近年、日本各地でクロダイによる食害が発生し、ノリやカキの養殖業者を悩ませている。今回、ABEMA Morningはそんなクロダイを専門に研究する大学教授に話を聞いた。
まるで鎧兜のような黒々とした魚がクロダイ。日本全国の海から川まで幅広く生息し、そのひきの力強さから釣りのターゲットとしても人気がある。
そんなクロダイだが、群れをなして養殖されているノリをついばみ、東京湾などではクロダイによる養殖ノリが食べられる被害が相次いでいる。また、広島や静岡などでは養殖カキ、熊本では天然アサリが食べられる被害が出るなど、近年、日本各地でクロダイによる食害が問題となっている。この問題について、幼少期は根っからの釣り少年で、あこがれのクロダイを釣り上げるために研究を始めた、日本で唯一のクロダイ専門の研究者、広島大学・海野徹也教授は次のように語る。
「(クロダイは)雑食性でカニとか貝とか海草まで食べる。幅広く食べてしまうのが特徴」
――クロダイの魅力は?
「人里に近い魚で、運河を歩いてたら見える。黒がかっこいい。あれはカモフラージュだが、渋さが良い」
クロダイを語らせたら止まらない海野教授に、なぜクロダイの食害が全国的に増えているのかについて聞いてみた。
「ノリの食害の原因としては水温が高い。通常クロダイは、水温が下がると行動しなくなる。12月の半ばに収穫されるが、12月の水温が16〜17度。その水温域だとクロダイは活動的」
さらに食害の増加には別の理由もあると海野教授は話す。
「値段が安いから漁師さんがとらない。とらないと減る要素がない。クロダイとよく競合するのはマダイだが、値段が同じなら日本人はマダイを買う。アサリとかは収穫量が減っている。それに対して多数のクロダイが食べにくると捕食圧があがる。そのバランスが崩れると食害がクローズアップされやすい」
海野教授によると、クロダイは食用魚としての需要が低いため積極的にとる漁師も少ないとのこと。食用魚としての「価値が低い=美味しくない」ということなのか。海野教授は次のように語った。
「(クロダイは)美味しい。冬のクロダイはマダイにも劣らない。冬は刺身が最高」
食害に悩む地域では、クロダイを商品化する動きもある。香川県では、すり身を団子にして学校の給食として支給したり、岡山県ではクロダイを使ったドッグフードを販売するメーカーも。海野教授は、もっと多くの人にクロダイを食べてほしいという。
「縄文時代から日本人が食べていた魚。どんどん食べてもらえれば漁師もとるようになる。食糧難の時代がくるかも分かりまが、私としては利用して欲しい」
(『ABEMA Morning』より)