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 日本の文化、歴史の象徴の1つである、お城。そのシンボルといえば天守閣だが、東京の江戸城天守閣の再建をめぐり熱い議論が交わされている。

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 江戸城は1457年に太田道灌が築城した後、関東に入った徳川家康が改築。江戸時代初期までは天守閣があったが、4代将軍・家綱の時代に大火で焼け落ち、幕府が江戸の街の復興を優先させたため、再建はされず。そのまま現在に至り、石垣の天守台が残されているだけだ。

 SNSでは「東京の新たな象徴になるし、経済効果も高い」「税金の無駄遣い。何百年も天守閣を作らなかった意味を考えるべき」「皇居を見下ろすことになるけど、ありなの?」などの賛否両論があがる中、『ABEMA Prime』で再建の是非を議論した。

■「“また無駄な公共事業をやるのか”という批判は誤解だ」

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 なぜ今なのか。太田道灌の末裔18代目で、「江戸城天守を再建する会」会長の太田資暁氏は「復興を優先しようということで、保科正之さんが当時、“ご延しかるべし”と。中断ではなく、延ばそうということだ。徳川幕府時代の1712年に新井白石が建白書を出しているが、やはり経済難・財政難でできなかった。そうこうしているうちに明治維新が起き、日本は追いつけ追い越せだったが、戦争で焦土になってしまった。やっと今、国力も回復して落ち着いてきたので再建しようという運動だ」と説明。

 2012年の都知事選立候補の際に再建を公約の1つとした、日本維新の会の松沢成文参議院議員は「燃えてしまった3代目の天守の建地割図が残っている。この通りに木造で完全復元できれば、文化的な価値が生まれて、将来は国宝にもなるかもしれない。五重塔や他の城郭も、みんな最初のオリジナルがずっと残っているわけではない。私たちが民主政治の中で、“現代はこれで再建しよう”と決断したのであれば、100年後は歴史になっている。再建してはいけないというのはおかしな議論だ」と述べる。

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 建設費は2013年時点で350億円と試算されていたが、今は材木費や人件費の高騰などで500~600億円が見込まれているという。一方で経済波及効果は、日本経済研究所によると竣工1年後までで約1000億円(初年度来場者数は500万人想定)。入場料を1200円とし、2年目以降も同じ集客が維持できれば、運営者側へは毎年130億円の売上が期待できるという。

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 松沢議員は「500~600億円と聞いて、“また無駄な公共事業をやるのか”という批判が来るが、それは誤解だ。私が6年前に出した『始動!江戸城天守閣再建計画』で訴えたのは、一切公共の税金は使わず、民間から資金を集めるということ。東京で一番お客さんが集まる観光スポットは年間600万人のスカイツリーだが、もし日本最大の天守閣が設計図通りきちんとできたら、年間500万人来ると思っている。1000円の入場料を取れば、10年で500億円が出るわけだ」との見方を示した。

■再建で東京が丸ごとテーマパークに?

 再建への障壁について、松沢議員は行政上の問題に触れる。「1つは建築基準法をクリアできるか。一応、木造は3階建てまでで、それ以上のビルなんかを作る場合は、耐震耐火構造が鉄筋に負けないだけの強度があるかを実証実験しなくてはならず、お金がかかる。2つ目は文化財保護法の壁だ。4代目の天守台に3代目の上モノをくっつけたら歴史の改ざんではないか、石垣が持たないのではないかなどさまざまな意見があり、文化財保護審議会の中で意見がまとまるかどうか」。

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 一方で、皇居内における共存はできるとし、「皇居は城址公園ではなく、国の財産。また、あんなところに天守閣を作ってしまったら、皇居の西の丸を見下ろすことになってしまい、“天皇陛下のプライバシーや安全保障が脅かされるのではないか”と反対される方も当然いる。ただ、イギリスのバッキンガム宮殿と一般人が入れる部屋までは50メートルしか離れていない。天守台と皇居御所は630メートル離れているので、十分共存できると思う」との見方を示した。

 この点に近畿大学情報学研究所所長の夏野剛氏は「世論が大事で、天皇陛下に失礼ではないかという議論と、国の財産をどうするかという話がある。東京のど真ん中にある、入ってはいけない緑の場所というのは、普通に考えたらともっと有効活用したほうが良いのではないか。明治天皇が東京に移ってきて以降の200年の歴史と密接に関わるので、簡単に結論は出ないが、どう使うかは議論すべきだ」と指摘した。

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 松沢議員の案では、「東京丸ごとテーマパーク構想」「水運で繋ぐ東京観光」が提案されている。「明治時代の駅舎を復元した東京駅はすごく人気で、東京ステーションホテルはいつもいっぱいだ。1km歩くと日本橋があるが、高速道路を地下化するので、空がひらける。魚河岸も復元すれば、明治時代の東京駅、江戸時代の江戸城天守閣、そして日本橋の魚河岸と、観光にますます幅が出る。もっと言うと、東京は水の街だ。例えば、お台場に大きなホテルがある。ディズニーランドに行くのもいいが、そこから船に乗って隅田川、日本橋川を上り、江戸城のお堀に入って、水の上から天守閣を見る。帰りに秋葉原や新宿、表参道、歌舞伎座に寄って、お台場に戻る。東京の観光がまるでテーマパークみたいになる」と展望を語った。

 夏野氏は「最初は再建しなくていいと思っていたけど、造ったほうがいいかもしれない。日本の将来に関わる話だ。お金は1000円なんて言わず、2000円は取れると思う。やはりインバウンドが入ってこないと日本経済は持たないので、あらゆることをちゃんと議論すべきだ」とした。(『ABEMA Prime』より)

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