“サンマ水揚げ一転好調”。朗報のように聞こえるこの報道でSNS上に“ある憶測”が飛び交っている。
【映像】「中国が獲らなくなりサンマ“豊漁”?」SNSで飛び交う“憶測”
「今年はサンマが豊漁になりそうな話だけど、処理水の放流で中国が獲らなくなったのかな?」
「今年は中国がサンマ盗らないから豊漁なのか」
サンマ“豊漁”の報道を受けて、SNS上で飛び交う憶測。こうした声に対して、東京海洋大学の勝川俊雄准教授は、根本的な誤解を複数指摘する。
「そもそもが『豊漁』ではない。水揚げが“増えている”などの報道がされると、一般の人は『魚が増えたんだな』『サンマの数が戻ってきたんだな』と勘違いしてしまうし、“今季最高”と書かれると『絶好調なんだな』と思ってしまう。事実ではあるけれども、漁業のことを知らない一般の人には間違った印象を与えがちな報道が多い」(勝川准教授、以下同)
勝川准教授によると「短期的に水揚げが好調だとしても、歴史的に見て豊漁だったころとは全く違う水準だ」という。実際、太平洋のサンマの分布量調査の結果などから、シーズンを通して見てみると、今年も去年同様に漁獲量は少ないと予測されている。また、サンマはこれから水揚げが増えていく時期にあたるため“今季最高”が更新されるのは「当たり前だ」とのこと。
さらに、SNSの「処理水放出により中国が獲らなくなった」という投稿には「いまも中国は公海でサンマを獲っている」と述べる。
「あまりにも漁業や海のことがわかっていない投稿だ。中国漁船がサンマを獲っているのは太平洋の真ん中あたり。日本からは距離があって、海流的にも分離されている場所だ。つい最近始まった、福島から放出された水の影響はない」
こうした投稿の背景には「中国が獲ったからサンマが減った」という考え方がある。しかし、中国が本格的にサンマ漁を始めたのは2012年ごろからで、サンマの資源量はそれより前からすでに減少傾向にある。
「“中国が獲っているからサンマが減った”というのは、そもそも無理がある考え方だ。ほかにもよく見られる『中国が密漁をしている』という話も間違い。中国がやっている漁獲は日本が公海で獲っているのと同じで正当な漁獲だ」
サンマの漁獲に関する世界的な課題は、漁獲規制が緩いために各国が乱獲状態になっていること。サンマが減った理由は特定されていないが、減ってしまった以上は国際的な枠組みでサンマが増えるまで漁獲を抑制できるような枠組みを強化していくことが必要だという。しかし、いまのメディアやSNS上の議論では、こうした課題が見えづらくなっている。
「『中国が悪い』と過剰に反応してしまうことで、サンマ資源の減少の本質的な問題に関心が向かない。理解が深まらないことを非常に危惧している」
(『ABEMAヒルズ』より)
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