これぞ“おもしろい将棋”の真骨頂!?藤井聡太竜王、安全な勝ち筋を辿らずスリル満点の最短距離を爆進した一手
【映像】「え!?ちょっ…」解説者を驚かせた藤井竜王の一手

 百戦錬磨の解説棋士も、笑うしかなかった。将棋藤井聡太竜王(名人、王位、叡王、王座、棋王、王将、棋聖、21)に伊藤匠七段(21)が挑戦する第36期竜王戦七番勝負が10月17・18の両日、京都市の「総本山 仁和寺」で第2局が行われ、107手で藤井竜王が勝利を飾った。白熱の最終盤では、藤井竜王が最短距離で勝利に近づくスリル満点の一手を披露。解説からは「え!?ちょっ…」「正直ド肝を抜かれました」と声が上がる場面があった。

【映像】「え!?ちょっ…」解説者を驚かせた藤井竜王の一手

 前人未踏“八冠独占”の興奮から一週間。喜びも束の間、藤井竜王は早くも防衛戦に臨んでいた。対するは同じ2002年生まれの新鋭・伊藤七段。本局は先手番の藤井竜王が、連勝を目指し得意の角換わりを志向した。「先後逆で端を突き合っている形で類型がある展開かなと思いますが、こちらが仕掛けてという将棋で、攻めが細いので微妙なところかなと思っていました」と語った藤井竜王だったが、伊藤七段が「あまり想定していなかった」という展開へ。「攻め合いを妥協した」という挑戦者を突き放すように、藤井竜王ペースでの進行となった。

 中盤以降は、伊藤七段が長考を重ねて持ち時間を消費。「自信のある順が見つからなかった」と語り苦しい時間を過ごしていたことを伺わせた。ABEMAの「SHOGI AI」は藤井竜王優位ながら大差なく終盤戦へ。藤井竜王は38分の考慮の後、「人間には指しにくい」とされた相手陣目掛けて金を打ち付け強い踏み込みを決断。入玉の選択も見せつつ、後手の出方次第でいかようにも対応する隙無しの指し回しでリードを拡大していった。

 本シリーズで初めてタイトル戦の舞台に上がった伊藤七段も簡単には折れない。最終盤では劣勢の中でも渾身の長考を経て、角捨ての勝負手を放ち藤井竜王を揺さぶった。さらに先手玉の上部脱出を阻む角打ちなど迫力ある手順を見せたものの、藤井竜王は動じない。5分の少考ののち角の利きを通したまま玉を引いてしのぐ選択に、中継に出演した聞き手の貞升南女流二段(37)は「え!?ちょっ…」。解説を務めた鈴木大介九段(49)は、藤井竜王の着手直前に「(玉引きは)危険な発想」と指摘していただけに、「おっホホホホ!いち早く勝ちに行きましたね、スゴイな。正直ド肝を抜かれました。大丈夫なんですね!」と笑わずにはいられなかった。

 最速・最短で勝ちを目指した藤井竜王だったが、ABEMAの「SHOGI AI」は83%から57%まで評価が急降下。各所に後手の駒の利きが張り巡らされているように見える配置となった。それでも“これが最短”の見立て通り、最後は銀打ちを見た伊藤七段が投了を告げ、藤井竜王がスリリングな終盤戦を鮮やかに勝ち切った。

 八冠達成直後、藤井竜王が次なる目標に掲げたのは勝数や戴冠数ではなく「おもしろい将棋を指すこと」。自身が思う将棋の面白さにも触れ、「将棋は取った駒を持ち駒として使えることがひとつの大きな特徴で、それによって中盤、終盤と局面が進んでいくにつれて複雑になっていくのが面白いところかなと思っています。私も将棋を指す中でそういった局面に出会えたらいいなと思いながら指しています」とコメントしていた。

 偉業達成から初の防衛戦に臨んだ藤井竜王は、早速そんな“おもしろい将棋”を表現。観戦者側からすればややスリリングとも言えるが、危険をいとわず勝利への最短距離を爆進するような終盤戦に「おもしろーい」「神の遊びか…」「これが面白い将棋か」「どうしてこうなるの?」「ひええ最速こわ」と大興奮。藤井将棋の真骨頂とも言えるような一局を存分に堪能した様子だった。

 “同学年対決”は藤井竜王が2連勝で防衛に前進したものの、まだまだ続く。10月25・26日に福岡県北九州市の「旧安川邸」で行われる第3局ではどのような激戦が繰り広げられるか。今後の対局からもますます目が離せない。

(ABEMA/将棋チャンネルより)

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【映像】藤井竜王VS伊藤七段 第2局「京都対局」ハイライト
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