで国立科学博物館に展示される。(『ABEMA Morning』より)