TikTokに投稿されたショートフィルム『痴漢冤罪』が話題だ。制作者の『こねこフィルム』は「痴漢や痴漢冤罪への擁護や警鐘のためではない」と意図を説明。「“善意の表し方により悪意と取られることがあること”や、“集団心理の怖さ”を表現し、また“物事の一部分を切り取った端的な情報への警鐘”を表現したく制作いたしました」(こねこフィルムnoteから引用)としているが、視聴者からは痴漢冤罪の恐怖を指摘する声もあがった。
近年、いわゆる“弱者男性”が徐々に注目を集めている。貧困や孤独などに悩んでいても、「男性だから」と支援されにくいことが問題に。一方で、Xでは「男が優遇されてる社会で“弱者”って…自己責任でしょ」「弱者男性は女性よりもツラいみたいな考えは分断を呼ぶよね」など弱者男性に対する批判の声も見られる。
『ABEMA Prime』では、ブラック企業勤務を経て引きこもり生活を送るイエティさんとともに弱者男性とは何か、どんな支援が必要なのかを考えた。
「焦りの中で生きてきた」自室から出られなくなった男性の想い
YouTubeチャンネル『ひきこもりイエティ(氷河期)』の管理人も務めるイエティさん(45歳)は、実家で7年以上引きこもり生活を送っている。そのきっかけを、「ちょうど就職氷河期で社会人を始めたが、キャリアや仕事ぶり、生活設計が線でつながらず、転々としてその都度落ちぶれてしまった」と語る。
就職氷河期のなかで新卒入社した企業では、マルチ販売の信販で心を病み辞職。その後のキャリアでもパワハラや過剰労働に苦しんだ。自身で立ち上げた会社も廃業となり、最終的に自室から出られなくなった。
「弱者男性という言葉はここ数か月で出てきた印象だが、我々40代が“就職氷河期”、“失われた10年”と言われていた約20年前は、頑張れば社会で逆転していけるのではというムードも残っていた。安定した会社に入って子どもを授かり、家を買って車を所有してといった生活像を築かなければと思い、追いつけない焦りの中で生きてきたが、ずっと水面から顔を出せないまま呼吸困難に陥って身動きが取れなくなってしまっているような状況だ」と述べた。
理想とされる男性像と自身が置かれている境遇のギャップはイエティさんを苦しめた。
「就職氷河期や時代のせいにしてしまいたい気持ちもあるが、うまくやっている人たちはいる。ショッピングモールに行けば高級車に乗って、奥さんを連れてベビーカーをひく同世代の姿があり、子どもが高校に入学したといった情報がSNSで流れてくる。それらを見ると、自分は何をやっているのだろうという気持ちになる」と明かした。
「社会復帰の道筋や選択肢が欲しい」
弱者男性を救うには個々の悩みを解決しなくてはならない。しかし、競争社会の中で男性に求める一人前の基準が高すぎるという意見も。
イエティさんは「今の状況を自分が受け入れるしかない。ここからどこまで積み上げられるかという考え方が必要だと思っている。どんな泥仕事でもまず見つけて取り組んでいこうと思うが、その先に何が待っているのかは今後も動画や記録で残して、苦しんでいる人と共有できれば」と語る。
また、支援のあり方について「解決法を他人に求めるのは筋違いだが」と断りつつ、「こうした番組では、みんなが理解しあって寛容な社会に…というマイルドな結論にまとまることが多いが、本当に欲しいのは地獄に落ちたような、落ちぶれた人間がどう社会復帰できるかの具体的なモデルや道筋。自業自得なのだが可能性や選択肢が欲しい」と述べた。
弱者男性の背景は? 兼近「負け側への優しさが社会的に足りていない」
番組内では競争社会の中で負けた男性がどのように生きていけるかが、問題の本質ではないかとの意見も出た。
これにEXITの兼近大樹は「僕は幼少期からお金がなく、能力も人より劣っていた。誰からも愛されず、求められない状況で、法律すら守らなかった。気付いたらどうにかなって“ラッキーで”今ここに座っているだけだ。あの時一緒にいた、何百人も会ってきた男性の友達は誰一人上がってきていない」と述べた。
強者と同じように頑張っても競争に勝てるとは限らない。頑張らなかったから弱者になったわけではない。競争がある以上、誰かが負け側になることをどう考えられるか。兼近は「僕は負けた側への優しさが社会的に足りていないと常に思っている」と主張した。
そのうえで「自分の場合は周りにいる人が手を差し伸べ、道を示して救ってくれた。はしごをかけてくれたからひとつずつ行けた。僕は当時、全て他人のせいにしていたので誰も寄りつかなかった。でも、イエティさんは自分のせいだと言える優しさがある。僕が気付けたのだから、顔を出さなくてもネットやSNSで、その優しさに気付く人、助けになってくれる人が見つかるはずだ。だから人と関わっていくことを恐れず、批判的な人は遮断して、少しでも認めてくれる人を増やしていく、自分の気持ちを話してみることを繰り返していけば、居場所が見つかり、いろんなことができるきっかけになるのでは」と自身の経験も踏まえて語った。
最後に言いたいことは? と聞かれたイエティさんは「コミュニケーション能力がないので。あまり」と謙遜しつつ、「社会が変わるのを待っていたら自分の寿命が先に来てしまう。だから、どうにかあがいて、何か残せたらいいなと思っている。結局、自分が変わっていくしかない。どんどん体当たりをして、そこで何が見えるのか。いろいろな人と一緒に探して行けたらいいな」と述べた。
(『ABEMA Prime』より)
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