「タレントや芸人の感想より専門家にニュースの背景を解説してほしい」「素人の芸能人コメンテーターの感想ならヤフコメで十分」など報道番組のコメンテーターについて、ネットでは芸能人より専門家の意見を聞きたいというコメントが見られる。
一方で、「芸人のコメンテーターが忖度なく自分の意見をちゃんと言っている」「キャスターよりも芸能人の方がいいこと言ってるし共感できる」との声もあり、起用の是非を巡り意見はさまざまだ。
報道番組に芸能人は必要なのか。19日のABEMA Primeでは田村淳、室井佑月、山田邦子らと専門家を交えて議論。起用を巡る裏事情にも踏み込んだ。
報道番組に芸能人は「必要ない」と田村淳
番組MCを務めるタレントの田村淳は「報道番組に芸能人は必要ない」と言及。そのうえで「報道番組ではないニュースを扱う番組があってもいい。支持されれば番組は続くし、支持されなければ終わるだけ。井戸端会議でいい番組には芸能人が出たっていい」と述べた。
お笑いタレントの山田邦子も「言葉で生きている人間だから、こうした場を与えられれば大いに喋りたい。ガチガチのニュース・報道にタレントはどうかと思うことはあるが、番組を見ていても誰なんだろうという人ばかりでしゃべってるとつまらない。ちょっと勉強が足りなかったとしても自分の知っている人がその人の言葉でしゃべってくれたほうが身近に捉えられるということはあると思う」とコメントした。
元民放の報道プロデューサーによると、芸能人コメンテーターの起用には「視聴者目線に立って話すことができる」「番組を見てない視聴者の興味を惹ける」「専門家にない新たな視点で話せる」という利点があるという。
パックンは「“視聴者目線で物事が話せる”と言うが、芸能人ほど特殊な生活してる人はいないだろう。サラリーマンをやったことないのに、その話題の何が分かるのか」と指摘。
そもそも「コメンテーター」という役割ができた経緯について、MediaBorder発行人の境治 氏は「報道番組におけるコメンテーターの端緒はおそらく、ニュースステーションに出演した朝日新聞・編集員(当時)の小林一喜さん 。それ以来、ジャーナリスト系の人物がコメンテーターとして出演するスタイルでやってきた。小林さんは専門家としてではなくニュース全般にコメントする立場だった」と、解説した。
起用された芸能人も忖度して発言する必要?
山田は「コマーシャルを抱えているタレントの場合、やはり少し偏る。あるハンバーガーのCMをやっていたら、同業他社のことは言えない。局や番組によっては、“絶対にこれは攻撃しない”とか“ここは守って言ってくれる”という人を使っている。でも、視聴者はそれを見抜いている」と述べた。
2020年5月に米山隆一衆議院議員と入籍した小説家・タレントの室井佑月は「夫が衆院選に立候補したら、番組前日に出演がなくなったところが多かった。“公平性のため”と言われたが、私は20年言うことが変わっていないのに、すごく変な話だ。家族でも息子が出る場合は良いのかなど、ルールが曖昧な点に違和感がある」と自身の経験を明かした。続けて「政府が発表したことを流さなければいけない時がある。ただ、専門家にも政府紐付きの人がいて、批判に見せて擁護する手法を使う人も多い。タレントや専門家という括りではなく勇気をもって発言できる人のほうが良い」と指摘した。
コメンテーターは、時に番組で話した内容が切り抜かれてネットニュースになることもある。どういう思いでコメントしているのか。
田村は「竹島問題について『国際司法裁判所で争うべきだ』と言ったら、韓国系のスポンサーがついているレギュラー番組を降ろされたことがある。本音を言うと仕事がなくなるんだと実感した。それでも、どこまで本当のことを言いながら生きていられるかを目指したいし、そんな奴がいたほうがいい」と起用を巡る事情に言及。
これを受け室井が「議論する番組がすごく減ったと思う。両極端な意見を聞いた上で“自分の判断”をするというのは、もっとできるようにしたほうがいいんじゃないか。その意見は専門的な人じゃないとできないけど、そこにプラスするかたちで芸能人もいたらいい」と話すと、パックンは「話が上手だからという理由だけで芸人をキャスティングしたら、議論のレベルは下がる」と反論した。
キャスティングする制作陣、視聴者も問われている?
コメンテーター自身だけでなく起用する側も問われるのではないか。山田は「いい時間帯に、ある番組とその裏番組で、同じ事務所のアイドル系タレントが出ていたりする。それがメインで使われていたりすると、これはどういう稼ぎ方なのかなと思う時がある。もっと良い人材がいるかもしれないのに、“人気者だからこれで良い”というように製作陣が楽をしている。それで自分もしばらく稼がせて頂いたが」と言及。
テレビ朝日の田中萌アナウンサーは「本当のコメントという意味では、よほどの専門家か、当事者・経験者以外できないと思う。それ以外は、自分のフィールドに持っていくエピソードトークなどを入れる場合がほとんど。ただ、視聴者はそれを見たい場合もある。需要と供給がマッチしているので、芸能人がこうして出演しているのかなとも思う」と述べた。
議論を踏まえ、境氏は「今までの報道番組は上から目線な部分があった。特に2010年代後半にそれが肥大して、文春砲をバッと浴びせたらテレビが一斉にそこへ向かうような時期があった。局関係者に聞くと、今はワイドショーでも激しく言わなくなっている。テレビに問われていることは課題を示して解決を“話す”こと。解決に至らなくても良い」と指摘。そのうえで「専門家とタレントは両方いて良い。タレントが出るメリットは議論を楽しくする、親近感を感じさせること。それができるのがテレビの得意技だと思っている」とした。
田村は「報道番組で街中のインタビューがある。あれは編集して流されるわけだが、“すごく偏っているのではないか”と思って、自分の番組で「順番にインタビューしたものを順番にそのまま放送する」ということをやったことがある。そうしたら、話がまとまっておらず、とてもじゃないけどそのまま流せなかった。だから編集が必要なんだけど、このことを知らないで“誰かの意思が反映されている”と思う人もいる。そういうものが入っている番組もあるし、入っていない番組もあるので、見極める力を視聴者もつけなきゃいけない時代に入っている」と述べた。
(『ABEMA Prime』より)
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