世の中を変えるような政策提案をしたいけれど、資金や手段がない。そんな課題を解決するため新しい基金の仕組みが生まれた。
日本には約5万のNPO団体がある(内閣府2023年12月末現在)。
一方、内閣府が出した統計によると、このうち約4割の団体が資金不足に悩まされているという。そうした悩みを、寄付金によるファンドで支援する仕組みを作った会社がある。政治・行政を皆で考える新しいプラットフォーム作りを行っている「PoliPoli」だ。
「政策提言のための寄付基金という形になっている。NPO団体や企業が政策提言をしたいという場合に、僕らがいろいろなところからお金を集めてきて、寄付させていただくという形の基金」(PoliPoli・伊藤和真CEO、以下同)
NPOは地域や社会の様々な問題に最前線で接し、解決に向けて取り組んでいる。ところが、資金や人材、情報などが不足することで、その知識や経験が社会を変える力になっていないことがあるという。
「NPOは、社会課題の解決に向き合ったり公益性が高い事業をやっていることが多いのでいろいろな知見を持っている。素晴らしい思いを持って活動するNPOも多く、こういった方々は政策提言をしやすい立場にある。
一方で、どうやって政策提言をしていいかわからなかったり、提言書の書き方がわからないという課題もある。ノウハウもお金もなく、来年度・再来年度に投資する資金もない。そこをポリシー(政策)ファンドとして解決する」
「国の仕組みを変えて社会をよくしたい!」。NPO団体がそう考えたときに、政治家や行政に働きかけるのが一般的だ。しかし、接点が無かったり、政策提言をするノウハウを持っていないことも多々ある。さらに、調査や研究をするための資金が不足することも。
そうした問題を解決するため、PoliPoliiは独自の政策提言のノウハウや政治家とのつながりを活かし、さらに、基金によって調査費用もまかなうという。これによって政策の提言がしっかり行えるようになるという。
しかし、この仕組みで寄付は集まるものなのだろうか。伊藤CEOは次のように話す。
「寄付する側にも『寄付したいけど出し先がない』『どう寄付していいかわからない。寄付したときのインパクトが見えない』という課題があった。僕らが寄付を集めるときには『この施策はインパクトがある。この寄付から良い政策が生まれたり、施策の実績もあるのでPoliPoliとして責任をもって伴走する』という、ある程度安心感をもって寄付してもらっている。
また、現場の支援も大事だが、むしろ現場で得た実績や研究結果をもっと上流の政策の形で結びつけることで、根本的な社会課題を解決するというインパクトが出せる。寄付者は、ビジネスリーダーや経営者が多いので、インパクトがあったり明確に結果にコミットするものに対してある程度(寄付を)出しやすいのでは」
こうした仕組みが発展すれば、ビジネスリーダーらも政治に任せるだけでなく、自らが支持する政策に寄付をして、将来的には社会を変える支援をすることもできるという。
「日本人には“お上頼り”になってしまうところがある。人口減少して時代が複雑化、多様化していくなかで、政府や自治体がすべての課題を把握・対応するのは難しい。NPOが社会課題に向き合うこと(が大事)。この活動を日本で盛り上げて、政府だけがすべての課題を解決する時代から、いろんなステークスホルダーが社会課題に向き合って社会を良くしていく、こういう社会を作っていきたい」
また、基金については「政策のプラットフォームなのであまり自分たちの意見を持たないこと」と「寄付者がテーマや寄付先を決められること」を大切にしているという。
この新しい基金について、ダイヤモンド・オンライン編集委員の神庭亮介氏は「一口に世の中を良くすると言っても、社会保障や外交・安保のような国家レベルの大きな問題もあれば、もっと身近で小さな問題、中ぐらいの問題もある。身近な問題に対処し、社会のバグを改善していくために、NPOが果たすべき役割は大きい」と指摘。
「アメリカだと政治家に働きかけるロビイストが大勢いて、政策立案を助けるシンクタンクも充実している。しかし、日本では具体的に小さな問題を変えていこうというときに、担い手になれるような団体があまりなかったりする。だからこそ、こういったプラットフォームが出てくるのは非常に意義がある」と話す。
一方で、課題についてはこう述べた。
「NPOもピンキリ。すごく良い活動をして社会貢献しているNPOもあれば、お金に関してズサンなところもあったりする。そういう団体を選ばないように、きちんとNPOの選定をしていくことが重要だ」
(『ABEMAヒルズ』より)
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