そもそも万博って何?「求めるべきは経済効果だけではない」ノンフィクショライター石戸諭氏と考える万博の意義と開催後の展望
【映像】万博開催の意味を考える
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 160の国と地域、9つの国際機関が参加する大阪・関西万博。大阪では55年ぶりの開催だ。開幕までおよそ500日となる中、で建築費や工事の遅れが問題視され、中止や延期を求める声も上がっている。

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 「費用対効果」が日々注目されているが、そもそも万博(国際博覧会)とは何なのか?国際博覧会条約によると「二以上の国が参加した、公衆の教育を主たる目的とする催しであって、文明の必要とするものに応ずるために人類が利用することのできる手段又は人類の活動の一若しくは二以上の部門において達成された進歩。若しくはそれらの部門における将来の展望を示すもの」と定義している。

 初めての万博は1851年にロンドンで開催され、25カ国が参加した。日本にペリーが来航する2年前のことだ。日本は1867年にパリで開催された際に初参加。徳川幕府、薩摩藩、鍋島藩が出品した。日本での初めての開催は1970年。それから55年ぶりに、再び大阪で万博が開催される。

 ノンフィクショライター石戸諭氏は「報道各社の世論調査を踏まえると、関西エリアも多くの人は『万博をやるんだったら行ってみたい』と思ってはいるが、だからといって費用が膨れ上がっていくことを肯定的に受け止めているわけでは無い。日本全体に広げると何か熱い思いがあるというよりは、東京オリンピック開催前の東京のように、なんとなく『問題はあるんじゃないの?」と思いながら時間は過ぎている」と現状について指摘した。

 また、万博の役割について外務省のホームページでは、「昔は時の支配者たちが財宝や戦利品を展示することによって自らの権勢を誇示する手段だったが、今では平和の象徴として、世界各国の人たちの交流の場となり、その時代の技術・芸術の頂点を世界に向かって発信する機会を提供している」などと記載されている。

 その参加国のアピールの効果について石戸氏は、「直近の万博でこういう成果があったとすぐ出る人がどのくらいいるか? 日本に住んでいて僕らが実感することはほとんど無いというのが現実。先進国は各国で似たような状況ではないか」と分析。

 その上で、「1970年の大阪万博は岡本太郎の太陽の塔を筆頭に各国のパビリオンが話題になるなど、今に至るまでサブカルチャーにまで大きな影響を与えたイベントだったが、今は違う。昭和の時代とは状況が変わってきてしまった。国内の財政事情などを理由に参加を見送る国もあれば、新たに参加を表明する国もあるが、万博が与えるインパクトが変わってきてしまっていることは踏まえておかなければならない」と、万博の立ち位置の変化について指摘した。

そもそも万博って何?「求めるべきは経済効果だけではない」ノンフィクショライター石戸諭氏と考える万博の意義と開催後の展望
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 2025年の大阪・関西万博では2820万人の来場者を見込んでおり、アジア太平洋研究所 2023年版「関西経済白書」によると、経済効果は2兆3759億円をベースに周辺地域でもイベント開催や宿泊客・延泊など増加できれば最大2兆8818億円と推計されている。

 これについて石戸氏は「万博を目的にして海外から観光客が押し寄せるという話にはならないだろう。日本観光ついでに、万博にも行ってみようという“プラスアルファ”のインバウンドがある程度ではないか。経済効果とされるものの多くは建設などによる公共事業が占めているのが実情だ」と述べた。

 その上で、そもそもの万博の目的について、「経済効果よりももう少し視野を広げて議論したい。オリンピックを思い起こせば、『レガシーがどうしたとか、この施設をどう使うか』という話をしていたが、今はほとんど話題にも上らない。万博もそうだが、経済効果の有無だけが争点になって、やりっぱなしになるのは良くない。そもそもオリンピック、パラリンピックがトップアスリートが集うスポーツイベントであり、スポーツの素晴らしさを感じることが本来の趣旨だ。同じように万博も技術や芸術の交流など様々な目的がある。開催後もしっかり意義から検証していくことが大事ではないか」と提言した。
(『ABEMAヒルズ』より)

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