2024年4月から部分的に解禁される“日本版ライドシェア”。これまで、一般のドライバーが自家用車で他人を送迎することは「白タク」行為とされていたが、タクシー会社が一般ドライバーへの研修や運行管理を行い、タクシーのような使い方が可能になる。
これについて、教育経済学を専門とする慶應義塾大学教授の中室牧子氏は「今の規制改革の中で最も大きなテーマと言っていいと思う」と、その重要性を強調した。
“日本版ライドシェア”は、配車アプリで依頼するとタクシー会社だけではなく、タクシー会社が研修や運行管理を行った一般ドライバーの自家用車もタクシーのように活用できるという。運賃もタクシーと同じで、6月を目処にタクシー会社以外の企業参入も検討されている。
中室氏は、「インバウンドの観光客も非常に増え万博も控えている中で、まずは短期的に移動の足の供給を増やす必要がある」と話す。また、コロナ前後で比較すると、約6万7000人のタクシードライバーが離職している現状で、「タクシードライバーの高齢化が進んでおり、中央値が70~74歳。この先も退職者が続々と出る可能性を考えると、タクシーだけではなく、移動の足を確保しておくことは非常に重要」と述べた。
また、すでに2016年からUberでライドシェアを活用している地域もある。京都・丹後町では、タクシー空白地帯を埋めるため、NPO法人が運行開始し、地元住民が自家用車でライドシェアをしている。ただし、利用エリアは限定され、タクシー料金のほぼ半額、利用者は丹後町民と観光客だという。
さらに中室氏は丹後町と海外のライドシェアとの違いについて「海外のライドシェアとは少し違う。海外の場合は、乗り降りする場所は自由だが丹後町は限定されている。なぜそうなったかというと、京丹後市というのは過疎化が進んでいて、かつ、非常に広い市なので、タクシー会社やバス会社が撤退してしまい、完全に地域の人たちが生活の足を失ってしまった。通院にも大変困る高齢者がいるということで、交通空白地帯に限り運行している」と説明。
また、「今、地方のタクシー会社では車はあるが運転する人がおらず稼働できていない状況が非常に増えている。問題は車ではなくて、“人が足りていない”こと」と、人手不足解決の重要性を語った。
さらに他業種からの企業参入については「6月の規制改革会議までに新法についての検討ができるかが非常に重要。皆さん、タクシーとライドシェアはライバルのように思うかもしれないが、私は違うと思う。ライドシェアは基本的にデジタルプラットフォーマーが強い。車を抱え、タクシー運転手を雇用、派遣している運送業であるタクシーと、ライドシェアを経営するようなデジタルプラットフォーマーは全く別の業だ。そんなデジタルプラットフォーマーはライドシェアへ参入する意欲は強いと思う」と述べた。
安全面、防犯面については「ドライバーのアルコールチェックや健康チェック、性犯罪の防止など、この点は新法の中でしっかり決めていかなければならない。また、新しい技術を生かして安全管理をすることも可能だろう。乗車位置から目的地まではきちんとアプリの中で管理されている。大幅に違うルートを通ったり、目的地から遠ざかっていることを検知すると、3分以内に通報するなどのシステムも必要かもしれない。ライドシェアサービスの多くはドライバーと客が互いに対して評価する仕組みも整っているので、評価が低いと自分が一番損をする。倫理面や報酬だけで安全性を担保するのではなく、技術で担保していくことができるのもライドシェアの重要な点だと思う」と説明した。
タクシーのように身元がしっかりと把握されていることに安心感を得られる人はどうしたらいいのだろうか?
中室氏は「それも非常に大事だ。そう考える方は、ぜひタクシーを選んでもらうといい。移動の足がなくて困っている人のために、選択肢を増やすことが何よりも大事だ」と述べた。(『ABEMAヒルズ』より)
■Pick Up
・「ABEMA NEWSチャンネル」がアジアで評価された理由
・ネットニュース界で話題「ABEMA NEWSチャンネル」番組制作の裏側