日本全国を8つのブロックに分けた団体戦で行われる「ABEMA地域対抗戦 inspired by 羽生善治」予選Bリーグ1回戦・第1試合、中部 対 関西Bが2月3日に放送された。藤井聡太竜王・名人(王位、叡王、王座、棋王、王将、棋聖、21)5連投の初戦となった第2局では、古森悠太五段(28)との対戦中に長考する場面も。両軍の作戦会議室では「こういう時に“八冠”が何を選ぶのか興味がある」と棋士たちの視線をくぎ付けにしていた。
藤井竜王・名人の初陣は、新・関西将棋会館の移設地となる大阪府高槻市出身の古森五段との対戦に。2024年秋の新設に華を添えるべく一丸となるチーム関西Bの中心人物で、“高槻のプリンス”との異名を持つ気鋭棋士との一戦は三間飛車の出だしとなった。公式戦では過去に2戦の対戦があり、藤井竜王・名人の2連勝。この一戦でなんとか絶対王者を破るべく、古森五段が得意戦法をぶつける形となった。
相穴熊を志向し持久戦模様からじりじりとした戦いに。古森五段は堅陣を活かし、積極果敢な攻めを繰り出していった。解説を務めた冨田誠也四段(27)が「振り飛車がうまく立ち回ったように見える」とコメントしたところで、藤井竜王・名人は手を止め長考。持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算の超早指し戦で1分以上を投じ盤をにらんでいた。
すると、関西Bの作戦会議室では「王道の△8六歩が来るのかな?」「こういう時に“八冠”が何を選ぶのか興味がありますね」。仲間の中部の控室からも「悩ましいね。いろいろあるね。△8六歩もありそうだし△7六歩も普通だし…」。全冠覇者の選択に、両軍の棋士たちの視線はくぎ付けとなっていた。
約1分半を費やし、藤井竜王・名人は盤を広く見据えた△8六歩を選択。この一手を先に口にしていた関西B監督の畠山鎮八段(54)は、チームメイトから「監督の読みが冴えていましたね!」と声を掛けられると、「いや!俺と同じ手を選ぶってことは古森くん、チャンス!」とにやけ笑いが止まらない様子だった。
対局は二転三転の末、粘り強く相手の堅陣を攻略した藤井竜王・名人が勝利。「はっきり負けにしてしまったところもあったが、終盤はお互い時間がない中で仕方がないと割り切って指していた。内容はともかく、結果が一つでたことを喜びたい」とホッとした表情で一局を振り返った。一方、優勢の場面がありつつも勝利を逃す結果となった古森五段は「藤井竜王・名人ということを意識して手が止まってしまうところがあった」と悔しそうな表情を浮かべていた。
◆ABEMA地域対抗戦 inspired by 羽生善治 全国を8ブロックに分けた「地域チーム」によって競う団体戦。試合には監督とチームから選ばれた出場登録棋士の4人の計5人が参加可能。試合は5本先取の九番勝負で行われ、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールール。試合は1試合以上出場する「先発棋士」と、チームが3敗してから途中交代できる「控え棋士」に分かれ、勝った棋士は次局にも出場する。先発棋士は1人目から順に3人目まで出場し、また1人目に戻る。途中交代し試合を離れた棋士の再出場は不可。大会は2つの予選リーグに4チームずつ分かれ、変則トーナメントで2勝すると本戦進出。ベスト4となる本戦は通常のトーナメント戦。
(ABEMA/将棋チャンネルより)