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【映像】6年前に境界知能が判明したNさん(20代)
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 うまくできない、理解度が低い。こういった状況下の人にレッテル貼りとして最近使われている言葉が“境界知能”。知能指数、いわゆるIQでいう70以上85未満を指し、知的障害と平均域の間のグレーゾーンにあたる。

【映像】6年前に境界知能が判明したNさん(20代)

 Xには「ある政党の支持者は“IQ85以下の境界知能”」「クソリプ送ってくるヤツもほとんど境界知能」「卓上トッピングにイタズラするヤツも境界知能」という声のほか、詐欺に騙される人やミスばかりの部下に対してなど、何にでも決めつける発言が問題となっている。

 境界知能の人々はそもそも何に困っているのか、線引きをする必要はあるのか。『ABEMA Prime』では当事者、専門家を交えて考えた。

■境界知能のNさん「やっぱり生きづらい」

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 フリーターのNさん(20代)は、6年前に境界知能であることが分かった。「IQの検査をやり、平均値は大体100だが、私の場合は81だった。やっぱり能力低いんだなって多少へこんだ」と振り返る。

 カウンセリングも行い、会話や言葉を認知することが苦手であると判明した。「言葉の意味を知らなさすぎたり、コミュニケーションがうまくとれなかったり、指示通りに動けなかったり、物覚えが悪かったりしたため、周りからも『あいつなんかバカだね』みたいな扱いというか、仲良くしたくないと思われてしまった。日常生活を送る分には問題ないが、やっぱり生きづらい」。

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 Nさんの不得意なことは対人関係、コミュニケーション、先を考えて行動すること、感情のコントロール、勉強。「学生時代、人付き合いが全然うまくいかなくて、問題ばかり起こしていた。先生からも私が悪者扱いされていた」「職場や社会に出た時に周りとうまくやっていけないとか、そういったところでつまずいてしまう」と話す。

 IQを診断したきっかけは「6年前に会社をクビになって、改めて自分はどういう人間なのかを知りたくなった」こと。クビになった経緯は「就労移行の支援員をやっていたが、社会人としてあってはならないことをしてしまった。例えば感情のコントロールができなかったり、話が噛み合わなかったり、物覚えが悪かったり。上司から“社会人としてありえないです。あなたがいたら迷惑です”と言われて、1年でクビになってしまった」と明かす。

 一方で、「コミュニケーション以外の、例えば掃除や家の片付けは問題なくやっていける」ということだ。

 境界知能であることを知れて良かったか。Nさんは「私はただの発達障害ではないと思っていた。発達障害は能力が高い人もいるが、私は言葉の意味を知らなすぎたり、人よりも動作が遅かったりする。検査をして境界知能という言葉を知れて良かった」と答えた。

■境界知能の特徴

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 境界知能の特徴は「注意」「記憶」「言語理解」「知覚」「推論・判断」の5つの認知機能に現れる。勉強ができないとやる気がないと勘違いされたり、状況が読めずに対人関係で失敗してしまうことがある。

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 昭和大学・発達障害医療研究所所長の太田晴久氏は「境界知能は病名ではない」と指摘。「知的障害のカテゴリーに当てはまらないけれども、“困りごと”を抱えている人たち。コミュニケーションに限らず、作業能力など広く浅く苦手というのが特徴としてはある。気づかれにくいため、学生時代に大きな問題がなくても、仕事で複雑な作業をすることになった途端に顕在化することがある。本人も問題があると感じられず、無理して鬱状態になって、受診して初めて境界知能だと分かるのがよくあるパターンだ」と説明。

 発達障害とは別物だというが、「発達障害を疑って受診し、IQ検査をすると境界知能もあったという併存するケースはよくある」と付け加えた。

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 境界知能の検査は、10個の基本検査をすることで5つ(全検査IQ、言語理解指標、知覚推理指標、ワーキングメモリー指標、処理速度指標)の結果を算出する「知能検査(WAIS-IV)」と「心理士など専門医による問診」で行う。

 太田氏は「知的障害はIQを元に、うまくいかないこと、どのくらい社会に適応できているかということから、専門家が総合的に判断する。しかし、境界知能に診断基準はない。知的障害に当てはまらないが、IQ値がぎりぎり達しない人たちを境界知能と表現する」と述べた。

■境界知能=低学歴のレッテル貼りは危険

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 太田氏は、「境界知能」という言葉は支援が受けられず困っている人へのサポートのためにあり、低学歴のようなレッテルとして使われると抵抗感が生じ検査・支援の検討が困難になると危惧する。

「ネットを見る限り非常に侮蔑的に、他人を批判するための言葉として使われてしまっている。IQ検査をして“あなたは境界知能だ”と伝えるのは非常に気を遣うし、言われた方もショックを受ける。そういう中で、患者さんや当事者から離れた場所でワードだけが使われてしまうと、偏見に繋がって必要な検査ができなかったり、本人を傷つけてしまったりする」

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 言葉だけが一人歩きしてしまう要因として、ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「ネットの人たちは、いかに相手が気持ち悪くなるかという罵倒用語を探している。今までは知的障害者やアスペと呼んだりしていたところに、境界知能という言葉が出てきて、これ幸いと使う層が一定数いる」と指摘する。

 太田氏は「境界知能で困っている人とちゃんと接したことがないのだと思う。外来に来ている人たちは非常に苦しんで悩んで過ごしている。その人を罵倒する気持ちには通常ならないだろう。頭の中のワードと実態がずれているのが現状だと思う」とした。

(『ABEMA Prime』より)

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