「【拡散希望】ひき逃げした車両を探しています」
「バイクは5メートルも飛ばされ、私は道路に叩きつけられました」
こう投稿したのは、福岡でテレビプロデューサーをする蓑津尚文さん(49)。自らをひいた犯人を探している。事故に遭ったのは9月29日午前0時頃、福岡市鳥飼3丁目あたりの交差点で原付バイクに乗っているところを車にはねられたという。全身を打撲、右足を骨折し、その後けがの影響から肺血栓となり、一時は生死の境をさまよった。逃げられたことで相手に治療費の請求ができず、長期休暇を取らざるを得なくなり、経済的な負担も。事故から2ヶ月近く経ったが犯人は見つかっていない。
ひき逃げの検挙率は約71%、なぜ約3割は見つからないのか。そして、もし自分がひき逃げにあったらどうすべきか。20日の『ABEMA Prime』で蓑津さんをゲストに考えた。
■「周囲から聞こえた声でひき逃げなのか?と」
蓑津さんは会社から原付で帰宅途中、交差点で対向車線の右折車にぶつかられた。「青信号で直進した記憶はあるが、気付いたら真横に車のヘッドライトが来ていて、次の瞬間にはぶつかっていた」と話す。
車の特徴について、「おそらく明るいシルバー色のプリウス。車が近づいてきた瞬間に『プリウスだ!』と思ったのと、ヘッドライトの形を覚えている。地面に叩きつけられた後は痛くて、うずくまっていたら、周囲から『逃げた、逃げた』という声が聞こえた。ひき逃げなのかな?と感じた」と明かした。
近くのコンビニにある防犯カメラやタクシーの車載カメラに当時の映像が残っているものの、警察からは「捜査はしています。それ以上はお答えできません」という説明しかなかったという。また、現場検証をするという連絡から10日以上経つことも明かした。
警察の対応について、元埼玉県警捜査第一課で犯罪評論家の佐々木成三氏は「正直なところ、答えられる部分と答えられない部分がある。後に裁判になった時、犯人しか知り得ない情報を警察から被害者や情報提供者に伝えると不利になってしまうことがあるからだ。ただ、“どのような捜査をしているか”までは言えると思う。コミュニケーション不足で不信感を抱かせてしまっていると感じる」と指摘する。
ひき逃げの検挙率は71.7%で、死亡事故は98.9%、重症事故は86.8%と、多くが捕まえられている。「軽傷になると検挙率がぐんと下がる。理由はマンパワー。死亡ひき逃げになると、捜査本部が設立され、警察署をあげて犯人を捕まえにいく。しかし、重傷から軽傷となってくると人を割くことができなくなる。特に事故捜査係は刑事が多くなく、現行犯の事件もある。逮捕されたら最大20日間の勾留期間があり、取り調べと捜査もしなければならない。この間、集中捜査になれば、逃げている事件の人手はどうしても足りなくなってしまう。蓑津さんは全治3カ月で重傷事故に入ると思うが、優先順位でマンパワーを割けないのではないか」との見解を述べた。
■仕事ができず金銭面に不安…加害者不在時の支援・制度は
蓑津さんはリハビリ病院への転院を勧められたが、金銭的・精神的な理由から断念せざるを得なかった。退院後は、週2回の通院と週1回のリハビリを行っている。痛みがなくなるまでには1年かかるとされ、右足指が動かない後遺症も残っている。
「いろいろな不安が大きい。仕事や金銭面、それから家族、なによりも犯人が捕まっていないことだ。警察も頑張っていると思うが、怒りの矛先をどこに向ければいいのか」
金銭面は特に大きな不安を感じているという。
「家族にバックアップをしてもらっている。ただ、仕事に穴を開けていて、当然のことながら給料はもらえない。帰宅中だったので労災を申請しているが、本当に下りるかはわからないし、このまま痛みが取れず、後遺症が残って仕事に支障が出たらどうしようとか、復帰できるのかとか。すでに実費で払っているものがたくさんあるので、これは増えないだろうか。また、相手がいないので、保険会社同士で話ができない状況もあったりする」
交通事故発生時、相手方の保険と自分の保険いずれでもカバーできない場合、被害者が受けた損害を国が立て替える「政府保障事業」がある。加害者が「ひき逃げで不明」か、「自賠責未加入」の時のみ利用可能だが、自賠責と原則同じ最低限の補償をしてくれる(上限:傷害120万円、死亡3000万円)。一方で審査期間が長く、給付まで半年~1年かかることもあるという。
この制度について蓑津さんは「SNSでいろんな方に教えていただいて、活用できるものだとは思うが、手続きが複雑。申請しているが、お金をいただくまでに相当時間かかるということで、それまでどうすればいいんだろう」と語る。
佐々木氏は「この制度はもちろん警察も理解している。とはいえ、生活が苦しい方の事件だから優先順位を上げる、ということも違う。間違いなく言えるのは、蓑津さんをメディアが取り上げて世論が動き出してくると、警察が尻を叩かれる面はある。こういった形で声を上げるのも必要なのではないか」との見方を示した。
■「軽くでも当たって逃げたらひき逃げ。警察に連絡を」
軽い接触などの場合、警察に通報しない人もいるのではないか。「ひき逃げ」に該当するケースとして、よつば総合法律事務所の松本達也弁護士は次の例をあげる。
・被害者はその場で「痛くないから大丈夫」と現場を後にしたが、後日痛みが出たということで治療費の請求が来た
・当たったことに気づかずそのまま走行したところ、後日、警察や相手保険会社から連絡が来た
だからこそ、自分で判断せず警察を呼ぶことが大事だとしている。事故の程度が軽いと、警察がマンパワーを割けないとなると、通報を躊躇してしまうのではないか。
佐々木氏は「現場の状況・画像はその時にしか撮れない、残せない。防犯カメラは上書きされて、1〜2日で消えてしまう場合もある。軽くでも当たって逃げたらひき逃げになるので、被害があったらすぐ警察に連絡してほしい」と呼びかけた。
また、蓑津さんの事例を引き合いに、「ナンバーまでは分からないけど、車種や色がわかっていることも大事。“1カ月半前にへこんでいる車があった”という情報もすごく有効的だ」とした。
蓑津さんのひき逃げ事件に関する情報提供は「092-734-0110(福岡県警察 中央警察署)」まで。(『ABEMA Prime』より)
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