年度勝率の最高記録を更新しようかという最年少棋士だが、その大胆すぎる一手に周囲の棋士たちも思わず絶叫だ。日本全国を8つのブロックに分けた団体戦で行われる「ABEMA地域対抗戦 inspired by 羽生善治」予選Aリーグ1位決定戦、関東A 対 中国・四国が3月2日に放送された。中国・四国の藤本渚四段(18)は、第5局から試合に出場。序盤から激しい仕掛けを見せたことで、敵味方問わず棋士たちが大慌てになった。
藤本四段は2022年10月に四段昇段しプロデビュー。昨年は若手棋戦の加古川青流戦で優勝すると、2023年度の公式戦は45勝7敗で、勝率.8653。中原誠十六世名人が記録した1967年度に記録した47勝8敗、勝率.8545の更新が期待されている。
第5局に登場した藤本四段は、関東B・石井健太郎六段(31)と対戦。相居飛車になると、石井六段の矢倉に対して、藤本四段は得意の雁木に構えた。10代ながら受け、粘りに定評がある藤本四段だけに、じっくり進めていくかと思われたが、後手番から動いた。お互い陣形がしっかりしており、先に動くのが難しいと思われたところ、すっと指したのは△8四歩。攻めと守りの枚数を数えても、石井六段の方が多いように見えるだけに驚きだ。
関東Bは羽生善治九段(53)、佐々木勇気八段(29)、近藤誠也七段(27)の3人が同時に「えぇ~!」と声を出すと、木村一基九段(50)は「ペラペラ!ペラペラ攻撃」と、攻めとしての薄さをコミカルに表現。また中国・四国の控室でも監督・山崎隆之八段(43)が「おー!」と叫ぶと、糸谷哲郎八段(35)「いけんの?そこ」とびっくり。再び山崎八段が「パッと見、無理よ!?」と無理筋ではと目を丸くした。
結局、この攻め筋は実ることなく、形勢はじりじりと石井六段ペースで進んだものの、終盤で互角に戻った後、藤本四段が一気に抜け出し逆転勝利。対局後は「ずっと見事とは言い難い内容。ごまかし、ごまかしできた」と苦笑いを浮かべていた。
◆ABEMA地域対抗戦 inspired by 羽生善治 全国を8ブロックに分けた「地域チーム」によって競う団体戦。試合には監督とチームから選ばれた出場登録棋士の4人の計5人が参加可能。試合は5本先取の九番勝負で行われ、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールール。試合は1試合以上出場する「先発棋士」と、チームが3敗してから途中交代できる「控え棋士」に分かれ、勝った棋士は次局にも出場する。先発棋士は1人目から順に3人目まで出場し、また1人目に戻る。途中交代し試合を離れた棋士の再出場は不可。大会は2つの予選リーグに4チームずつ分かれ、変則トーナメントで2勝すると本戦進出。ベスト4となる本戦は通常のトーナメント戦。
(ABEMA/将棋チャンネルより)