「本日私は平成生まれとして初めてこの本会議場の質疑に立っている。これからたくさんの平成生まれがこの場に立つだろう。だからこそ、昭和の悪しき風習をここで止めたい。国民は増税、自民は脱税、必死に働いても実質賃金は上がらず、暮らしも苦しい状況なのに、防衛増税、子育て支援金、扶養控除の縮小と負担増税ばかりを強いられることに、国民とりわけ将来を担う若者たちは怒っている」
自民党の政治資金問題などについて、厳しくもフレッシュな口調で指摘したのは、平成生まれの国会議員、立憲民主党の馬場雄基衆議院議員だ。
政治とカネに厳しい視線が向けられる中、自民党は13日、発端となった派閥の政治資金パーティーをめぐる全議員を対象にしたアンケート結果を公表した。
収支報告書への不記載などがあった現職議員は85人。その額は5年間で5億7949万円に上る。金額は明らかになったものの、アンケートは不記載が「あったか」「なかった」とその金額を問う2問のみであり、使途を問うものはなかった。
自民党による所属議員のアンケートというと2022年、自民党は高額献金などが問題視された旧統一教会と所属議員の接点を調査。具体的な接点の内容8項目について調べ、179人の議員が「接点がある」と回答していることがわかった。
このとき岸田総理は、調査の結果を重く受け止め、信頼回復に向けて努力をしていきたいと決意していた。しかし、宗教行政を所管する文部科学省のトップに就任した盛山大臣が2021年の衆議院選挙で旧統一教会の友好団体から推薦状を受け取っていたという疑惑が浮上。
選挙支援を受けていたと指摘されている盛山大臣は22年の調査において「関連団体の会合へ出席し挨拶」とのみ申告し、「選挙支援」などの項目では申告していなかった。
2月7日、旧統一教会の友好団体と共に写った写真を提示された盛山大臣は「こういう推薦状を受け取ったのではないかと思うが、一方、推薦確認書については署名したかどうか記憶にない」と説明している。
党内での調査が本当に再発防止につながるのか疑問視する声が上がる中、連立与党を組む公明党の山口代表は“裏金”問題をめぐる自民党の対応について「今回の問題を引き起こした自民党がどう自浄能力を示すかが問われている」と厳しく非難している。
■「次の選挙に向けプレッシャーがないと動かない」
派閥の政治資金パーティーをめぐるアンケートについて政治学者の佐藤信氏は「政治資金の使途調査について第三者の活用を求める声が上がるのは当然だが、現状の法制度では罪に問われるわけではないので、自民党としてはさらに調査をするようなインセンティブがあまりない。『次の選挙で本当に自民党が下野するかもしれない。議席を大きく減らすかもしれない』という圧力が世間からかからない限りは、自民党はなかなか動かないだろう」と述べた。
さらに野党については、「現在のように国民から『自民はひどいが、だからといって野党に任せるわけにもいかない』などと思われていては自民党へのプレッシャーは弱い。また、注意深く見てもらうとわかるが、野党のリーダーたちも『岸田総理を辞めろ』とは言わない。なぜなら今の悪い印象がついている政権のまま選挙を迎えたいという思いあるからだ。そのため小出しに責め続けたいという状態だ」と指摘した。
自民党内については、は「参院選も衆院選もまだ先に延ばせる状況にある。今急いで岸田総理を代えても政治と金の問題はすぐには消えず、自民党で問題を起こした人たちが辞めた枠をめぐる4月の補選でも、まだ候補者を決められておらず苦戦が予想される。そのため、自民党側としても岸田総理には続投してもらい、最後に首をすげ替えて戦略的に秋の選挙に突入するという“合理的な選択”をとると予想される」と説明した。
■官房機密費と政治資金問題は全くの別物
松野官房長官が去年の12月に更迭される直前、4660万円の官房機密費を支出していたことで野党から追及される事態となっている。
この件について佐藤氏は「この官房機密費は今問題になっている政治資金とは全く異なる。官房機密費はその名の通り、政府の中枢がかつてで言うと野党の対策や、外国との対策など、表にならない形で使うためのお金だ。官邸の中に現金が入った金庫があるといわれていて、現金を引き出す時にタッチするのは官房長官と事務の担当者だけ。領収書も必要なく、どこに使われたか全くわからないお金になっている。どう使ったか分からないのが最大の問題で、我々が納めた税金もしくは国債などから出ているお金がどこに使われたか分からない形で消えていく。これをしっかり使途を明確化するという議論は以前からあり、やるべきだが実現していない。そして官房機密費は、政府が活動にあたってどうお金を出していくかという問題だ。対して、政治資金規正の問題は、選挙で競うときに皆がクリーンな形で競争することがポイントになっている。派閥のパーティーが典型だが、国民の税金ではなく、パーティー券を買う、事実上の寄付として支援者が出したお金をどう使うかの問題。どちらもお金が絡み、使途をしっかりと記録することが大切なのは同じだが、性格としては別の問題だ」と違いを説明した。
■「政策協定を結ぶ重み」とは
さらに旧統一教会との関係をめぐる問題も再び大きくなっている。盛山文部科学大臣は、2021年の衆院選において、旧統一教会の友好団体から推薦状を受領し、事実の「政策協定」に署名した疑いがあるが、「覚えていない」などとあいまいな答弁を繰り返している。
この点について佐藤氏は「推薦状はともかく、『政策協定』は極めて重要だ。例えば、脱原発を掲げている議員の中には電力関係の労働組合から支援を受けている議員がいるが、彼らは脱原発を声高に言えない状況に置かれている。つまり、政策協定を結ぶことは議員活動が明確に拘束されることを意味する。そんな制作協定に軽々しくサインをした、あるいは覚えてないというのはあり得ない。万が一覚えてないようなことがあるとすれば、大臣としての資質を疑われることになる」と疑問を呈した。
盛山文部科学大臣の「更迭」はあるのか?
佐藤氏は「もちろん更迭するべきだと思う。やはり旧統一教会の問題は国民からの信用を失うことになる。『大臣として、議員としての資質が十分なのか』という疑問があがるのは当然であり、早い決断が重要だろう」と指摘した。
■今の岸田政権だからこそ、期待できること
今後の岸田政権について佐藤氏は、「『レームダック』=死に体の政権がしばらく続くが、だからこそ、できることがある。目の前の選挙に自分が勝たなきゃいけない状況であれば、なかなか不人気な政策を出せない。安全保障問題や財政健全化、典型的にはクリーンな政治の仕組みを作っていくことなど、今こそ長いスパンで影響力を持てるような大きな政策を打ち出す機会にもなりえる。そのあたりに力を入れて有終の美を飾ってほしい」と提言した。
(『ABEMAヒルズ』より)
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