人は余命を知った時、その後の人生にどう影響するのか。若者世代に聞いてみると「ゴールが分からなければいろんなことにチャレンジできる」「やりたいことができたとき、もう自分は死ぬからと諦めることになってしまうと思うと、知りたくない」との声があがる。
一方で、SNS上ではミドル世代から「後悔せず動くために、細かい日まではっきり知りたい」などの声も。余命を知ることは人をポジティブに変えるのか、それとも絶望をもたらすのか。『ABEMA Prime』では宣告を受けた当事者に聞いた。
■“余命3カ月”からジム開業「人生に後悔は残したくない」
都内にあるパーソナルジム「A-studio Cliff」の開業者で、現役の格闘家でもある高須将大氏(30)。腹部に残る大きな傷跡は、2017年に肝臓がんが発覚し手術した時のものだ。さらにその2カ月後にがんが再発し、肺にまで転移。複数のがんが存在する深刻な状態で、この当時の余命は3カ月だったという。「自分の命はもうそんなに長くないのかなというのは、ステージ4と聞かされて思った。5年生存率はすごく低い確率だったのを覚えている」と話す。
自分の命が終わるかもしれないと感じた高須氏。しかし、そこから生き方が変わったという。「病気になる前は、本当にただ何となく格闘技をやっていたが、病気になったことによって、自分の人生に後悔は残したくないという気持ちになった。闘病中の練習は時間が限られていて、入院などもある。少ない時間でどれだけ濃い練習をするかと、取り組み方もだいぶ変わった」。
治療をしながら格闘技の試合にも出場。さらに、安定した収入のサラリーマンを辞め、2022年に夢だったジムを開業した。「安定を捨ててパーソナルジムを開くなんて、ちょっと無理かなとは思っていた。今まではちょっとディフェンシブな性格だったが、病気になったことによって、積極的というか前向きに行動できるようになった」と語った。
現在は治療を終え、経過観察中。余命を知るということをポジティブに捉え、人生を歩んでいる。
■余命宣告を受けて「前を向こうという気持ちになれた」
YouTubeでがんにまつわる配信をしているニーナヒデヒコ氏は2014年、39歳のときにステージ3の大腸がんが発覚。2016年10月に膵臓・小腸・十二指腸に広がり(ステージ4)、12月には肝臓に転移。2017年5月、腹膜播種で「余命6カ月」と宣告された。7月に小脳に転移、2019年には下行結腸がんと、これまでに7つのがんが判明。手術や免疫療法などを経て、今は定期検査と、約1カ月おきに薬を投与している。
余命宣告をされた心境について「大きなショックを受けたり、動揺することは思ったよりもなく、比較的冷静だった」とし、「がんが転移していく中で心の準備ができていたので、“やっぱりそうだよな”と受け止めることができた」と振り返る。
医師にはあらかじめ伝えてほしいとお願いしていたという。「自分の現在地を把握したかった。あとは先生との信頼関係だ。実は家族には違うことを伝えているといった疑いを持ちたくなかった」。家族には自分から説明したそうで、「裏では別のことがあったのかもしれないが、覚悟はしていたと思うので、冷静に聞いてくれた」と話した。
それからニーナ氏は、時間の使い方を逆算し、長い人生計画ではなく「今」を大事にするという考え方に。また、人前で話すことが苦手だったが、自身の病気の経験について講演活動をするようになった。
この変化について「人生を80年、90年生きる漠然としたイメージだったのが、突然目の前にゴールが見えてきた。今、自分が元気に生きていること、明日目が覚めて元気に過ごせることが当たり前じゃないと感じるようになったので、大事に生きようと思った」と説明する。
さらに、「家族への遺書を書いたり、遺影を撮りに行ったり、葬式は自分の言葉で挨拶をしたいので動画も撮影した」と明かし、「最悪の結果を自分でイメージしたことによって、前を向こうという気持ちになれた。(余命を)聞けて自分にとっては大きなプラスだった」と語った。
余命宣告から7年弱。「繋いでもらった命。今までの延長線の生き方では面白くない。思い切ってできることは挑戦していき、自分の考えに固執しないように心がけたい」。
(『ABEMA Prime』より)
■Pick Up
・「ABEMA NEWSチャンネル」がアジアで評価された理由
・ネットニュース界で話題「ABEMA NEWSチャンネル」番組制作の裏側