路上ライブを公認しているまちが千葉県にある。アーティストをまちのシンボルに―。市と共同で制度を作った団体の代表に話を聞いた。
千葉県北西部に位置する柏市。夜になると、まちにはある“変わった光景”が広がる。午後6時ごろ、駅前のデッキには多くのアーティストの姿が。実は柏市は、ストリートミュージシャンが登録して自由に演奏できる町だという。
全国的にも珍しい“路上ライブ”公認のまち。柏市と共同でこの制度作りに携わる市民団体「ストリートブレイカーズ」の五十嵐代表はこう話す。
「登録制が基本的なコンセプトになる。周囲の人にも理解して頂いて『こういう音楽がある街もいいな』と思ってもらえる範囲でルール化していきたい」
「サムシングエルス」や「ナオト・インティライミ」らを輩出し、古くから路上ライブが盛んに行われていた柏市。その一方でこんな問題も。
「2000年代前半は市民からの苦情も多くなってしまった時期だった。ドラムやアンプを使いだして、ミュージシャン同士で“音量競争”みたいに音が大きくなっていくこともあった」
騒音問題に加え、道路使用許可を取らない演奏などが警察に問題視される路上ライブ。禁止されている場所も存在するなか、柏市はアーティストと街が共存していくために様々なルールを決めたという。
「当時の柏市役所は非常に理解があった。『この人たちを排除するのではなく、柏の賑わいを作ってくれるキャストなんだ。一緒にルールを作ってストリートミュージシャンを“まちの名物”にしていこう』と」
通行人への配慮に加え、騒音の原因となるアンプの使用や無許可での販売など道路交通法で禁止されている行為はできない。また、演奏できる時間は午前10時から午後10時までと定められた。
こうした決まりを守ったうえで演奏を行うアーティストたちに話を聞いた。
「そこまでデビューしたいとか契約したいとかはない。たくさんの方と出会いたいのが一番かな」(ピアノ教室の先生・canaさん)
「好きなことをやりたいのが一番。中年の楽しみです」(夫婦2組ユニット・2×2)
中には柏からブレイクを夢見る人も。
「柏のアイドル『ハステル』です!よろしくお願いいたします~!」
柏市を拠点に活動する、2人組ユニット「ハステル」。この日も足を止めてくれた人たちの前で、元気いっぱいのパフォーマンスを披露していた。
「多くの方が駆けつけてくれて新しい方も見てくれてすごく嬉しかった。柏を拠点として、全国に広げていき、東京ドームやフェスに出たい」
足を止めてアーティストの演奏に聞き入る人たちはどう思っているのだろうか。
「まちに音楽が流れている空気がすごい素敵だなと思う」
「(子どもが)歌とか音楽とか踊りが大好きなので。寝る時間は過ぎているんですけど、本人が楽しそうなのでいいかなと」
今や、SNSをきっかけに有名となるアーティストも存在する中、不特定多数の人の目に触れる路上ライブはアーティストの“新たな魅力”を引き出すと五十嵐代表は話した。
「多種多様な人に見てもらえるチャンスがあるし、自分の音楽に興味を持っていない人をどう振り向かせるかみたいな、ミュージシャンとしての技量も上がっていく。そういった“偶然の出会い”がやる側にも聞く側にも魅力になっている。ミュージシャンの人たちは本当に『宝』だ。若い人にとっての“チャンスの場”になって欲しいし、年代の高い人たちにもリラックスできるような場にしたい。音楽を楽しむまちになったらいいなと思う」
(『ABEMAヒルズ』より)
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