【写真・画像】避難所で“女性配慮”不足? 「見知らぬ男性が横に寝ている状態が阪神大震災以来変わっていない」能登地震、被災地の現状と必要な支援は 1枚目
【映像】所狭しと布団が並ぶ能登町の避難所(実際の様子)
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 能登地震の発生から10日あまりが経過し、石川県によると、10日午後2時時点で死者は8人の災害関連死を含む206人、安否不明者は52人に達した。

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 体育館など1次避難所に続々と物資が届く一方、避難生活で重要視されるのがプライバシーだ。特に女性へのケアについて、政府も防災復興ガイドラインを定めて各避難所に対応を要請。加藤鮎子男女共同参画担当大臣は9日、「避難所の運営体制への女性の参画、女性トイレや女性専用スペースへの女性用品の常備などの取り組みを促している」と述べた。

 避難所生活で何が本当に必要なのか。10日の『ABEMA Prime』では、現地で被災者支援を行う当事者、専門家を招き女性の視点で考えた。

増島さんが見た避難所の現状

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 被災地NGO協働センターの増島智子氏は、6日から現地入り。石川県七尾市や珠洲市などで支援活動を行っている。「被災者は体育館に避難しているが、枕元で土足を脱いで、マットを敷いて寝ている状態。ストーマを使った人がそのまま歩いていたり、トイレには山盛りの汚物が片付けられずに放置されている。ニュースで報じられるように低体温症で亡くなる方など関連死が出始めている」と、早急に避難所の体制を整える必要性を訴えた。

 避難所の生活環境については、やはり厳しい環境であるという。「例えばトイレの鍵がかからない、着替えのスペースがない、お水が出ないので洗濯ができない、発災からほとんどお風呂に入れていないなどの状況がある。男女で時間を区分けして身体を拭いたり、おむつを下着代わりに履いている方もいる」

 また、物資を持ち込む際に「女性の着替えは必要ない」と言われたものの、避難所の女性と話をすると「ほしい」と意見をもらうこともあり、「やはり避難所に入ってコミュニケーションを取りながらやっていかなくては」と実感したと話す。

 避難所の運営も現状は男性が主体。そのなかで「例えば、生理用品が皆の前に並べてあると女性は取りにくい。きちんと囲いをするなど、取りやすい空間を作るべき。私が入っている避難所では“お客様状態”ではなく、一人ひとりが役割を持ってやっているが、それでも細かい例をあげればきりがないほど体制が整っていない」と指摘する。

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 【上図】の通り、防災・危機管理部局の女性職員がいない市区町村も多く、「日本は生理用品についてオープンに話せる文化にはほど遠い。他にも、洗濯を干す場所を女性だけの場所にするなどの区分けも必要だ。今は間仕切りもなく、段ボールベッドもない。見知らぬ男性が横に寝ている状態が、阪神・淡路大震災以来ほとんど変わっていない」点も課題だ。

 このほか現場では、毛布など暖をとる物資が求められる一方、供給はレトルト食品などに偏っているのが現状だ。増島氏は「先日、自分が持参した野菜で千葉から炊き出しをしに来た方が豚汁を作ってくれた。被災者の方が“4、5日ぶりに温かいものを食べて涙が出た”“野菜がたっぷりで本当に心が温まるわ”とおっしゃっていた。今は本当に命と直結するものを持って行くことが大事だ」と述べた。

 女性用品が後回しになりがちな状況で「9日に数人ずつ各自治体から応援の職員さんが入ってきたが、最前線では人手が足りず、眠ることもできずに地元の人々がフル回転でやっている。女性のQOLを上げるためにもマンパワーが必要だ」との見方を示した。

専門家は避難所における“役割の固定化”を指摘

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 こうした現状を踏まえ、災害リスクマネジメントに精通する大阪大学の杉本めぐみ准教授は「物資配布の担当者が男性しかいない点も含め、避難所で女性をサポートする環境整備が行き届いていない。これは被災地で毎回繰り返されてきたことだ」と指摘する。

 そのうえで「男性ばかりが配布する役割分担になっていると見受けられる。一方、女性は炊き出しやおにぎりを作る、掃除など役割が固定化されている。地方に行けば行くほど、女性が違う役割をする可能性がほとんどないのが避難所の現状だ」と述べた。

 なぜ、被災地に防災・危機管理部局の女性職員が少ないのか。この点について杉本准教授は「リスクが伴うため、女性を危機管理に配置しないという判断が大きく作用している」と言及。

 東日本大震災でも同様の課題が露呈したものの、抜本的に手を打ってこなかった背景もあり、内閣府は『男女共同参画の視点からの防災・復興ガイドライン』を提示。2020年に避難所運営の具体的な指針(フリップの『避難所の女性への配慮』)がようやく出てきた経緯がある。

 杉本氏は「マニュアルが示されたのはつい最近。平時にできていないことは災害時にできない。男女共同参画の意思決定は女性にとって重要だ。今までの日本社会で我々はこの認識を共有できなかったことが現状を招いた原因だ」と述べた。

避難所に“女性リーダー”求める声も

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 なかなか声が反映されないなか、女性リーダーがいると避難所運営がしやすいとの声も聞かれる。増島氏も「様々な被災者がいるなかで、皆が過ごしやすい環境を作るため、女性はもちろん多様なボランティアが被災地に関わることが今は大事だ」との見方を示した。

 また、被災時に女性が準備すべきものとして「持病の薬や着替え、アレルギー対応の食品、防犯ブザーなどが必要」と例をあげた。ただ、「“これを準備しなければならない”と言うと、東日本大震災のように全てが流されてもう何もなかったということもあり得る。極限の状況でも生活できる技術・知恵を、同時に学んでいかなくてはならない」と指摘。

 「困ったときはお互い様。それぞれが声を掛け合い、リーダー的な人の存在もあって避難所が快適に運営できる。学校や地域の祭りなど様々な普段の関係性を生かしながら、避難所でその仕組みがうまく回るよう、日頃から意識をして関わっていくことも大事だ」と述べた。

(『ABEMA Prime』より)

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