石田流三間飛車や飯島流引き角戦法、藤井システムに丸山ワクチンなど、将棋界にはいろいろと名前がついた戦法があるが「戸辺攻め」とは一体なんなのか。日本全国を8つのブロックに分けた団体戦で行われる「ABEMA地域対抗戦 inspired by 羽生善治」予選Aリーグ1回戦・第2試合、北海道・東北 対 中国・四国が1月27日に放送された。この試合中、北海道・東北の選手である戸辺誠七段(37)の異名である「戸辺攻め」について、棋士たちが改めて考えたところ、ツボに入ってしまう場面があった。
将棋の世界はもちろん勝敗も大事だが、同時に新たな戦法を考えたり、対局者とともに熱戦を繰り広げて名局を作り上げたりする(棋譜を残す)ことにも大きな価値がある。将棋大賞で新手・妙手を表彰する「升田幸三賞」があるのも、その一つだ。無数に指されたと思われる戦法でも、わずかな違いから大きく広がりを持つだけに、近年でも棋士の名前が入った戦法は新たに出ている。多くの場合は、棋士名に戦法がセットになっているが、中には藤井猛九段(53)の「藤井システム」のように、ほぼ名前だけで表現するものもある。
北海道・東北 対 中国・四国の試合で、第4局に登場した北海道・東北の戸辺七段は振り飛車党で、少々の無理は承知の上で、とにかく積極果敢に攻めまくるという棋風。戦型としては中飛車の割合が多いが、三間飛車や四間飛車なども指しこなす。ただ、どこに振ったとしても攻めの姿勢は変わらない。すると、戸辺七段が菅井竜也八段(31)との対局中、糸谷哲郎八段(35)が「さすがの戸辺でも、ここは受けるでしょ。私も戸辺さん、よく知っている」と、戸辺七段が受けの手を選択するだろう場面でつぶやいた。
これに反応したのが山崎八段だ。「いやでも、普通の人だと戸辺攻めとか…」と語り出すと「将棋界に攻め将棋(の人は)いっぱいいるのに、戦法ですらない。普通に『飯島流』とかならわかるけど『戸辺攻め』って別に将棋の具体的な例を何も表してないからね」と続けた。確かに「戸辺攻め」は、この場面ではこう指すといったような具体的なものはなく、いわば戸辺七段の戦い様、生き様を示すような言葉。潔く全身でぶつかるような将棋が、またファンの心を奮い立たせるが、思わぬ形で山崎八段が語ったことには大ウケ。「山ちゃんそれは大正解 本質や」「戸辺攻めは戦法ではないw」「雰囲気ってこと?w」といった反響が集まっていた。
◆ABEMA地域対抗戦 inspired by 羽生善治 全国を8ブロックに分けた「地域チーム」によって競う団体戦。試合には監督とチームから選ばれた出場登録棋士の4人の計5人が参加可能。試合は5本先取の九番勝負で行われ、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールール。試合は1試合以上出場する「先発棋士」と、チームが3敗してから途中交代できる「控え棋士」に分かれ、勝った棋士は次局にも出場する。先発棋士は1人目から順に3人目まで出場し、また1人目に戻る。途中交代し試合を離れた棋士の再出場は不可。大会は2つの予選リーグに4チームずつ分かれ、変則トーナメントで2勝すると本戦進出。ベスト4となる本戦は通常のトーナメント戦。
(ABEMA/将棋チャンネルより)