「自己資本金がほとんどかからずに不動産が手に入る」などと言葉巧みに、リスクの高い不動産投資に勧誘する悪質なセールス。経済アナリストの森永康平氏が、その実態を直撃取材した。
【映像】「汗が出てきちゃいました…」悪徳業者が白旗を上げた瞬間
「今日はまだ詐欺とは決まっていないものの、悪質な物件を売っている噂がある不動産営業を紹介してもらった」
体当たり取材を行ったと話すサングラスと帽子で変装した経済アナリストの森永康平氏。不動産会社の営業とその上司という男性2人組と話したそうだ。
営業:実際に物件見られたりしました?
森永:メールでいただいた資料には軽く目を通しました。この金額って適正価格だったりするんですか?
営業:そうですね。私の見ている感じですと、お買い得ではあるかなと思います。まだたったの5年しか経っていない、これでこの金額ならそうは出てこないですね。
饒舌に投資物件を紹介する営業の男性。ここで森永氏が切り込む。
森永:ネットでレインズ(REINS)というサービスがあるじゃないですか。あれで調べたら平米70万円だったので、坪単価は230万円だと思うんですけど、今回の金額を坪単価で見たら320万円。高くないですか?
営業:そうなるんですかね…。どうなんですかね…?
上司:こちらに関しまして、私どもはしっかりとしたアフターフォローをいたしますので、若干お高くなっているかとは思いますが、気になるほどではないのかなと思っております。
明らかに動揺する営業の男性。すかさず上司の男性がアフターフォローのサービスで高くなっていると説明する連係プレーをみせた。しかし、森永氏はさらに攻め立てる。
森永:(この物件の)ローン控除後の利回りって2.1%じゃないですか。今、REIT(リート)を買うと分配利回り3.5~5%なんですよ。そう考えたら、この投資物件買うよりもREITを買った方が利回り高くないですか?
上司:利回りだけを見るとおっしゃられている事はあると思います。ただ、冒頭で申し上げたように、私どもが最初から最後まで面倒を見させていただくということと…。
森永氏の質問ラッシュに押され気味の不動産業者。さらに質問を重ねると…。
森永:シミュレーションした結果、今回の賃料が8万8500円でローンなどもろもろの費用を入れると、価格がマイナス25円となっている。毎月赤字なのに投資物件になるんですか?
営業:毎月若干の赤字ではあるんですけれども、たかがこの金額じゃないですか?これを25年、35年続ければ、なんと35年後には丸々この物件が残るわけです!
森永:ということは実質、年間数千円払うだけで35年後にローンを完済した物件が手元に残る?
営業:そうですね!ここを別荘に使われるも良し、またさらに投資されるも良し。そこから先はもう「夢のような世界」が待っている、そんな物件ですね。
得意の流れになったのか、再び饒舌になる営業の男性。しかし、森永氏の質問は続く。
森永:今回頂いた賃料と築年数の2つのデータをいろいろなデータを引っ張ってきて、『回帰分析』したんですけど、10年間で賃料が8%下がるぐらいのシミュレーションになったんですけど、賃料据え置きでシミュレーションしているの甘くないですか?
営業:賃料は下がらないですよね…?
上司:基本的に法人様との長期契約になっておりますので。
森永:毎年普通の賃貸みたいに家賃が更新されるわけでもない?
上司:そのようになっております…。汗が出てきちゃいました。
営業:不勉強で申し訳ないです…。
歯切れが悪くなる2人だが、必死の勧誘は続いた。
上司:こちらの物件はどちらかというと保険をイメージしていただけると。
森永:保険なんですか?
上司:こちらの物件はローンを組んで月々25円で2500万円の資産が残るという…
森永:いま月々25円とかで保険組むようなものという話だったじゃないですか。今回みたいに頭金がほぼかからないローンを組むって話だと思うんですけど。
上司:頭金が0円というわけではございません。ただ、頭金分を(こちらの方で支払わせていただき、成約の)サービスにさせていただくという…。
森永:でも、それ御社側が僕に頭金としてお金を渡した場合って、僕にとって雑所得とかにならないんですか?
営業:ど…どうなんですか…?
上司:厳密にはなると思うんですが、そこはお互いの…
森永:大人の『暗黙の了解』みたいなもので成り立ってますけど、仮にこれを買った場合、後々そこをつっこまれたりしないですか?
上司:それは、あの…。
直撃を終えた森永氏は、不動産業者の印象について「詐欺だとは思わないが、違法っぽい話はいっぱいあって“限りなく黒に近いグレー”だった。違法臭いところは指摘したので次回改善されていることを祈る」と語った。
今回の潜入取材について森永氏は、出演した『ABEMAヒルズ』で悪徳業者を見抜くポイントについて「一番いいシナリオしか提示してこない」として考えを述べる。
「今回の話は今の家賃が35年後まで続き、ずっと空室にならない状態のシミュレートだった。『そんなにうまくいかないでしょ』というツッコめる知識があるといい。また、データを見ると不動産価格はたしかに右肩上がりだが、価格が上がっている物件と下がっている物件に二極化しているような状況にある。“勝ち組物件”はほっといても売れるが、営業マンが勧めてくる物件は“営業マンを使わなければ売れない物件”だ。そんなにおいしい話はないというのは常に頭に入れておいてほしい」
また、森永氏は「REIT(不動産投信)」について、解説した。
「馴染みのある投資信託といえば『株』だが、REITは不動産だけに特化した投資信託だ。マンションや商業施設に投資をして、そこで得た賃料や利益を投資家に分配金として配当していくものだ。税引き後の利益の90%超を配当に回すと法人税がかからなくなるルールがあるので、通常の株よりも利回りが高くなる傾向がある。新NISAの成長枠投資でREITを買ってその配当を頼りに投資をするという方も2024年に入ってから増えていると思う」
また、森永氏は「不動産投資をやってみたいが、まとまった資金がないという方にも『REIT』という選択肢があることは知っておいてもらいたい。実物の不動産を買うと現金が必要な時になっても売ることができないものの、REITの場合は株と同様なので株価がマッチしていればすぐに売ることができる。流動性という意味でのリスクはREITのほうが低いだろう」と話した。
※投資には元本割れのリスクもある。余剰資金で行うなどリスクをしっかり把握し、自己責任で行ってほしい。
(『ABEMAヒルズ』より)
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