近い将来、日本は数百万人規模の働き手不足になるという調査結果がある。1つの会社に留まらない多様な働き方が広まりつつある中、東京・有楽町で9月13日、副業やフリーランスで働く人など、いわゆる外部人材の活用を促進するイベント「HiPro Direct Networking Day 2023」が行われた。
イベント会場には外部人材の活用を考える企業や、様々な分野で活躍する外部人材が参加し、交流が行われた。
「(外部人材を)今後必要に応じて入っていただくというところも検討できたらと考えている」(建設系 人事担当者)
「うちの会社の社員も、副業など両方の動きがないとうまくいかないのかなと思った」(人材系 経営企画部 部長)
パーソル総合研究所の調査によると、2030年には国内の労働需要に対して、実際の働き手は644万人不足するという試算もある。こうした中、外部人材の活用に注目が集まっている。経済産業省も、「副業・兼業支援補助金」の公募を開始するなど、国を挙げて副業・兼業の促進を図っている。
イベントを主催した、外部人材のマッチングサービスを行う「HiPro Direct」を手がけるパーソルキャリア株式会社の大里真一氏は、国が副業を促す動きを見せる中、未だ多くの企業が外部人材の活用に消極的だと話す。
「個人の方と直接契約をする。ここに一番、いろいろな観点で障壁を抱えている企業が多いと思う。情報の取り扱い、働き方、プロジェクトに入ってきたときのオンボーディング(研修など)の仕方。いろいろなところにまだ見えない部分があるので、その辺りの不安はかなり大きいようだ」
外部人材のマッチングサービス「HiPro Direct」にでも、1万5000人ほどの登録者数に対し登録企業数が1000社ほどと、採用市場とは真逆の“買い手市場”になっているという。
二の足を踏む企業が多いという外部人材の活用だが、企業にとってどんなメリットがあるのだろうか。
「新規事業など、フレキシブルに業務そのものが変わっていくケースにおいては、専門的なスキルを持った方を専門的な業務に入れていくのは親和性が高いので、社員を抱えるリスクを最小化したい企業にとっては非常に良い選択肢だと思う」(大里氏)
また、個人にとっても副業にはメリットがあるという。
「もちろん“収入が少し増える”みたいなところもあると思うが、個人的には一番リスキリングや、新しいスキルを取得していくのが非常に大きいと思っている」(マーケティングのプロとして副業する土方貴文氏)
今後もイベントの開催やサービスのアップデートを通じ、日本の“働く”を多様にしていきたいと話す大里氏。目指しているのは“スキル循環社会”の実現だと話す。
「副業したいとなったら、まずは今までの経験を棚卸しすること。そして自身の強みをちゃんと理解すること。どういう案件なら対応できるかといったものをすり合わせながら、自分の挑戦したい案件を見つけていくのがいいと思う。1人が1社で働くだけではなくて、企業からしても多様な人材に入ってもらい、いろいろな刺激・還流を作っていただきたい」
副業する際のメンタルの保ち方、心得を精神科医の木村好珠氏に聞いた。
━━需要が高まる副業をどう思う?
「私は賛成。日本は『分業』が苦手な社会で、『1人で全部を知っていなければならない』といった風潮があるが、個人がその道の専門として知っているのであれば、リスペクトしてそこを任せるのはすごく重要」
━━コスト面などを考えても分業した方がいい?
「コスト面で言うと、人それぞれ苦手があるのに、まずそれを1人1人に教えなければならない。例えば、ITについて一から全部教えるのにはかなり時間と金がかかるが、ならばそこは分けて専門家に任せた方がいい。働き方の面でも、リモートワークなど働き方がかなりフレキシブルになり、私たちも会社もそれに合わせないといけない」
━━副業など、二足のわらじは働く側のハードルが高い?
「全部をこなそうと思うとかなりきつい。だからこそ、自分のできること・できないことをしっかりと分ける。そして、自分はマルチタスクが得意なのかを把握してほしい。副業で大変なのは“自分でスケジューリングすること”なので、自分で優先順位を立てて、できる・できないを理解している人は上手くいくと思う。しかし、それがまだ理解できてない状態だと頭が混乱してしまうと思うので、まずはそれを整理できる状態なのかを知り、少し余裕のある環境を作るのも大切。副業には向き不向きがあると思う」
━━職場・仕事が増えて、心理面で気をつけることは?
「まず、自分の疲労に気付くこと。企業だと労働時間を管理しているが、それも自分で行うので、ライフワークバランスが乱れていないか気をつける。また、人間関係が増えダブルできついのではないかと思う人もいるが、どちらかというと、自分の所属が2つあると頭の中も分散できる場合がある。仕事の悩みを一旦別の仕事で置き換えられるなど、実は副業の利点でもある。『私はここではちゃんと評価されている』という、自分が否定され続けて悩むことも軽減される場合がある」
━━コミュニケーション面で気をつけることは?
「お互い積極的にコミュニケーションを取るべき。『自分が全部できる』と背負い込みがちだが、できる・できないや、自分の時間が空いていることなどをしっかり言っておかないと、揉めたり副業自体を否定される原因になる。副業だからと引け目を感じて『できる』と言いがちだが、自分のプロフェッショナルを渡す場なので、ちゃんと自分のできる・できないはコミュニケーションを取ってほしい」
(『ABEMAヒルズ』より)
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