稲を食べることで知られるジャンボタニシを田んぼに撒いたとされる写真がSNSで拡散され、波紋を呼んでいる。農水省も注意喚起をする事態となるなか、ジャンボタニシと向き合う農家の実情を取材した。
「私のところにも20年ほど前かなり侵入しましたけども、気持ち悪いんです。大きくて、卵はピンクで赤いやつで、本当に1回侵入すると厄介なものになると思います」(坂本哲志農林水産大臣)
坂本農水大臣が会見で語った厄介者は、無数の色鮮やかな卵を産み、稲を食い荒らすことでおなじみとなったスクミリンゴガイ、通称「ジャンボタニシ」だ。
農水省は6日、Xで「ジャンボタニシ 放飼は止めてください!」と呼びかけた。きっかけとなったのは、ジャンボタニシを「生きる除草剤」と表現し、田んぼに撒く農家の姿を映した写真だった。2月下旬からこの投稿がSNSで拡散され、問題視する声が続出した。そのため農水省が、除草目的でジャンボタニシを撒く行為について注意喚起を行った。
YouTubeで「田舎の者mo-chan」としてコメ作りの様子を伝えるコメ農家の谷崎友一さんは、「あの行為自体は最悪だ。仮にジャンボタニシが蔓延している地域でも、ああいうふうに自分の田んぼにジャンボタニシを撒く行為、それを肯定したようなSNS投稿も含めて最悪な行為だと思う」と語る。
高知県で約20年にわたって農業を営む谷崎さんの周辺地域では、すでにジャンボタニシが繁殖している状況で、毎年ジャンボタニシ対策に追われているという。
「基本的には自分たちは駆除剤を使う。ジャンボタニシ用の駆除剤を使うことで、田植え直後のジャンボタニシの密度を下げて、稲が成長するまでジャンボタニシに稲を食べられないように管理をするというのがメインのやり方になる」(谷崎さん、以下同)
柔らかい雑草や稲の葉を好んで食べるジャンボタニシに対し、稲がある程度成長するまでの間、駆除剤のほか、手作業で取り除いたり、トラップを使ったりするなどして数を減らす努力をしているという。また、田んぼに張る水の高さを調整することで、ジャンボタニシが好む稲の部分を食べられないようにするなど、水の管理もあわせて行っている。
ジャンボタニシ対策にかかる手間と共に、農家の頭を悩ませているのが費用だ。
「駆除剤を使うとジャンボタニシの数が減るので、除草剤を使わないと田んぼには雑草が生えてくる。この両方(駆除剤と除草剤)を使わなければならず、経費が単純に倍になる」
そこで谷崎さんが取り組んだのが、ジャンボタニシの除草への活用。ジャンボタニシを撒いたとされる農家を痛烈に批判した谷崎さんだが、長年向き合ってきた現場の農家だからこその試行錯誤があった。
「田んぼの中のジャンボタニシがいる場合、めちゃくちゃ多くなると食べるものがなくなって稲を食べる。めちゃくちゃ少なくなると、今度は雑草が生える。ジャンボタニシが雑草を食べて稲を食べないライン、バランスを調整するイメージで、そこにプラスして水管理や他の管理方法をやると、まあなんとかなるかなというところ。稲が1カ月くらい成長するとジャンボタニシは稲を食べなくなってくるので、あとは安定する」
まずは駆除剤を撒いて数を減らし、その後はジャンボタニシの密度管理を綿密に行うことで、雑草を食べさせながら稲には手を付けないようにコントロールしたという。谷崎さんが撮影した動画でも、稲には登らず地面に生えた雑草を食べるジャンボタニシの様子がわかる。
ただ、非常に管理が難しいため、既にジャンボタニシが蔓延している地域でも、この方法はおすすめしないと谷崎さんは話す。長年の経験から得た知識で、やむを得ず実践した苦肉の策だったのだ。
「仮にその1枚の田んぼを“ジャンボタニシゼロにしました”となっても、次の年には同じ量が湧く。諦めではないが、これがいる前提でも農業をしなくちゃいけない状態だ。蔓延している地域では意図せず利用している部分はあるので、絶対悪で『排除しなきゃいけない』『利用するなんて言語道断』みたいに言われると、『そう言われても…』というのが実情だ。入ってないところにジャンボタニシを持っていくのは言語道断だが、自分たちみたいな蔓延地域では、ある程度共生していく必要があるのかなという感じだ」
(『ABEMAヒルズ』より)
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