【写真・画像】GDP世界4位転落も悲観しなくていい? 東大史上初の経営学博士「日本人の生産性が低いのは嘘」 経済成長停滞で“ギスギスした世の中”になった背景とは 1枚目
【映像】2023年 国別GDPトップ5(図)
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 2023年のGDP(国内総生産)で日本はドイツに抜かれ、世界4位に転落する可能性が高まっている。

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 高度経済成長期は、パナソニック ホールディングスの創業者・松下幸之助氏や自動車メーカー、ホンダの創業者・本田宗一郎氏などカリスマ経営者たちが日本の飛躍を支えてきた。

 しかし今、人口減や労働力の減少、物価高が続くなか、実質賃金は20か月連続でマイナス。生活が改善しない現状に、Xでは「今後もどんどん落ちていくんだろうな」「日本が成長できる気がしない…」などの声も聞かれる。

 そうしたなかで、東京大学史上初めて経営学博士号を取った経営学者の岩尾俊兵氏(慶應義塾大学商学部准教授)は、「日本はまだまだ成長できる!」と言い切る。そもそも、なぜ経済成長が停滞してしまったのか。『ABEMA Prime』では同氏を招き、実は低くない日本人の生産性などについて掘り下げた。

経済成長 なぜ目指す?

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 中学卒業後に自衛官となるも、その後高卒認定試験を経て慶應義塾大学に進学し、さらに東京大学で史上初の経営学博士号を取得した岩尾准教授は「1度道を外れたら終わりだと言われるが、みんなが応援したくなる目標を持つと様々な人が助けてくれる」と語る。持論は「全ての人が人生の経営者になるべき」。“人生経営”という考え方で異色の経歴を歩んできた。

 「生産や価値創造活動研究の専門家として考えると、経済成長が必要な理由は数多くある。例えば、経済成長しないと道路などのインフラはボロボロになり、国防力もなくなるので他国から攻められるリスクが高まり、外交力もなくなる。そして、人の心も荒むなどさまざまな問題が生じる」

 「一方、経済成長のために国民が苦労するのは目的と手段の転倒だ。国民のために国がある。政府は財政再建と増税のために存在しているように見えるが、本当は国民が幸せになるためにある。そのためには、短い時間でも高い付加価値を創造する必要がある」

 経済成長は必要だが目的はあくまで国民の幸せ。その手段として“短い時間でも高い付加価値を創造する”というのが岩尾准教授の理論だ。

なぜ経済成長停滞で“ギスギスした世の中”に?

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 では、なぜ日本の経済成長は停滞してしまったのか。岩尾准教授は「ギスギスして成長が止まったメカニズムを、生産の目から理解する必要がある」と言及。

 「1971年の第2次ニクソン・ショックで1ドル360円の固定相場制が崩壊し、1973年から変動相場制に移行。お金の価値が変動する社会ができ、日本円は20年で約4.8倍になった。すると、日本円を持っておくと金持ちになれるので日本円を使いたくなくなる。日本円を使わないと払えないものは何か。日本人の給料と日本人が作った製品、そして日本人が使う研究開発費だ」

 「日本円でしか払えないものはケチケチして、一方でそのお金は海外にばら撒き、中国や東南アジアに工場を建てて、米国の株を大量に買う。生産・価値創造活動を国内でやらず、海外に移しているので日本のGDPが成長しなくなり、国民は貧乏になった」との見方を示した。

 これに対してお笑い芸人のパックンは「今は円安に転じているので、逆に日本の皆さんが国内にお金を落としている。日本の物やサービスにもお金を使っているのでは?」と発言。

 岩尾准教授は「おっしゃる通りで国内にお金を使う社会へ戻る兆しはあるが、1ドル360円時代と比べると今は140円でまだ円高だ。『日本は世界最大の対外純資産国』というフリップの通り、世界に対してお金をばらまいた結果32年連続で世界一豊かな国、海外から見て世界一お金を持っている国になっている。その投資の先が国内になれば日本は豊かになる。あまりにも海外ばかりに投資していることが問題だ」と述べた。

「日本人の生産性が低い」は嘘?

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 また、日本人の生産性について岩尾准教授は「“日本は成長しない”“日本人は生産性が低い”と言われている。円高もあり日本人の給料を上げても仕方がないと。投資もしないし、日本人に研究費を使わせない。その結果、実際に成長しなくなっている。だが、日本人の生産性が低いのは嘘で、日米の生産年齢人口一人あたりGDP(フリップ)を見ても、成長率は米国を超えている。“生産年齢=実際に働いている人一人当たりの生産性では勝てない”と皆言うけれど、米国の2倍だ」と指摘。

 「データは生産年齢人口=15歳から64歳までの人口で割ったもの。日本はこの期間に従来働いていなかった女性や高齢者が働くようになった。就業者一人当たりのGDPだと米国が日本の1.5倍増えている」というパックンの反論に対しては、「その通りで、いろいろ調整すると額では米国には勝てない。ただ、1980年を基準にすると米国に近い成長率はあった。この話が知られていないので“高齢者がいるから日本は皆貧乏になる”と言われる。実際は、高齢者も女性も頑張って働いている。だから、労働時間当たりの生産性を高めて労働時間をもっと短くてもよくすることが大事だ」との見方を示した。

 岩尾准教授は「経済成長しない状態から脱するためには、女性がもっと短時間でもフルタイム勤務できるような状態を作ること。2023年にノーベル経済学賞を取ったクラウディア・ゴールディン氏は、女性の方が時間当たりの賃金や生産性は男性と同等か高いと言及している。しかし、家事育児など様々な原因で労働時間を伸ばせない現状があり、男女の給与格差が起きている。この問題を解決するためにも日本は時間当たりの生産性を高め、高齢者も“この短い時間でかつ仕事も楽しいなら、これなら働いてもいいか”と思える状態を作る。こういう議論にもっていきたい」と答えた。

(『ABEMA Prime』より)

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