どんな戦型も迎え撃つ。あまりの研究量に、タイトル経験者のトップ棋士も舌を巻いた。日本全国を8つのブロックに分けた団体戦で行われる「ABEMA地域対抗戦 inspired by 羽生善治」予選Bリーグ2位決定1回戦、関東B 対 関西Bが2月24日に放送された。関東Bからは、現在タイトル挑戦中の伊藤匠七段(21)が大躍進。チーム勝利に必要な5勝を一人で築き上げた。その序盤研究の深さは棋界トップクラスとも言われているが、チーム監督の渡辺明九段(39)も「何なら詳しくないわけ!?」と驚くほどだった。
伊藤七段は、チーム関東Bの0-1で迎えた第2局で登場。まずは星をタイに戻すべく古森悠太五段(28)戦に臨むと、相手の三間飛車に対し居飛車穴熊で対抗し堅陣を活かした鋭い攻撃から一気に寄せ切り勝利を飾った。続く第3局の大橋貴洸七段(31)戦では、相掛かりの力戦を制し連勝。さらに第4局の大石直嗣七段(34)戦では相手の変化球でもあるダイレクト向かい飛車にもしっかり対応。粘りを振り切り、あっという間に3連勝を飾った。
圧巻の勝ちっぷりに、チームメイトの信頼も厚い。監督の渡辺九段をはじめ、メンバーは新鋭の躍進を作戦会議室から見守っていた。勢い衰えぬまま向かった第5局は、再戦となった古森五段が三間飛車から銀を中央に上がる▲5七銀型を採用。前局とは違った出だしに、控室の渡辺九段は「こういうのも詳しいの?伊藤くんは」と永瀬拓矢九段(31)に問いかけた。伊藤七段は頻繁に研究会やVSを行う仲の永瀬九段は「こういうのも詳しいですよ!」ときっぱり。この回答には渡辺九段も「何なら詳しくないわけ!?」とタジタジにならざるを得ない様子だった。
さらに「詳しくない作戦は何?」と問いかけると、永瀬九段は視線を上部に泳がせて「………」と無言状態に。渡辺九段は「出てこない(笑)」と苦笑いを浮かべていた。この様子に、ファンも興味深々。「ありませんw」「なんでもつよい」「フリーズw」「ないw」「無言で草」「ないんかいw」「シーン」「たしかに」などの声が寄せられていた。
注目の第5局は、古森五段の美濃囲いから玉形の差を活かした寄せに押し切られる形で伊藤七段が敗戦。それでも、3度目の対戦となった第8局ではリベンジを果たし、6戦5勝の圧倒的な成績を飾った伊藤七段の大活躍でチーム関東Bが見事勝利を飾った。
◆ABEMA地域対抗戦 inspired by 羽生善治 全国を8ブロックに分けた「地域チーム」によって競う団体戦。試合には監督とチームから選ばれた出場登録棋士の4人の計5人が参加可能。試合は5本先取の九番勝負で行われ、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールール。試合は1試合以上出場する「先発棋士」と、チームが3敗してから途中交代できる「控え棋士」に分かれ、勝った棋士は次局にも出場する。先発棋士は1人目から順に3人目まで出場し、また1人目に戻る。途中交代し試合を離れた棋士の再出場は不可。大会は2つの予選リーグに4チームずつ分かれ、変則トーナメントで2勝すると本戦進出。ベスト4となる本戦は通常のトーナメント戦。
(ABEMA/将棋チャンネルより)