プロ麻雀リーグ「大和証券Mリーグ2023-24」1月29日の第1試合、待望の初勝利を手にしたBEAST Japanext所属で、乃木坂46の元メンバー・中田花奈(連盟)。2021年3月にプロ雀士になり、6月には自身がオーナー店長を務める麻雀カフェ「chun.」をオープン。アイドル卒業後から、第2の人生を麻雀とともに生きている中田にとって、覚悟を持って挑戦した大きな舞台での1勝は格別だ。勝利の祝杯を誰とあげたいか。「Mリーガーになって支えてくれた人、助けてくれた人がすごくたくさんいます。私の周りは、なんでこんなにいい人ばかりなのだろうと思います」。麻雀と生きる選択をした中田にとって大事な居場所。その麻雀カフェで支えてくれたスタッフ、多くのファンとともに喜びを分かち合う。
2020年10月にアイドルを卒業した後、プロ雀士、そして麻雀カフェの店長と、急激に麻雀界との関わりを強めていった中田。プロ雀士になって2年半でMリーガーとなることは、本人にとってもプレッシャーだった。対戦する相手は、自分よりもはるかに実績、経験、雀力がある強豪ばかり。これまでは麻雀カフェの仕事のウェイトが大きく、経営から厨房での調理まで、多くのことを自分でこなそうとしてきたが、試合に向けての準備時間を確保するために、ガラリと生活を変えた。
中田花奈(以下、中田) 私がほとんどの仕事をやっているような状態で、私ありきの店でしかありませんでした。だからスタッフを増やして、仕事を任せて、その分麻雀の勉強ができるようになりました。試合の時間というのではなく、勉強のためです。試合で時間に拘束されるのはしかたないですが、私の勉強のための時間というのは、はっきりと「仕事の時間」ではないじゃないですか。だから言いづらいことでもあったのですが、それをスタッフのみんなが快く引き受けてくれて、助けてくれています。バイトの子たちのスキルの高さ、能力の高さで助けられています。
店に関わる負担が減り、その分「雀士・中田花奈」の精度を高める。試合で結果を出し、活躍することで、また店の盛り上がりにもつながっていく。そんな好循環を目指した決断が、Mリーグ入りをきっかけに下された。テレビ、ラジオなどでレギュラー番組5本を抱え、プロ雀士としての試合はMリーグだけというわけでもない。その上で麻雀の勉強会などに参加するようになれば、どうしても店に顔を出す時間は減る。そんな時、スタッフだけでなくファンもまた、店を支えてくれている。
中田 お客様も、私がいなくてもお店に来てくださる。番組の生放送などがあって、私がいないことをわかっていても、お店に来てくださっているのは、少しでもお店を支えようとしてくれているのだと思います。それに常連さんが、初めていらっしゃったお客様を見つけると「なんで来たんですか」「麻雀やってみませんか」と誘ってくれたりもするんです。私から「勧誘してね」とか、お願いはしていないのにです。お店をよりよくするために、お客様同士が仲良くなって、初めて来てくださったお客様が楽しかったと思って帰ってくれる。すごくいい循環を常連さんが作ってくれています。
Mリーグ入りが決まった後、周囲からたくさん心配されたことがある。一部から飛んでくる厳しい声だ。過去にもMリーガーだけでなく多くのプロ雀士が、打牌選択や所作、発言などについて心ない言葉を浴びせられた結果、精神的に大きなストレスを感じ、中にはプロ雀士を辞めてしまった者もいる。いわゆる「アンチ」への対応について、中田はどこまで耐えられるか。ただ本人は、全く気にしていない。
中田 みんな心配してくださるのですが、メンタルは大丈夫です。アイドル時代にもいろいろ経験していますので。自分の打牌で情けないものは多いので、なんでこうしてしまったのだろうというのは減らしたいと思います。
強がりではない。飛んでくる言葉の中には「中田花奈は一生勝てない」というものまで含まれているが、それすら反骨心で力に変えるたくましさを備えている。汚い言葉を吐く者を見る度に、多くの人に支えてもらっている自分の幸せをかえって強く自覚する。そんな発想の転換すらできる。冷たい言葉に傷つくよりも、温かい言葉に包まれる喜びの方が大きい者は強い。
中田 お店では、いつもみんなで私の試合を見てくれているんです。初勝利の時は、みんなで喜んでくれていたと思います。お店にいない時でも、ビールの売り上げとかを見れば、どれだけ盛り上がってくれたかとかわかるので(笑)。だから私もその中に入って、一緒に喜びたいですね。みんなで祝杯をあげたいです。
気心知れたスタッフ、ファンたちと飲み交わす勝利の美酒は、格別であるに違いない。中田はそんな瞬間を何度も送り届けるために、また麻雀の勉強に励む。