安倍派“下村外し”の裏に森喜朗元総理? 下村博文氏「憤慨している」「口を出すならもう一度議員に」 土下座については「全く事実と異なる」
【映像】森元総理に「邪魔された」と批判する下村氏
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 8月31日、自民党最大派閥「安倍派(清和政策研究会)」が新体制を発足させた。会長は置かず、15人の常任幹事会で重要事項を決める「集団指導体制」に移行した。座長には会長代理を勤めていた塩谷元文科大臣を据えたほか、稲田朋美氏や西村康稔氏など、大臣経験者が選ばれた。

【映像】森元総理に「邪魔された」と批判する下村氏

 そんな中注目を集めたのが、下村博文元政調会長。塩谷氏と同じく会長代理として派閥の運営に関わってきたが、今回なぜか15人の幹部には選ばれず、メディアの見出しには『下村外し』の文字が並んだ。

 下村氏に対する質問で記者から「今回の人事をめぐって影響が強かったとの見方もあるが」と名前が出たのが、政界引退から10年以上経つ元派閥会長で元総理の森喜朗氏(86)。今年7月には安倍派の5人衆と会食し、新体制をめぐって意見を交わすなど、いまだに大きな存在感を残している。

 なぜ自民党の長老はこんなにも力を持ち続けるのか、そして安倍派が向かう先は。『ABEMA Prime』で下村氏に聞いた。

■「森さんから嫌われている」「人事をやるならもう一度国会議員になっては」

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 森元総理の影響力について、下村氏は「当選4期以下の人たちは直接森さんを知らないが、ベテランに対する影響力はいまだに残っている。私からするとちょっと残念な状況だ。派閥に現職の国会議員が100人いる中で、森元総理には大所・高所から、ロシアやウクライナの問題などの政策的な部分でアドバイスをしてもらいたい。人事をやるのであれば、もう一度国会議員になって一緒にやってもらったらどうかと思う。(本人には)言っていない。そこまで邪魔されると思わなかった」とコメント。

 さらに、「私は森さんから嫌われている」と話す。「文部科学大臣の時に出た新国立競技場の問題で、デザインをザハ・ハディド氏から隈研吾氏に変更した。東京オリンピック・パラリンピックについては間に合ったが、森さんが責任者を務めた2019年のラグビーワールドカップの決勝戦はできなかった。もちろん私1人で提案したわけではなく、担当大臣として前面に立ったもの。安倍政権としても“とても国民の皆さんの理解は得られないだろう”ということだったが、それ以来恨まれていることが今回も現れている」。

 中には、会長就任をめぐり下村氏が森元総理に土下座をして謝ったという報道がある。これについては「長幼之序という部分では敬意を表している。新国立競技場の問題の時も、最終的には当時の安倍総理と菅官房長官、それから私と遠藤総務会長の4人で官邸に森さんをお招きし、安倍さんからお願いするという段取りも踏んだつもりだ。今回も安倍派の会長を決めるべきだと思っていたから挨拶に行ったが、土下座とかそんなものはない。一方的に地方新聞に書かれたということで、非常に憤慨している」と反論した。

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 元経産官僚で制度アナリストの宇佐美典也氏は「安倍さんが亡くなり、森さんが良くも悪く安倍派の重しになっていると思う。ただ、森さんが独断で決めたかというと、5人衆なり15人の幹部の合意があった上で新体制はできたのではないか。下村さんは政調会長までやった重鎮で、この先大臣や総理を目指す立場だとすれば、5人衆にとっては“目の上のたんこぶ”。そこは彼らと森さんと利害が一致したのだろう。逆に、政治家の本分として下村さんがどれだけ巻き返せるかが楽しみだ」と話す。

 これに下村氏は「的確なご指摘だ。私は2年前の政調会長の時、総裁選挙に出ようとしていたが、結果的には出られなかった。そして、5人の方々もそれぞれ“自分がいずれ”という思いを持っている。森さんの思いと重なって一致したところもあったと思う」との見方を示した。

 「安倍派を離れる考えはあるのか?」。率直な質問には「私だけ孤立していると思われているようだが、同じような意見を持っている人は派閥の中にたくさんいる。大臣、あるいは党の三役や四役、また憲法改正実現本部の中で外されてしまったというなら別だが、派閥の中のポストや座長がどうだというのは政策論争ではない。政治を実行していく中では関係ない話だ」と答えた。

■安倍派の分裂は? 「あるかもしれない」

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 下村氏は「やはり会長を決めるべきだ」と訴える。「清和政策研究“座”じゃないんだから、座長ではなく会長を決めるべきだ。安倍前会長がお亡くなりになって、1年間は喪に服そうということで、塩谷さんと私で会長代理をやってきた。安倍さんがまいた種はたくさんあり、残った我々が思いを継いでその花を開かせるというのは責務だ。名前に『政策』がついているのも清和政策研究会だけで、やはり“何をやりたいのか”“どう日本を変えていくのか”。100人集まることによってそれを実現していこうというのが派閥なわけだから、そのためには会長を置いてしっかりやっていくべきだ」。

 会長にふさわしい人物については、「塩谷さんがなりたいと言うのであれば支えるし、いなければ手を挙げようと思っていた」とした上で、「今の座長は過渡的なものだし、会社の社長が15人もいるというのはあり得ないわけだ。人事においてきちんと交渉能力を持つという意味でも、“会長が決められないから座長だ”となると、政策能力なり人的能力を自ら下げてしまうんじゃないか。そういうことをすごく危惧している」と懸念を示す。

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 安倍元総理を失い、派閥内での理想や解釈にずれは生まれないだろうか。「そこが問題だと思う。自民党の党是でもある憲法改正や、皇室存続の問題、周辺諸国が非常に厳しい状況の中での外交防衛政策、共同親権やLGBTの議論、アベノミクスもまだ道半ばだ。そんな中で、ただ好き嫌いで人事を決めるというのは、まさに国民からしたら何をやっているのか?という話。井の中の蛙みたいなものだから、やはり政策論争をもっとしっかりしていかないといけない。今は国難の時で、政治家として問われているのはまさにここ。これからの清和研でも最も重要なことだと思う」と述べた。

 今後、安倍派が分裂していくことはないのか? 下村氏は「あるかもしれない。例えば来年の9月の総裁選挙の時にどうするかということもあるかもしれない」と答えた。(『ABEMA Prime』より)

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