自民党·安倍派を中心とした政治資金パーティーをめぐる裏金疑惑について、危機感を持った対応をしていくと13日の会見で強調した岸田総理。いつの時代も政治家についてまわる政治とカネの問題。キックバックの収支報告書への不記載はいつからなのか、そして常態化していたとされる背景に何があるのか。『ABEMA Prime』で、NHKで安倍元総理周辺を長年取材してきたジャーナリストの岩田明子氏と、自民党で派閥のトップを務めた石原伸晃前衆議院議員に聞いた。
■安倍元総理はキックバック・不記載を知り叱責
岩田氏の取材によると、2014年から2021年の“細田派時代”はキックバックの記載について明確な方針がない中で、2021年11月に安倍元総理が派閥会長に就任し、そこで問題を知ったという。
「8年近く派閥を離れていたので、当初は目の前のことに追われていた。しかし2022年2月、“そういえばお金はどうなっているんだ?”と会計責任者を呼び、“このような方法は問題だ。ただちに直せ”と叱責した。4月に改めて、“あの件はやめたんだろうな”と事務総長らにもくぎを刺したら、翌月の派閥パーティーでのキックバックはなくなった。安倍元総理は選挙を終えてから深掘りするつもりだったが、その2カ月後に亡くなってしまい、話がうやむやになった」
不記載について「長年おかしいと思っていた議員や秘書は割といる。みなさん事務総長や会長に尋ねるが、無回答や不記載でいいという回答を得て、それで手をつけなかった人もいる」といい、「自民党の顧問弁護士を巻き込んで、もっと動くべきだったと思う。違法であることに対するおそれがあまりになかった」と指摘した。
■「安倍派は空中分解するんじゃないか」
この問題は安倍派に留まるのか。岩田氏は「私が聞いているところでは、他派閥の政治家も、キックバック自体は慣習としてあることは認めている。ただ、政治とカネの問題で痛い目に遭った派閥はしっかりしていて、超過分を振込にして、議員の所属する団体に経費も差し引いて振り込むという徹底ぶり。これが結果としてクリアだった」と答えた。
今の安倍派については「空中分解するんじゃないかと思っている。一周忌を迎えても会長が決められないのに、こんな問題が起きて、誰についていったらいいのだろう、あるいは出ていこうと言ってる人もいる。13日には高鳥修一さん、青山繁晴さん、和田政宗さんの3人が『晋士会』というグループを作るなど、動きも活発化しているが、昔と違ってエネルギーがない。ずっと低温で、政局にならずにじわじわいくのが、ここ2、3年の傾向だ」と説明。
パー券収入不記載の問題は、2022年11月にしんぶん赤旗が報道し、直後から神戸学院大学の上脇博之教授が調査し、多数の不記載を告発、今年11月から各メディアが報道するに至っている。「臨時国会の前からざわざわし始めていたが、こういうことに対する現政権·官邸の危機管理や情報共有、対処するためのチーム力が非常に低い。10月頃に松野官房長官は“早い対処を”と総理に進言したようだが、そこから2カ月経っているのが非常に残念。総理総裁が先頭切って膿を出し切ろうとしていたら、全く別の展開になっていただろう」との見方を示した。
■石原氏「この問題を風化させることは絶対にあってはならない」
政権の今後について、岩田氏は「早く新体制で進めていかないといけないが、この問題を風化させることは絶対にあってはならない。一人ひとりきっちり調べて、何が原因だったのか洗い出して、捜査の行方を見極めて1回総括するべきだと思う。清和会だけではなく他の派閥はどうだったのかも、国民に分かりやすく全部開示するべきだ」と訴える。
今回、誰が責任を負うべきなのか。石原氏は「誰か当時の政治家が“記載しなくていい”と組織的に言ったのなら、その道義的責任は非常に重い。これだけの政治不信がある中では、政治改革本部を作って、重鎮が変えていくようなことをしないと。そのリーダーは今の自民党にいる、菅前総理だ。ワンランク上の人が“何が問題なんだ?”とみんなからヒアリングするようなことをやっていくしかない」とした。(『ABEMA Prime』より)
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