過酷と言われる教職の現場で、新たに教職員を目指す学生が減ってきているという。その現状を取材した。また、教育実習で現場を見たことにより夢を諦める学生も。教職離れを止めるためには何が必要とされているのだろうか。
「教育学部の志願者は、18歳の人口減少幅よりもかなり大きな減少が見られる。教職課程を取る、先生になりたいという人の母数が減ってきているのだ」
そう話すのは、教育文化総合研究所の所長で、早稲田大学教育・総合科学学術院の菊地栄治教授だ。教育実習から戻ってきた学生の意気込みが無くなってきている印象を受け、菊地氏は学生の声をまとめた報告書を作成した。
報告書の中にはこんな学生の声がある。
「こんなに教師に向いているのになって私自身も思うし、友達からも言われて教師はいいなと思うけど、だけどやっぱり日本で教師は無理だよ。こんなブラックなのは無理だよって言って、それをやっぱり諦めさせるほど劣悪な職場環境だったりするのはちょっともったいなさ過ぎるよ日本って思っちゃうのが悔しい」
さらに、学生からはこんな声も聞こえる。
「『体力に自信がなく、今の教職のハードさについていけない。やっていく自信がないので教職を諦めた』という方が2人いて、それはある意味で非常に残念なこと。体力の自信がないような人たちも含めて仕事ができることが、本来的な学びの場の在り方だと思う」
劣悪な教育現場の環境を目の当たりにして、教職を諦めた学生達。そんな現状を改善するため、菊地氏は教育現場の環境を変えようと働きかけている。
「教員の長時間労働を改善しようという署名活動をしている。それから、『給特法』という法律があり、それをどう変えるか、あるいは廃止するかといったことを本気で考える必要があるのかなと思っている。今は個人の努力だけではなかなか難しい部分があり、そのためには法律を変えるのが一番重要だと思う」
給特法とは、公立学校の教職員の給与や労働条件を定めた法律だ。労働基準法とは異なり、教職員には原則的に、いわゆる残業代を支給しない代わりに、月給の4%に相当する額を「教職調整額」として支給することが定められている。しかし、近年の教職員の長時間労働が問題となり、待遇悪化の要因の一つとされている。
そんな中、11月8日には現役の教員らが会見を開き、文部科学省の専門家会議のなかで、教員志望の学生や教職員へのヒアリングの機会を設けるよう要望した。
教員志望の高校2年生・秀島知永子さんは、「自分たちの未来に関わることを自分たちと全く話したことのない、接点のない人たちが教員の在り方を決めている」と話す。また、現役の高校教員・西村祐二さんは、「当事者の声に耳を傾けたうえで結論を出していかないと、的外れな結論になってしまう」と指摘した。
さまざまな形で教育現場の労働環境を変えていく動きが活発になっている。菊地教授は教職員離れを止めるため、教職の大切さを語る。
「人と関わり一緒に学びながら、若い人たちが育っていく姿を目の前で見られる、関わらせてもらうのは、まさに“未来”ではないか。教育は、人がさらに人を生み出す。人が人を育てることは非常に、ある種の価値をさらに生み出す大事な仕事だ。にもかかわらず、下手するとそういった人たちがよその国に逃げてしまうかもしれない。そんな危機意識を持ってほしい」
(『ABEMAヒルズ』より)
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