「M-1グランプリ2023」の頂点に輝いた令和ロマン。SNSでは「最高に面白かった!」「納得の優勝でした!」という声の一方で、「審査員の評価おかしくない?」「どんな基準で点数つけてんの?」という意見もある。これは漫才に限ったことではなく、毎年恒例の「ユーキャン新語・流行語大賞」の選考にも、「主観で選んでいるのでは?」という厳しい声があがるという。
納得できる審査とはどういうものなのか。25日の『ABEMA Prime』で、前者の審査員でタレントの山田邦子、後者の選考委員で漫画家・好角家のやくみつる氏とともに議論した。
■やくみつる「誰もが納得できる審査なんてあり得ない」
流行語大賞に対する「野球関連が多すぎない?」という批判について、やく氏は「一番多い指摘だ。今は個人の好みが細分化している中で、若い衆からご年配までわりと均等に支持されているのは野球。そこで私の好きな相撲とは言い切れないものがある。オリンピックやサッカーなどの国際大会になるとそちらに注目するが、平時はやはり野球だ」と説明。
一方で、好き・嫌いはあるとし、選考の方法に触れる。「仮の点を入れ、上位の言葉を揉む。WBCや野球、去年までだとコロナ関連でトップ10がほぼ埋まってしまうこともあるので、なるべく異なるジャンルから取ることは了解事項としてある。今年の『新しい学校のリーダーズ』は、実は私が一番低い点で、他の方は軒並み高得点だった。ただ、見たことないからと私が排除するようなことはなく、折伏され“そういうことなのか”と。そういうゆとりはあるので、結果的にトップ10に入っていた」。
やく氏は「誰もが納得できる審査なんてあり得ない」とも話すが、審査員にふさわしい人はいるのか。「現実に興味のある人だろう。バーチャルの世界やキャラクターに憧れるのはノーサンキューだ。もちろんネットも1つのリアルだと思うが、奥行きまではさすがにない。ただ、全く俎上に上がらないこともない。私はネット不案内だが、選考委員の中にはパックンや室井(滋)さんのように、同年代ながら積極的にアプローチされている方もいる。まして『現代用語の基礎知識』編集長もいて、編集部の人たちがネットからもいっぱい候補語を挙げてくれるので、端から黙殺されているということはない」とした。
また、批判の中には「検索数とかSNSトレンドランキングで十分」といった意見もある。「引き合いに出して悪いが、『今年の漢字』は投票で決まっている。今年は『税』だったが、増税に踏み切られたわけでもない。広く求めすぎると薄まって、結果つまらないものになってしまう」「“あれが抜けているんじゃないか”“どう考えたらこれが入るのか”というご意見はぜひいただきたい。それがなければやりがいはない。ただ、悪事をしでかしているわけでもないので、批判される筋合いはない」との考えを述べた。
■カンニング竹山「M-1だけ“おかしい”となるのはみんな楽しんでいる証拠。ものすごく良いコンテンツだ」
「M-1グランプリ」の審査について、カンニング竹山は「そもそも点数をつけられないものを、わざと数値化したエンターテイメントだ。100年後にやっても“この審査はおかしい”と必ず言われるだろう。ここ数年、お笑いの大会は他局でもやっているが、そこの審査員は誰も文句を言われない。M-1だけが“おかしい”となるのは、みんなが楽しんでいる証拠。ものすごく良いコンテンツだ」と話す。
去年、「過去見てれば平均点くらいわかるでしょ」「基準がわからない。ブレッブレで最悪」といった批判が寄せられた山田は、「10点なら8点とか9点でいいけど、91点と92点のどこが違うのか。すごく難しいんだけど、“ちょっと嫌いなギャグだった”“これスベったな”“それは減点だな”というのがある。まっちゃん(松本人志)ですら必死にやっている」と説明。
また、「いろんな情報が入ってくるし、自分が大好きな人やネタはあるけど、できる限り初心に戻ってシンプルに見る」とし、「トップバッターは大切で、そこはまっちゃんも言っていたところ。敗者復活のシシガシラはある意味、優勝候補だったわけだが、決勝のネタが自虐ネタにいったのは惜しかった。鉄板だと思ったら(予選と)同じネタをやる人もいるんだけど、ウケる日とウケない日がある」と、“お笑い=生モノ”だと語った。
「審査」についてプロデューサーで慶応大学特任准教授の若新雄純氏は、「日本人が賞に厳しいのは、どの先生が採点しても同じ点になるテストを受けすぎているからではないか」と投げかけた。
「高校生を対象にした、トップは文部大臣科学賞がもらえたり、大学の推薦入試で1次試験が免除されるような賞の審査員を長年やっている。高校生は人生をかけてくるわけだが、僕らも厳密に点数をつけられるわけではなく、基本的には直感だ。その申し訳なさを説明する時に、“点数つくし大臣賞出るけど、たまたま今日集まった審査員の好みだよ”という話をしたら、“なんだ、そうだよね”と。みんな真面目だから、入選できなかったら理由があってダメだったんだと落ち込むけど、好みだとなればあっけらかんと楽しむことができる。点数には統一基準があると思い込みすぎているが、客観的な良し悪しはもはやない時代で、好きかどうかで決まるということを受け入れる必要があるのではないか」
(『ABEMA Prime』より)
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