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【映像】「女子が入りやすい雰囲気になる」高校生らの賛否
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 理工学系の学部を中心に、大学入試で女子学生だけが受験できる「女子枠」を設ける大学が急増している。

【映像】「女子が入りやすい雰囲気になる」「特別扱いされている感じがして嫌」…高校生らの賛否

 今年4月の入学者向け入試で、国公立大学では東京工業大学や金沢大学など、10大学が「女子枠」を新設。導入した大学は合わせて15大学となった。河合塾 教育研究開発本部 主席研究員の近藤治氏は、国の政策と少子化の影響を指摘する。

 「特に日本の場合は、理工系に占める女子の割合が非常に先進国、諸外国に比べて少ないと言われている。現在は国が施策として『理工系の女子をどんどん増やしていきましょう』というキャンペーンを張っている。受験生の視野の広がりとともに、、日本全体で少子化が進行し、大学の志願者・受験者も減少傾向にあるため、これまでは理系、特に工学部は男子生徒を主なターゲットとしていた大学側としても、女子にもぜひ受験してもらい、新しい市場を開拓したいという狙いがある(河合塾・近藤氏)

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 内閣府の男女共同参画局は「男性も女性もあらゆる分野で活躍できる社会」を目標に掲げ、2005年から、理工系分野の進路情報の提供やイベント開催などの支援策「リコチャレ(理工チャレンジ)」を実施してきた。しかし、経済協力開発機構(OECD)の調査によると、加盟38カ国の中で2021年に理工系分野の大学などを卒業・修了した女性の割合が一番低いのは日本だった。OECD加盟国平均は自然科学・数学統計学が54%、工学・製造・建築系が28%に対し、日本はそれぞれ27%、16%と大きな差がある。

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 そのような中で設置の動きが加速する「女子枠」だが、現状、国公立大15大学の「女子枠」はすべて、「学校推薦」もしくは論文や面接で選考する「総合型選抜」だ。

「一般選抜は公平性・公正性が非常に重要視されるので、女子枠を設けると男子学生から不満が出る。どちらかというと、年内入試と呼ばれる学校推薦や総合型選抜で女子だけの受験枠を設ける大学が増えている」(河合塾・近藤氏)

 受験する生徒らは「女子枠」の設置をどう考えているのだろうか。河合塾では去年、大学入学共通テスト問題に取り組むオンラインイベントを開催。参加した高校1年、2年生にアンケートを実施し、工学部の「女子枠」設置について質問した。

 賛成派の意見には、「女子の人数が増えれば孤立せず安心感がある」「女性が工学に興味を持つきっかけになる」、反対派の意見には、「実力で判断されるべきなのに不公平」「特別扱いされている感じがして嫌」などがあった。

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 「女子枠」の設置に賛成の生徒は約65%、反対は35%。割合は賛成のほうが多いものの、その理由を回答した人の数は反対派(284人)が賛成派(138人)の倍以上。問題意識の高さが感じられる。反対理由の7割は「不公平や差別になる」というものだった。

 『なぜ理系に女性が少ないのか」(幻冬舎新書)の著書があり、科学技術社会論などが専門の東京大学・カブリ数物連携宇宙研究機構の横山広美教授は「日本の女子の数学の能力を信じるべき」と提言する。

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「推薦枠などでは通常試験よりも数学や理科の負担が軽くなり、あたかも大学が女子生徒の能力を信じていないような、『ちょっと点数下げるから入ってきて』と言っているように見えるのが、非常に問題だと思う。日本の女子の数学能力は世界的に見ると非常に高いので、大人たちはそれを信じて『数学は皆、頑張ってやればできるよ』と言うことが大事だ」(東京大学・横山教授)

 実際に、「女子枠」の面接試験などでは高い目的意識が求められ、受験を検討する女子生徒にも強い意欲がみられるという。

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「先輩たちが活躍している姿がまだそれほど多くない。ただ、これまで全然女子が進出していなかったから、むしろ『自分がパイオニア的存在になりたい』とか。建築系や土木系であれば自分の考えを反映した家を建てたい、ビルを建てたいまちづくりをしたいなど、女性ならではの視点を持ったというのは『私ならできるはずだ』という非常にバイタリティに溢れた女子が、比較的理系を志望しているように感じる」(河合塾・近藤氏)

 「女子枠」を前向きに捉え挑戦しようとする女子生徒のために、横山教授は入学後のフォローの大切さを指摘している。

「ただ女子に『入ってきなさい、いいですよ』と言って、大学側がその後の努力をしないようではそれは難しく、居やすい・学びやすい環境を整えることがとても大事だ。数学や物理などの理系科目を、もし少し軽めで入ってくるようであれば、そこに対する補習などもすでに対応しているところもあるようだが、そうした勉強面でのサポートも場合によっては必要になってくるかもしれない」(東京大学・横山教授、以下同)

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 理系で学んできた先輩である横山教授が、高校生らに伝えたいこととは…

「私は中学生のときに宇宙がどのように始まったのか、とても興味を持って理系、特に物理学を最初に志した。そのまま科学者になりたいと思ったわけではなく、科学を伝えたり科学と社会の間のことを考える仕事をしたいと思った。そして物理学で博士号を取ったが、今は人文社会科学の研究者、要するに文系の研究者として仕事している。理系から色々な分野に進出することは非常に道が開けているので、これから進路を考えるときに、ぜひ理系を1つの選択肢として考えてほしい」

(『ABEMAヒルズ』より)

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