「ブレイキングダウンは格闘技じゃない」への回答 プロ対抗戦での“勝ち越し”は何を意味するのか?
【画像】才賀紀左衛門、衝撃の失神KO負け(複数)
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「あんなもの格闘技じゃない」

 これまで何度も言われてきたことだ。朝倉未来がプロデュースする“1分間格闘技”BreakingDown(ブレイキングダウン)には、常に批判がつきまとった。

 大会でまず話題になるのは不良たちだ。マッチメイクを決めるオーディションや記者会見では、逮捕歴のある男たちも多数登場、舌戦も乱闘も当たり前に発生する。

 選手のレベルはといえば玉石混淆。正統派の選手もいるが、格闘技未経験の“喧嘩自慢”も。どうしても目立つのは後者で、真面目に格闘技に取り組んでいる者にとっては目障りだ。ましてブレイキングダウンは大人気コンテンツ。YouTubeを通して、参加選手たちは並のプロでは太刀打ちできないくらいの知名度を誇る。だから余計に「あんなもの」と言いたくなるのだ。そこで未来が考えたのが、ブレイキングダウンの選手とプロファイターとの対抗戦だ。

【画像】才賀紀左衛門、衝撃の失神KO負け(複数)

「ブレイキングダウンを一番よく思ってないのは、日の目を浴びてない、努力して頑張ってるプロ格闘家だと思ってて」(未来)

 RISEに参戦するキックボクサーを中心に5人が乗り込んできた。「ブレイキングダウンは格闘技ごっこ」、「格闘家を気取るな、立場をわきまえろ」と口々にこき下ろす。おなじみの(と言っていいのかどうか分からないが)乱闘も起きた。

 迎え撃つブレイキングダウン勢には正統派・実力派の選手が並ぶ。彼らの試合映像を見れば、ブレイキングダウンが“不良の乱闘が話題の下世話な見せ物”というだけではないことが分かるはずだ。

 11月23日、初進出となる大会場さいたまスーパーアリーナ・コミュニティアリーナでの『BreakingDown10』で行われた対抗戦。その結果は3勝2敗、ブレイキングダウン勢の勝ち越しとなった。しかも3勝はすべてKOである。

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 とりわけ驚かされたのが、細川一颯の勝利だ。前回大会から出場し、喧嘩自慢100人を集めた企画でも優勝。ブレイキングダウンと1000万円で契約している。

 少年時代に空手の経験があるものの、プロでならしてきたというわけではない。本人もベースは喧嘩だという。そんな細川が、才賀紀左衛門に勝った。才賀は旧K-1のユース部門に参戦して話題を呼び、Krushや新生K-1、さらにRIZINにも出場してきた選手だ。その時々で盛り上がっている団体に出場してきた才賀は、今最も旬な戦場としてブレイキングダウンを選んだという。

 才賀と“喧嘩自慢”では技術や経験値に大きな差があると思われた。しかし細川は本戦1分を互角に闘い、延長ラウンドで右フックを叩き込み、失神させる。

“ブレイキングダウンの選手はプロにも通用した”
“格闘技じゃないはずのブレイキングダウンの選手がプロ格闘家をKOした”

 つまりはそういう結果だ。

「100分の1になる男はスター性がありますね。凄いアップセットだった」

 朝倉未来も、そう言って細川を称えた。「なんだかんだ言って、ブレイキングダウン強いですね」とも。

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 もちろん、考慮すべき点もある。細川と才賀では体格に差があった(細川のほうが大きい)し、グローブも違う。リングとケージでは間合いなども変わってくる。ブレイキングダウン勢で勝ったYURAと外枦保尋斗はプロ経験もある。

 ただそうしたことを差し引いても、ブレイキングダウン勢が勝ち越したという事実は残る。ブレイキングダウンが本当に「格闘技じゃない」のであれば、多少の体格差やルールの違いなど関係なく、プロが圧勝していたはずだ。実際にはそうではなかった。杉本祥を豪快なアッパーカットで倒した外枦保は言う。

「1分には1分の闘い方があるんです。1分の中のメリハリ、ペース配分もある」

 ブレイキングダウンにはブレイキングダウンの“強さの基準”がある。求められる資質も他の格闘技とは違う。だからブレイキングダウンでは、ブレイキングダウンの選手が強い。MMAではMMAファイターが強いし、キックボクシングではキックボクサーが強い。それと同じことだ。実はこれまでも、他競技のプロ経験者がブレイキングダウンで敗れることはあった。

「僕が勝ったのは、ブレイキングダウンに人生かけてきた人間と、ブレイキングダウンを踏み台にしようとした人間の差だと思います」

 外枦保は勝因をそう語った。ブレイキングダウンファイターとして、ブレイキングダウンで負けるわけにはいかなかったと。その上で、ブレイキングダウンの選手たちはこれからも賛否両論にさらされるだろうし、実力を証明し続けていくことになる。今回、参戦したプロ選手たちがトップファイターばかりではないことを指摘したのは、他ならぬ朝倉未来だ。これからも他団体の選手に名乗りをあげてほしいという。

 そのことでブレイキングダウンのレベルも上がっていくし盛り上がるというわけだ。話題性重視と思われがちなブレイキングダウンだが、“実力”から目を逸らしているわけではない。そのことは広く知られるべきだろう。

文/橋本宗洋

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