大分県別府市の県道でバイクの大学生2人が死傷したひき逃げ事件で、警察は現場から逃走した八田與一容疑者(27)について道路交通法(救護義務)違反では初となる重要指名手配に指定し行方を追っている。
遺族は殺人容疑の適用を求めて告訴しているが、検事を4年務めた西山晴基弁護士は「高いハードルがある」と指摘する。
【映像】ひき逃げで「殺人罪」に適用された事例
西山弁護士は「自分の走行している目の前に被害者がいる、ということを認識していたということが言えなければ、殺意があると認定できない」としたうえで、「さらにその認識があったことを客観的状況から認定する必要があり、すごくハードルが高い」と指摘する。また、「その認識がないとなると、過失による犯行となって過失運転致傷とかになってくる」と話す。
では、過去のひき逃げ事件において殺人および殺人未遂罪が適用されたケースにはどういったものがあるのか。
2006年4月、千葉県柏市で女子高生3人が負傷したひき逃げ事件では、被害者のひとりが車の下に挟まれたまま約400メートル引きずられ、骨盤などを折る重傷を負った。運転していた男は殺人未遂と危険運転致傷の罪で起訴され、懲役16年の実刑判決となった。
2013年5月には、長野市で酒気帯び運転によるひき逃げ事件が発生。被害者のひとりは車の下に挟まれたまま、約700メートルにわたって引きずられて死亡。容疑者は殺人罪で起訴され、懲役17年の実刑判決が下った。
どちらの容疑者も「人を挟んだ状態で走行しているとは気づかなかった」と弁明したとされる。しかし西山弁護士は「一般的に人をひいてしまったあとに車の底に人が入ってしまうというときには、かなりの車の振動が生じる。あとは走っている際の摩擦音や運転のハンドルを捜査してもガタガタするので違和感をかなり生じる。車の下に人を巻き込みながら走ったら人が死ぬ危険性が高いのは明らかなので、殺意はほかの衝突事案に比べると認定しやすい事案ではある」と解説した。
ほかにも警察官がひき逃げされたケースにも殺人未遂罪が適用されている。東京荒川区の路上で一時停止違反の乗用車が急発進し、巡査部長をはねて逃走。巡査部長は左足骨折などの重傷を負い、逃げた2人は殺人未遂と公務執行妨害の疑いで逮捕された。
西山弁護士は検察官時代に類似のケースをいくつも扱ったとして「警察官が自分を捕まえようとしている、職務質問をしようとしている、そういう状況をわかりながら車を走らせているというところで、殺人未遂や殺人罪は適用されやすくなる」と説明。
また「警察にとっては威信にかかわるところなので、より立件しようとして捜査するという風に考えられる」と付け加えた。
(『ABEMA的ニュースショー』より)
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