1月28日(日)有明アリーナにて「ONE 165: Superlek vs. Takeru」が行われ、青木真也と対戦予定だったセージ・ノースカットが試合当日に出場を拒否。青木は急きょ打診されたジョン・リネカーとの対戦を承諾し、バックからのチョークスリーパーで一本勝ちを収めた。試合数時間前に対戦相手が変わるという前代未聞の事態に直面した青木だったが、あるプロレスラーの一言が背中を押したという。

2012年からONEを主戦場に戦い、ONE世界ライト級王座を2度戴冠している青木。しかし2022年以降は勝利から見放され、2023年はMMAでの試合オファーがないという状況だった。今大会では元UFCファイターでもあるノースカットとの対戦が決まり、大会の公式ビジュアルには“最後の闘い”というキャッチコピーがつけられ、青木自身も「世界トップクラス、最高峰の舞台で、最高峰の選手と戦うことが出来ることが最後」と語っていた。

そんな一戦は大会当日に思わぬ方向へと進む。ノースカットのセコンドがビザのトラブルで急きょ帰国を余儀なくされ、それを理由にノースカットが試合出場を拒否したのだ。

ONEは今大会に向けてスタンバイしていたジョン・リネカーとの対戦を青木にオファー。当初青木はこれを拒否したが、ONEのチャトリ・シットヨートンCEOから直接打診され「僕はDREAMがなくなってからチャトリに助けてもらった。そのチャトリに『お願いします』と言われて、僕が『今、あなたに僕が必要ですか?』と聞いたら『必要だ』と言ってくれたので『ここで恩返しをします』と答えました」と承諾。試合も数時間前に対戦カードが変更され、急きょ青木とリネカーの一戦が行われた。

この前代未聞の事態に青木営が困惑する中「青木さんは“持っている”。ここはやった方がいいですよ。プロレスラーならやりましょう!」と声をかけたのが、青木のセコンドに入ったプロレスラーのケンドー・カシンだ。カシンは青木にとって憧れの存在で、青木のプロレスデビューの相手を務めた選手でもある。これを機に青木とカシンの交流が生まれ、大会前にはカシンのもとを訪問し、試合当日のセコンドを依頼していた。

試合は青木がリネカーの打撃を封じて、得意の寝技に持ち込んでチョークスリーパーで一本勝ち。試合後には5万ドルのボーナスも支給され、青木はカシン含むセコンドの面々と記念撮影に収まった。

「チームのみんなはやめた方がいいというスタンスだったけど、カシンさんだけはやりましょうと言ってくれた。ボーナスが出たあとも『よかったですね!』と言っていて(笑)、さすがでした」と青木。今後について早速チャトリCEOから「新しい契約の話をしたい」とリクエストされていたが「今日は色々大変だったんで少し休みます」と激動の一日を締めくくった。

文/中村拓己
写真/ONE Championship

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