X(旧Twitter)にそっくりなSNS、「Bluesky」が一般公開され、Xのトレンドを賑わせ話題になっている。従来のSNSが抱える問題を解決する存在になるのだろうか。Xとの違いや今後について、ITジャーナリストの三上洋氏に話を聞いた。
「Bluesky登録した」「昔のTwitter感あってめっちゃ良い」(Xへの投稿)
Blueskyは短文投稿型のSNSで、他のユーザーの投稿が画面上に並ぶ様子はXにそっくりだ。それもそのはず、かつてTwitterのCEOを務めたジャック・ドーシー氏が立ち上げに関わっている。青い蝶のロゴも、かつての青い鳥を思い起こさせる。
これまでは招待制だったが、2月6日から誰でも登録できるようになり、Xユーザーからの注目を集めている。
「まず、Blueskyは“分散型SNS”だ。これは1つの会社の1つのサーバーを中央に置くX(旧Twitter)のようなやり方ではなく、色々な人たちがサーバーを立ち上げて、もしくは色々な人たちが中継する形でやれるというもの」(三上氏、以下同)
ユーザーの個人情報を基にした広告モデルが主流だった従来のSNSでは、データ管理への不安や急な仕様の変更などが問題になっていた。分散型のSNSを使うBlueskyでは、ユーザーデータを独立したサーバーに保存し自分で管理することが可能で、現状、ユーザーによる収益化機能はない。
表示されるフィードのテーマを自分の好みに合わせて選ぶこともできる。さらに、中央サーバーの障害によってサービスが停止するなどの可能性も低いとされている。
「Xの問題点はここ1年半ほどで大きく噴出した。当初、イーロン・マスクの独善的なやり方によってサービスが右往左往した点。収益化後は、いわゆる“インプレゾンビ”、金目的でAI自動投稿が行われるようなものが散見されるようになった点。また、誹謗中傷による、心が痛むような事件もいくつか起きている状況だ。ただ、これらの状況は現在のBlueskyではあまり起きていない」
見た目はXにそっくりなBlueskyだが、現状はダイレクトメッセージや動画投稿などはできず、機能や見た目のにぎやかさといった点は少し物足りない状況にある。
「Xの機能を全て踏襲するということはできないと思う。というのは、Xはあくまでも収益化を目指した広告をベースとしたサービス。それに対してBlueskyは、どちらかというとSNSの自由、私たちの言論を守るというような形で作られている、ユーザー主体の通信方式。そのため、収益化やニュース・トピック・トレンド、そういったものは企業体としてやるわけではないのでサービスされにくいと思う」
一般公開前は300万人程度だったユーザーが、現時点で400万人を突破している。この勢いでBlueskyがXに取って代わる未来はあるのだろうか。
「SNSは、実は人の多さが全てだと言って構わない。人がたくさんいるからみんなが来る、みんなが来るから投稿が増えてさらに人気が出るという構造になっている。Xには問題点や、機能の欠けている部分がたくさんあるが、まだまだXが強く、他のSNSはまだまだ太刀打ちできないというのが現状」
「多くの著名人がBlueskyに移動すれば一般ユーザーも移動する。Xに今後ユーザー移動が起きるかどうかは、影響力のあるネットの有名人やタレントなどがBlueskyをやるかどうかにかかってくると思う。(三上さんは移動する?)しま…せん!とりあえず私も、結局は『人が多いところにいたい』というだけなので」
JX通信社代表取締役の米重克洋氏は、「Xを使い続けることに不安を感じている層がBlueskyに流れているようだが、現状の規模では『ネットワーク効果』、ユーザーが増えれば増えるほどサービスとしてより便利になり、情報が増え、楽しくなるという効果が働かず、厳しい」と解説。
さらに、Blueskyが「広告モデル」ではないという点について米重氏は「SNSにおける広告モデルは民主主義と同じく『良くはないが一番ましなもの』だ。広告モデルの特性はユーザーが無料で利用できるにもかかわらず、企業が儲けるためにしっかり開発や改善をしてくれる点にある。これに代わるビジネスモデルとしてXは認証バッジなどを設定したが大きな収益源になっていない。Blueskyは何もビジネスモデルを発明していないため、まだXに対抗できるレベルではないだろう」と述べた。
問題が噴出している「Xの一強」という状況は改善できるのだろうか?
「方法は2つある。一つはXに代わるBlueskyのようなオルタナティブと言われる代替サービスが生み出され、人がそちらに移動すること。もう一つは、国や行政がプラットフォームに誹謗中傷、フェイクなどに対してしっかり対策を取らせる、強制力を持つような法整備や監視体制を作る方法だ。災害のデマやフェイクは人の命に直結する。実害が出てから対策するのは遅い。プラットフォームより強い力を持った国家権力が、言論の自由や民主主義と折り合いをつけながら手を打っていくことが必要な段階にきている」
(『ABEMAヒルズ』より)
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