路上に座る男性たちと立ち止まって話をする人たち。実はこれ、“愚痴聞き”の様子だ。
長野市在住の公務員・奥山宗思さんと会社員の小林孝平さんは時折、週末の夜に長野駅前に座り、道行く人たちのグチを無料で聞く「愚痴聞き屋」を行っている。
一体どんなグチを聞くのか?
「とある会社の社長は『自分は会社では部下から頼られる社長、家に帰れば責任感のある父親となる。自分の肩書き・役割から解放される時がない』などと話していた。また、ある男性は『スマホで位置情報まで監視されるほど彼女からの束縛が激しいが、彼女が好きなのでどうすればいいか分からない』と悩んでいた」(奥山さん)
2016年から始めたという愚痴聞き屋。コロナ禍で活動を控えたこともあったが、およそ7年間で300人から400人ほどの愚痴を聞いたという。
時にはグチに花が咲き日付を跨ぐこともあるという。グチを聞く際に心がけていることについて奥山さんは「アドバイスはほとんどしないと決めている」と語り、小林さんは「画面越しではその人の雰囲気が充分に感じられないので対面を大事にしている。また、どのような年代の方とも同じ目線で話すようにしている」と述べた。
何かとストレスの多い現代社会。「見ず知らずの人にグチを話す」という行為が人々にとっての「心の拠り所」になっているようだ。
「職場・家庭・友人関係だけだと“属性”が限られてしまうが、路上というサードプレイス(3番目の場所)に出るといろんな人と接点を持つことができる。また、グチからは相手の価値観・本来の考え方が見えるため、『より深いコミュニケーション』ができる」(奥山さん)
「僕自身もグチを通じていろんな人とつながれた。これからも大事にしていきたい」(小林さん)
■「グチを言う側」の注意点とは?
「愚痴聞き屋」について精神科医の木村好珠氏は「アドバイスをしないという点、そして同じ目線で話をするという点、どちらも素晴らしい」と称賛。
「心理学的には、グチを話すという行為にはカタルシス効果があると言われており、リラックスして葛藤から解放される。仕事や恋人などの悩みは『心配させてしまうかな』などと考え、なかなか周囲に話せないが、アドバイスもせずに『そうだよね』と受容をしてくれる第三者にならば話しやすいだろう。精神科医になる際に最初に教わるのは『同情はするな、共感しろ』という点であり、二人はそこを押さえている」
「グチを言う側」の注意点はあるのだろうか?
木村氏は「グチを言う際には『その場で終わり』にして聞いてくれた人にお礼を伝えることだ。一旦グチを吐いたら『じゃあこれからどういう行動をしたら明るい気持ちになれるかな』などとしっかりと自分で転換させることが重要だ」と解説した。
さらに木村氏は「愚痴聞き屋のような方が周りにいない場合はカウンセリングなどを活用するのも選択肢だ」と述べた。
(『ABEMAヒルズ』より)
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