勝利目前の兄弟子に“最強の弟弟子”が、かわいらしくも懸命な“お祈りポーズ”だ。将棋界の早指し団体戦「ABEMAトーナメント2023」本戦トーナメント準決勝・第2試合、チーム藤井とチーム稲葉の対戦が9月16日に放送された。第3局はチーム藤井・齊藤裕也四段（26）と、チーム稲葉・出口若武六段（28）が対戦。齊藤四段が優勢のまま終盤を迎えたところで、勝利を決定づけるような一手が見えた弟弟子・藤井聡太竜王・名人（王位・叡王・棋王・王将・棋聖、21）が思わず「早く打ってください、お願いします！」と、祈るシーンが生まれ、ファンの反響を呼んだ。
【映像】藤井聡太竜王・名人、兄弟子に「お願いします！」の瞬間
今大会のチーム藤井は、藤井竜王・名人、澤田真吾七段（31）、齊藤四段という、東海地区出身の3人によるチーム。中でも藤井竜王・名人と齊藤四段は杉本昌隆門下で、入門時期が早かった齊藤四段が、藤井竜王・名人の兄弟子にあたる。プロデビュー以来、数々の記録を打ち立て現在は8つあるタイトルのうち7つを保持する藤井竜王・名人に引っ張られる形で、大会初出場の齊藤四段もフィッシャールールの対局を重ねる度に、徐々に実力を発揮していた。
第3局で齊藤四段がぶつかったのは、叡王のタイトルに挑戦もしたことがある出口六段。齊藤四段は先手番から中飛車、後手・出口六段は居飛車の対抗形で始まった。序盤から作戦勝ちになり序盤・中盤と有利に対局を進めることになった齊藤四段だが、形勢がいいことを自覚したのか、終盤に向けて思うように手が伸びない。この様子を察した藤井竜王・名人も「手が伸びませんね。のびのびやってほしいんですけど」と心配そうにモニターを見つめていた。終盤、両者ともに見落としがあり瞬間的に形勢不明となることもあったが、再びリードした齊藤四段に、勝利を決定づけるような局面が訪れた。
出口玉を左辺から攻めたが、2二の地点に持ち駒の金を打ち込めば、挟撃によってさらに追い詰められる。早速気づいた藤井竜王・名人は「早く2二に打って下さい、お願いします！」と手を合わせてお祈り。さらに「早く！△7四角には▲6二銀打てますから、大丈夫です」と相手の反撃に対しての手まで解説し始めた。すると願いが通じたのか、齊藤四段の指は駒台へと伸び、金をしっかり2二の地点に打ち込んだ。藤井竜王・名人も「いや、打ってくれた」とホッと一息。対局もそのまま齊藤四段が97手で勝利を収めた。
控室で楽しげに仲間の対局を見守る様子も好評の藤井竜王・名人だが、兄弟子への思いは他棋士と少し違うのか、必死に祈った様子にファンも反応。「聡太にお願いされたい」「ホッとしてて草」「打ってくれたぁｗ」「聡太のお願いかわいい」と、その様子に多くの反響が寄せられていた。
◆ABEMAトーナメント2023 第1、2回が個人戦、第3回から団体戦になり、今回が6回目の開催。ドラフト会議にリーダー棋士14人が参加し、2人ずつを指名、3人1組のチームを作る。残り1チームは指名漏れした棋士が3つに分かれたトーナメントを実施し、勝ち抜いた3人が「エントリーチーム」として参加、全15チームで行われる。予選リーグは3チームずつ5リーグに分かれ、上位2チームが本戦トーナメントに進出する。試合は全て5本先取の9本勝負で行われ、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。優勝賞金は1000万円。
（ABEMA／将棋チャンネルより）
