ラーニングイノベーション総合研究所が10月に発表した「管理職意識調査」で、管理職が抱えている悩みの1位となった「部下の育成」。Xには「謝らない、報連相できない。社会人舐めすぎ」「自分の考えとシナリオ持って相談に来て欲しい」といった声があがるが、会社の売上アップや業務効率化のためには育成は不可欠だ。
多くの管理職が苦悩する背景には、「心理的安全性」が関係していると言われている。これは、組織の中で自分の考えや気持ちを誰に対しても安心して発言できる状態のこと。ハラスメント対策にもなるため、多くの企業が意識しているが、実は正しく理解できていないケースもあるという。
人材育成コンサルタントの吉田幸弘氏は「自分らしくいられる文化とか、みんなが話しやすいように、というところが言われるが、“自分らしくいられる”という言葉が走りすぎていると思う。けっこう誤解が多い」と話す。
6割の管理職が部下へのフィードバックを「ためらう」と回答するなど、“部下を育てられない”現代。解決の糸口はどこにあるのか。ビジネス本『部下を育ててはいけない』著者でオンラインサロン田端大学の田端信太郎氏と『ABEMA Prime』で考えた。
田端氏は「心理的安全性とは、“意見を言っても咎められない”ということ。会社や部署として目標がある中で、『こうした方がいいと思います』と主張した時に、『あいつ生意気だ』と言われないための安全性だ。自分をありのまま受け止めてもらえる、わがままなんていうものとは全くの別物。みんなが“俺の機嫌を損ねるな”“お気持ちを大事にしよう”という話になってるのはおかしい」と指摘する。
誤解がある点として吉田氏は、「言われたこと全部を“そうだね”と聞く必要はなく、言う方にも理由がないといけない」と補足。またミスをした時にこそ求められるものだと指摘し、「トラブルが起きているのに報告できない人がいる。隠ぺいなどが起こる組織では心理的安全性が守られていなくて、何か言うと『いいから言うとおりやれ』『わかるだろう』と上司が言う。いきなり否定しないことが大事だ」と述べる。
では、悪い面も含めて“言っても大丈夫だ”という空気を作るにはどうすればいいのか。田端氏は「言われた側の上司が、“これは自分の問題だ”と巻き取らないといけない。それを指摘した人が『じゃお前がなんとかしとけ』と言われるんだったら、ガバガバになってしまう」とした。
弁護士の菅野志桜里氏は「スタートが検察官というとても硬い組織で、仕事ができるようにならないと物なんて言えない。実力が伴っていない段階で、上司や先輩に主張していくのははばかられる」と語る。
田端氏は、1on1活用の必要性も説く。「ベーシックだけど、週に1回、30分ぐらい1対1で話す。上司から『今やっている仕事の中で不要だと思ってるものはない?』と棚卸しをしたり、『こうなったら仕事がしやすくなるとかはない?』と投げる。そこで『ないです』って言うんだったら、本当にないのだろう。問題になった時に話すのではなく、日常からやっておくことだ」。
さらに、トレーナー制度にも疑問を呈し、「大企業は、2~3年目の先輩が新入社員の指導担当につく。人間と人間の相性は、1対1で合わなかった時が一番つらい。“お前もそろそろ先輩なんだから”というなんとなくのムードで、両方が潰れるみたいなケースを見たことがある」と指摘する。
吉田氏も「リーダーやマネージャーとしては、“誰を誰に”っていうのは見ないといけない。相性は重要で、期間でガチガチにしないで、合わないと思ったら変えた方がいい」と同意した。
実業家のハヤカワ五味氏は「プレーヤーが上に登っていく途中でマネージャーに変わるというのが、日本のやり方。でも、本来は誰でも志ざせるものだと思うし、役割を得たことでマネージャーのスペシャリストになる人もいるかもしれない。だから、もっといろいろ人が目指していいと思う」との考えを述べた。(『ABEMA Prime』より)
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