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【映像】午後が全て「探究学習」になる大胆な時間割
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 東京・渋谷区では4月からすべての区立小・中学校で「探究学習」の時間を大幅に増やす取り組みがスタートする。

【映像】午後が全て「探究学習」になる大胆な時間割

 過去に例を見ない思い切った改変に期待がかかる一方で、現場の教員からは懸念の声も上がっている。

 区の探究学習大幅増の方針について、教育委員会・教育指導課の安部忍課長は「『探究 シブヤ未来科』は各教科で学んだ知識を総合的に生かして、問題解決力や創造力を育む取り組みだ。学校内にとどまらず、地域や企業・専門家の協力を得ながら、渋谷の街全体を学びのフィールドとして子ども主体の学びを実現していく」と説明した。

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 子どもたちが自ら課題を設定し、解決に向けて行動を起こしながら学びを進めていく「探究学習」。4月から東京・渋谷区の区立小・中学全26校で月曜日から金曜日までの午後の授業時間を「探究学習」に充てるという大胆なカリキュラムを実施する。

 制度としては、一定の条件内ならば学校の裁量で授業時間の配分を変えられる「授業時数特例校制度」を活用。国語や算数などの授業時間を最大で1割減らし、年間で70コマだった「総合的な学習の時間」を2倍以上の155コマに増やす。「道徳」や「特別活動」などを「総合的な学習の時間」と合わせて「探究 シブヤ未来科」に充てる。

 渋谷区教育委員会は「各教科の授業時間は減っても学ぶ内容は減らない」としているがSNSでは「学力が落ちそう、受験は大丈夫なの?」「新しい試みだけど、国語や算数の時間を削ってまでやること?」など学力への影響に不安視する声も。

 こうした懸念に対し教育委員会は「教師から教わる受け身の授業から、自ら問いを持ち学びとっていく授業へ変わっていくため、これまでよりも子どもたちの習熟が進むと考えている。また各教科の見方・考え方を探究活動の中で活用したり発展させていくため、各教科の力も伸びる」と「探究学習」の成果が学力にも反映されると期待する。

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 渋谷区の現状をよく知る教員は「公立は生徒の能力にばらつきがある。探究学習で『2割の子はわかるが残り8割の子にとっては意味がわからないという授業もあった』という話も聞いたことがある」「『詰め込みはやめましょう』と言っておきながら教科の授業時間を減らすのはアクセルとブレーキを同時に踏んでいるようなものだ」という懸念の声もあがっている。

 教育科学が専門で「探究学習」の課題についても詳しい国士舘大学の清水優菜講師は「探究の時間を増やしたからといって必ずしも教科の学習がおろそかになるわけではない。教科の学習を現実の場面で使うことによって、教科で学んだ知識・見方・考え方をより高めていける。155コマというのは非常に先進的かつチャレンジングだと指摘できる」と述べている。

 一方、海外では探究学習が学業成績や学習意欲に良い影響を与えたという結果も出ているが、日本ではまだ十分にエビデンスが蓄積されていないため、今後の検証は必要だという。
その際は、「検証の軸」をどこに設定するかが重要であると指摘する。

 「国語・算数といったペーパーテストで測る基礎学力のような差し迫った未来に対する教育目標なのか。あるいは、大学卒業、さらには将来的な給与といった将来的な教育のアウトカムを見つめるのか。探求学習の効果を測るうえで非常に重要な観点になってくる」

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 JX通信社代表取締役の米重克洋氏は「探求学習の理念は非常によく分かる」と賛同する。

 「私自身、子ども時代は学校の勉強に何の意味があるのかまるでわかっていなかった。だが大人になって仕事をする中で例えば数学的な考え方などが役に立つ場面は非常に多い。そのため、各教科で学んだことを活用・発展させる取り組みは『勉強は将来役に立つ』という確信にも繋がるため、有益だろう」

 だが一方で「自分たちで問いを立ててサクサク進められる子と右往左往する子の間で格差が生じる可能性もある」と懸念点を指摘した。

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 その上で米重氏は「1〜2年でやめてしまっては意味がなく、政策を継続し、何十年にもわたって『希望する職種に就けたか』『暮らしは豊かになったか』などについて検証する必要がある」と指摘した。

 さらに米重氏は「制度が検証され、成果につながり全国に広がっていくことが理想だが、先方へのアポ取りや調整がただでさえ忙しい教員の負担に繋がる恐れがある。現実と理想とのギャップをいかに埋めるのか注目したい」と述べた。
(『ABEMAヒルズ』より)

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