“文科省 vs 財務省” 教師不足めぐり真っ向対立 財政審委員「ふわっとした予算要求をして、後から国会議員が乗り込んでくることが他の役所より多い」
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 この夏、文科省が計上した来年度予算の概算要求は5兆9216億円。内訳を見ると、教員定数を増やすために128億円、給与アップのために8億円、授業以外の仕事をサポートする教員業務支援員については今年度の倍以上となる126億円を計上。教員の勤務環境の改善に重点が置かれるものとなった。

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 しかし10月11日、財務大臣の諮問機関である財政制度等審議会は「『ヒト』も『カネ』も『モノ』もではなく、いかに持続的・効率的に学校運営を図っていくかを検討すべき」と指摘。つまり学校運営について、厳しい財政状況の中であれもこれもではなく、効率的なのかどうか精査すべきだとした。また、人手不足は多くの業種の共通課題であることや、教員の給与が一般行政職より高いとした上で、負担に応じたメリハリある給与体系の必要性などが議論された。

 「教育認識が疑問だらけ」との批判もある中、問題があるのは文科省の要求か、財政審の認識か。『ABEMA Prime』で議論した。

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 財政審委員で経済学者・慶応大学教授の土居丈朗氏は「生徒数の減少に比例して教員を配置するのが基本。つまり、教員も同じペースで減らすのだが、実際はまだ比例しておらず、そこは財務省も予算として認めているところだ。文科省側は“教育の質を上げるため”“教員不足だ”などの理由をあげるが、そうした言い分は何年も前からある。そこに対して、“全然変わっていないではないか”“あの時の言葉を忘れていないか”と投げかける財務省と、相変わらず“予算をくれ”と言う文科省。そういう構図だと捉えている」と説明。

 財務省の本心はわからないとした上で、「数字やデータを示して欲しい。文科省の『生徒の数ほど教員は減っていないものの、多忙さが改善されていない、お金を出しても現状が変わらない』という主張に対しては、そろそろ別のことに手を入れるべきではないかと。もちろん文科省も頑張っているが、もう一押し、二押しをやっていただきたい」と話す。

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 財務省の教育認識の在り方に疑問を投げかける、フリージャーナリストの前屋毅氏は「財政審で示された表だけを見ると、教員は足りていることになる。しかし、現実はそうではないわけだ。例えば、今年の初めには高知県の教育長が街角に立って、“教員になってくれ”と呼びかけた。学校現場を取材すると、校長や教頭の大半が教員を確保するため、辞めた人たちに個人的に電話をかけている。財務省の数字はこの現実を把握できているのかと、信用できるのかと疑問に思っている」と指摘。

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 土居氏は「私は一教育者なのでその立場も非常によくわかる。特に地域的な偏在、都市部の学校の先生になりたい人は多いが、過疎部の地域ではそれほどの人気はなかったりする。ただ、財務省が予算を渡した後、各都道府県にどう配るかは文科省が決める役割分担になっているのではないか。財務省としては、“ちゃんと予算はつけた。例えば(深刻な教員不足に悩む)高知県で教員が足らなくならないように、お金の配り方の工夫があるのではないか”ということだと思う」との見方を示した。

 時事YouTuberのたかまつなな氏は「精神疾患で休職する教員は5900人で過去最高になっていたり、中学校の先生の3割が過労死ラインを超えている状態はどう考えても異常だ。そこに予算をつけない、先生を配置しないのは明らかにおかしい」と主張する。

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 土居氏も「異常」だと答えた上で、「霞が関の官僚の残業も問題になっていて、“過労死競争”みたいな話をしても意味がない。教員も役所の方も、職場環境の改善はきちんとやっていく必要がある中で、学校の現場ではまだやりようがあると思っている。例えば、給食費を先生が集めている学校がいまだに65%あるが、それを市の窓口に振り込むようにしてもらうことで教育現場の業務量を減らす。そういう話は文科省が言っているわけだが、現場に徹底されていない。今回の財政審の会議では、“文科省が良いことを言っているのだから、トップダウンでお墨付きを与えて、全国でしっかり取り組んでくれ”というのが1つ。家庭訪問なんかも、オンライン化すれば負担を軽減できるではないか。もちろん対面の意義もあるが、忙しすぎるのであればコツコツと負担軽減を図っていく。一方で、各地方の教育委員会が決めることで指図するものではない、というような気後れが文科省にある。良い取り組みは財務省も応援しているので、そこをやってほしいということだ」と応じた。

 前屋氏は「“とにかく金をくれ”“金をやらない”という今の議論では、大事な部分が抜けている。何のために教員の待遇を良くして、学校現場の環境を整えるかというと、子どものためだ。財政審の資料を読んでも“子ども視点”が抜けているように思うが、それは文科省も同じこと。そこの議論をやってから“お金はやっぱり必要だ”となるはずだが、文科省も説明に腰が引けている」と述べる。

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 土居氏は「悪く言えば、文科省は“大体これだったらいいだろう”というような、霞が関用語でふわっとした言い方で予算要求をする。文科省と教育現場は一枚岩ではない部分があるが、予算要求となると呉越同舟、同床異夢で、増やせと一緒に要求する。そのため、財務省が『何が欲しいのか、本当のところを言ってくれ』と言ってもなんだかよくわからない。それでいて、予算を削ると言うと文教族の国会議員が乗り込んできて、“こうしろ、ああしろ”と押し切ってしまう。文科省は残念ながら、そういうことが他の役所よりも多い。子どものためにどういう教育が必要なのか、どういうかたちが良い教育につながるのかについて、少なくとも最小公倍数で意見が一致するところをきちんと示した上で、“これを成し遂げるために、こういうかたちで予算をつけてください”としっかり訴えていくことが必要だ」とした。(『ABEMA Prime』より)

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