人と動物が会話できるようになる日は来るのか? 『ABEMAヒルズ』は鳥の言葉を解明し、文法まであることを突きとめた注目の動物言語学者を取材した。
今年1月、東京大学先端科学技術研究センター准教授で動物言語学者の鈴木俊貴氏は世界中の「面白い」をテーマにした国際的な賞「World OMOSIROI Award」を受賞。
「僕はシジュウカラという鳥に言葉があることを見つけました」
鈴木氏が研究しているのはシジュウカラの鳴き声だ。私たちが聞いても自然から聞こえてくるBGMとしかとらえられない鳥の鳴き声。鈴木氏は、その言葉の意味の解明に取り組んでいる。
「シジュウカラはおそらく 20個以上の単語を持っている。例えば『ヘビだ!』と危険を知らせる時は『ジャージャー』と鳴き、周りのシジュウカラは地面や茂みの中のヘビを探す。 他にも上空にタカが現れた時『ヒヒヒヒ』と鳴く。するとシジュウカラは藪に逃げたり上空を確認してタカがいないかどうか探したりする。このように鳴き声にはちゃんと意味があってものを示すことができる」
さらにシジュウカラは、異なる鳴き声を駆使し、単語の組み合わせで文章を作る能力があるという。その文章には語順があり、単語を逆にして聞かせると意味が伝わらなくなることも鈴木さんは突きとめた。
鳥が言葉を話すという証明をするために徹底したのが、鳴き声の種類やシチュエーションの観察だ。「どんなときにどんな鳴き声を発しているのか」、鈴木さんは大量のサンプルを集めた。
その上で「その鳴き声が本当に特定の意味を伝えているのか」を調べるためにスピーカーで録音した鳴き声を聴かせて行動の変化を調べた。例えば「ジャージャー」という音を聞いたシジュウカラがヘビがいそうな場所を探すのであれば「ヘビという言葉」が伝達されたことになる。
鈴木さんは様々なシチュエーションでの検証をひたすら繰り返し、科学的な証明へとつなげていった。鈴木さんによると、鳥は鳴管と呼ばれる発声器官を2つ持つため、他の生き物に比べてずば抜けた発声能力を有するという。
「高度な言語能力は人間にしかないと考えられてきたが、実は動物も豊かな言葉の力を持ってるかもしれない。そこで、動物言語学という新しい分野を立ち上げ、これから様々な動物の言葉の世界を解き明かしたいと考えている」
言葉による意思疎通は人間だけのもの、という人間の思い込み。動物が発する言葉を解明することで、人間が失ってしまった自然との向き合い方が取り戻せるかもしれないと鈴木さんは考える。
「僕たちがもっと原始的だったときは動物たちの言葉も分かっていたはずだ。だが人間はどこかで動物の言葉に耳を傾けなくなってしまい、自然との付き合い方が分からなくなってしまった。失ってしまった能力を取り戻して、自然のことをちゃんと理解し観察するような世界がきたら僕たちの生活はもっと豊かで平和になるのでは。よく『鳥の言葉で地震予報できる?』などと言われるがそんな話ではない。鳥の言葉が一つ分かるだけで僕たちと自然環境のつながりが強化されるし、見える世界が一つ広がる」
(『ABEMAヒルズ』より)
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