余裕すら感じさせる強い指し回しに、相手のリーダーも思わずボヤキ節だ。将棋界の早指し団体戦「ABEMAトーナメント2023」本戦トーナメント決勝、チーム永瀬とチーム稲葉の対戦が9月23日に放送された。優勝経験があるチーム同士、注目の決勝カードとなったが、結果はチーム永瀬がスコア5-0のストレート勝ちで2度目の優勝。リーダー永瀬拓矢王座（31）は2度の後手番で連勝し、大会の最多勝と最多対局賞をダブル受賞した。この充実ぶりにリーダー稲葉陽八段（35）からは「おいしそうに水を飲みはる…」とボヤキまで出た。
チーム永瀬とチーム稲葉は、同じグループAに入り、この時はチーム稲葉がスコア5-2で勝利し、予選1位通過。チーム永瀬は強敵・チーム豊島を下して予選2位で激戦グループを通過した。その後、苦しい戦いをくぐり抜けてきたチーム稲葉に対して、チーム永瀬は永瀬王座が後手番を引き受け始めてから絶好調。チームも上り調子となり決勝でのリベンジマッチにこぎつけた。
第1局、チーム永瀬は本田奎六段（26）が登場すると、チーム稲葉はリーダー稲葉八段が自らチームに弾みをつけようと自ら出場したが、本田六段の冴えた指し回し、逆に稲葉八段は本来の調子が出ない様子で、本田六段が97手で快勝を収めた。
苦戦が続いていた後輩棋士の快勝を見て勢いづいたのが永瀬王座だ。戦略的に後手番を引き受けていた永瀬王座は、服部慎一郎六段（24）と横歩取りの将棋に。序盤から飛車に動きをつける新手を見せると、チーム稲葉の控室では出口若武六段（28）から「おおお、知らない手が来た。これは知らない」、稲葉八段からも「なんだこれ」という言葉が漏れた。
豊富な研究量がわかる工夫で早くもリードを奪った永瀬王座は、優勢を自覚していたのか、手元に置いていた水を時間をかけてゴクリ。これを見た稲葉八段は「いやー、おいしそうに水を飲みはる…。はー」と、ため息混じりにボヤくと、ファンからも「かわいい飲み方や」「水を飲む余裕」という反応が起こっていた。
その後も完全にペースを握った永瀬王座は終盤、とにかく手堅い手に終始して92手で快勝。強さと充実ぶりが際立つ一局は、ストレート勝ちへと加速する内容だった。
◆ABEMAトーナメント2023 第1、2回が個人戦、第3回から団体戦になり、今回が6回目の開催。ドラフト会議にリーダー棋士14人が参加し、2人ずつを指名、3人1組のチームを作る。残り1チームは指名漏れした棋士が3つに分かれたトーナメントを実施し、勝ち抜いた3人が「エントリーチーム」として参加、全15チームで行われる。予選リーグは3チームずつ5リーグに分かれ、上位2チームが本戦トーナメントに進出する。試合は全て5本先取の9本勝負で行われ、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。優勝賞金は1000万円。
（ABEMA／将棋チャンネルより）
