岸田総理が検討を進めるライドシェア。インバウンドが回復、ドライバー不足に拍車がかかる中、14日、その解禁に向け、超党派による勉強会が立ち上げられた。現在、自治体から国による法整備を求める声も相次いでおり、政府は年内にも一定の結論を出す方針だ。
しかし、安全面などから自民党のタクシー·ハイヤー議連は「安易なライドシェアについては消費者の視点からしても問題がある」と否定的。解禁すべきか否か。『ABEMA Prime』で、議論を巻き起こす一つのきっかけを作った菅義偉前総理に聞いた。
8月の講演で「ライドシェアは必要」と言及した菅前総理。「観光立国を目指し、インバウンド政策の旗振り役をやってきたが、観光地や過疎地、都会、どこへ行ってもタクシーが足りない。このままだと訪日外国人に日本の良さを知ってもらえなくなってしまう」と思いを明かす。
今年10月の訪日外国人数は推計251万6000人となり、コロナ前の2019年同月を初めて上回った。そんな中、日本政府観光局の目標は2030年に6000万人(2019年は3188万人)で、交通の足はすでに足りていないのが現状だ。
タクシー運転手(個人·法人)の数は減り続け、2008年度の約42万人から2021年度は約25万人になっている。二種免許や地理試験がハードルになっているのか。菅前総理は「特に地理試験なんかはやめていいのでは。どこを走ればいいか、今はナビですぐ出てくる」とタクシー業界の規制緩和の必要性を指摘した。一方で、3年後には運転手不足も解消する、としている業界団体の主張については、「3年たってもタクシーだけで足りるということはない。10月になって月ベースでコロナ前を超える人が海外から来てくれている。11月12月も同じようになるだろう。そして、それが1年間続くかもしれない。なので、現在、特例として認められているライドシェアの緩和も含めて、出来ることはとくかくやる。それでも足りない」 と危機感をあらわにした。
近畿大学情報学研究所所長の夏野剛氏は「政治的にタクシー·ハイヤー業界のロビイングが、特に自民党の議員に対して激しかった。僕自身が規制改革をやっていた時に思ったのは、既存の産業には必ずそれを支持母体とする議員がいたり、権益を保護する立場に立ったほうが票を取れると思う方がいる。規制改革ができる条件は3つあって、まず政治がやる気になるかどうか。次に大事なのが世論。最後が官僚。国土交通省の人と話をすると、『大っぴらには言えないけど、ライドシェアやれない日本は恥だ』と言っている人はいっぱいいて、ここはどうにかなる。世論もタクシーが足りないのは明らかだ。やはり政治が動かなかったのがこれまでだが、菅前総理の8月の発言で一気に流れが変わった。3条件が揃った今しか前向きに議論するタイミングはない」とする。
また、客の取り合いになる懸念について、「ライドシェアの運転手は企業に属さず収入が上がるので、タクシー運転手がやれば実入りがよくなるだろう。安全性の話も、何かあった時の責任という問題を冷静に議論すれば、うまく入れ込まざるを得なくなると思う」との見方を示した。
ジャーナリストの堀潤氏は、「今すでに始まっている実証だと福島県の浪江とか、自治体と民間が一緒にやったりしている。神奈川でも独自のライドシェアを検討しているが、官と民の連携が重要なのか、民だけの話なのか?」と質問を投げかける。
これに菅前総理は「今やっているのが官と民、業界も入っている。そこは非常にうまく進んで、それぞれ実証実験が成功するだろう。ただ、最終的なライドシェアは、やはりアメリカとかと同じように民がやらないと進んでいかないと思う」とした。(『ABEMA Prime』より)
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