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 さまざまなプロレス格闘技団体の実況を担当し、多方面で活躍する清野茂樹アナウンサーが、ついに世界最大のプロレス団体WWEの実況をスタート。1月28日に行われる「ロイヤルランブル2024」からWWE実況アナウンサーに加わることとなった。少年時代からの大のプロレスファンで、WWEも大好きという清野アナが唱える「WWE=大相撲」説とは何か。また、WWEの実況を始める巨大なモチベーションについても語ってもらった。

取材・文/堀江ガンツ

ーー清野さんは、子供の頃から大のプロレスファンですよね?

清野 もう観戦歴40年以上ですからね。つける薬がないというか、重症患者です(笑)。

――WWEも昔からご覧になられてましたか?

清野 あの手この手で観られるものは観てました。ただ、地上波でやっていた2000年代初頭、ぼくはまだ広島にいたので放送がネットされてなくて、ザ・ロック人気の熱狂を体感することができなかったんですよ。だからこそ、昨年10月から日本でRAWとSMACK DOWNが即日で観られるようになって、過去最高に観やすい環境になったのがうれしいですね。

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■初めての現地観戦は大学生の夏休み。’93年の「サマースラム」

――WWEを海外で現地観戦されたことはありますか?

清野 2回行ってるんですけど、初めて行ったのは大学生の時ですね。夏休みに’93年の「サマースラム」を(ミシガン州)デトロイトまで観に行きました。チャンピオンがレックス・ルガーで挑戦者がヨコヅナという、日本的にはちょっと微妙なカードだったんですが(笑)。

――ハルク・ホーガン、“マッチョマン”ランディ・サベージの時代から、ブレット・ハートの時代に移る狭間ですね(笑)。

清野 ルガーのチャンピオン時代を追いかけてる日本のファンは、ほとんどいなかったと思います(笑)。2回目は2011年にジョージア州・アトランタで見た「レッスルマニア」ですね。

――現地でWWEを生観戦して、カルチャーショックは受けましたか?

清野 やっぱり観客の数がすごいのと、お客さんが第1試合から積極的に騒ぐことに驚きましたね。日本って、プロレスファンが高尚なものを楽しんでるみたいなところがあるじゃないですか(笑)。

ーー腕組んで「じっくり見てやるぞ」みたいな(笑)。

清野 「批評してやるぞ」みたいな(笑)。そういうのではなく「四の五の言わずに楽しむんだ」っていう観戦スタイルだったのは、カルチャーショックでしたね。

――「踊る阿呆に見る阿呆」じゃないですけど、まさに「踊らにゃ損損」という世界。

清野 国民性もあるんでしょうけど、“お祭り”を斜に構えて見てもしょうがないですから。楽しみ方を知ってるなって思いました。

――「見る」というより「参加する」って感じですね。

清野 あと違うのは客層の幅ですよね。’90年代の日本におけるプロレスって、テレビのゴールデンタイムも終わっていたのでサブカルチャーとなって、20代以上の男性ファンが中心だったじゃないですか。でも、WWEはファミリー層が中心で小さな子供から大人までみんなで楽しんでいて、すごくいいなって思いました。

――プロレス観戦というより、家族でテーマパークに行くような感じですかね。

清野 だからファンが断絶してないんですよね。例えば、子供の頃にWWEを観ていて高校生ぐらいから観なくなったとしても、大人になったらまた子供を連れて観に来たりする。そのサイクルが出来上がっているので、ずっと歴史が繋がってるんだろうなって思います。

――だからなのか、WWEって新しいスーパースターが次々と登場する一方、歴史もすごく大事にしてますよね。

清野 そうなんです。実況でも「初代王者バディ・ロジャースの時代から……」みたいなことを言ったりするし。番組オープニング映像もハルク・ホーガンvsアンドレ・ザ・ジャイアントはもちろん、ビリー・グラハムも一瞬映ったりして、ああいうのが素敵ですよね。

――まさに“終わらない大河ドラマ”という。

清野 だからWWEってアメリカ文化そのものという感じがしますけど、ぼくは大相撲にすごく似てるなって思うんですよ。

――「WWE=大相撲」説ですか!(笑)。

清野 ぼくは大相撲の仕事もしていますけど、本当に似てるんです。大相撲って明確な番付があり、みんな横綱や幕内最高優勝を目指すという共通の目標がある。WWEも世界ヘビー級王座とユニバーサル王座をみんな目指していて、メインロースターの入れ替わりは、相撲でいう十両から幕内への入れ替わりですよね。そして大相撲は年6場所でWWEも5大大会があるほか、相撲に地方巡業がありWWEにもハウスショーがありますけど、どちらもご当地力士、ご当地スーパースターが活躍して、それは一切テレビには映らないんです。

――たしかにそうですね!

清野 そしてWWEも大相撲もチャンピオンになることや幕内最高優勝こそが最高の称号であって、他のスポーツみたいにワールドカップがあったり、他団体との統一戦なんてないじゃないですか。大相撲vsモンゴル相撲の全面対抗戦なんてありえない(笑)。その中で世界が完結していることもまったく同じなんですよ。

――WWEは引退した元レスラーがエージェントやコーチ、裏方のプロになってますけど、これも大相撲の親方や協会職員の制度にそっくりですね。かつての横綱や大関が場内整理をしてたりして(笑)。

清野 チケットのもぎりまでやってますからね(笑)。

――ぼくも数年前に「レッスルマニア」の取材に行ったら、取材陣の案内係が元WWF王者のボブ・バックランドだったんですよ(笑)。

清野 マジですか!?(笑)。でも、大相撲もどんな名横綱でも親方になって最初の仕事が警備なんですよ。それと一緒ですね。だからいろんな意味で、日本人が慣れ親しんだ大相撲をいちばん体現しているのはWWEだと思います。

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■中邑真輔の試合を実況できるというのは、大きなモチベーション

――ある意味でDNAに組み込まれているという。そんなWWEの実況を1月28日から担当することについて、どんな思いがありますか?

清野 とにかくうれしいですよ。世界最大のプロレス団体に携われるわけですからね。あと、ぼくがWWEの仕事をやれるもう一つ大きなモチベーションは、中邑真輔の実況ができるということですね。中邑さんはぼくの大学の後輩であり、試合はファン時代から観ているし、新日本プロレスで10年間仕事も一緒にして。最後、彼がアメリカに行く前には家のほうまで行って「じゃあ!」って挨拶して送り出して、それを最後に一度も会ってないんですよ。

――じゃあ、あれから7年会ってないわけですか。

清野 ぼくも「次にまた一緒に仕事するまでは会わない」みたいな頑固なところがあるんです(笑)。

――プロレスにおいて、そういう“溜め”っていうのは大事ですからね(笑)。

清野 わかってもらえますか?(笑)。だから、中邑真輔の試合を実況できるというのは、ぼくにとってすごく大きなモチベーションになります。彼が世界ヘビー級チャンピオンになる姿を実況したいという思いがありますね。

――それは実現してほしいですね。その第一歩である1月28日の「ロイヤル・ランブル」への意気込みも聞かせていただけますか。

清野 第1回目の放送がPPVってことにびっくりしましたね。先ほど語ったとおり、WWE本来のファミリー層やライト層に届く仕事をしようと思ってたのに、PPVって好きな人しか観ないじゃないですか(笑)。

――しっかり課金するコア層ですよね(笑)。

清野 これはもし不備があったらサンドバッグにされるんじゃないかっていう気持ちもありますけど、「一緒に参加して楽しみましょう!」っていう感じですね(笑)。

――「一緒に踊ろうぜ!」と(笑)。

清野 本当にそんな気持ちです。WWEはみんなで一緒になって楽しむものですから。ぼくもみなさんに楽しんでもらえるよう、一生懸命やらせてもらいます!

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