薬物やギャンブルなど特定の物や行為をやめられなくなる「依存症」。いくつもの依存症に悩まされ、一時は自殺願望も抱いた女性が依存症から脱するまでの道のりを語った。
アルコール依存症の夫とその妻が病気と葛藤し、回復へ向かう姿を描いたコミックエッセイ、『だらしない夫じゃなくて依存症でした』(時事通信社)。
特定のモノや行為へのコントロールが利かなくなるこの病気に、著者の三森みささん自身も長く苦しめられ、さまざまな依存症を経験したという。
「一番最初、記憶にあるのがオンラインゲーム」
中学生の頃に依存したのは「ゲーム」。チャット機能が充実し、知らない人と交流ができる、パソコン向けのものだった。ゲーム依存のきかっけは、両親の不仲にあったという。
「親が別居したりとかで、家庭内がバタバタした時に、自分のストレスを消そうとしたというか、親が出ていこうとするその事実とかも全部消したくて…」
十代という多感な時期に家を出て行ってしまった母。心にぽっかり空いた穴を埋めるべく、三森さんはゲームにのめり込んだ。
「中学生の時に4時とか5時までゲームをして、昼学校で寝るみたいな不思議な生活をしていた。幻覚の世界というか、自分の現実じゃなくて楽しい世界に逃げる分にはちょうどよかった」
ゲームのやり過ぎから、三森さんは体調を崩すが、同居する父は見て見ぬふり。そこに被せるように、近くに住む母から驚くべき話が飛び出した。
「『聞いて~! 私ね、パパとね、ようやく離婚したの~!』と言われた。『離婚の喜び』を女友達に語るみたいに話すので『マジかよ…』と引いちゃって何も言えなくなった。『もう親に頼っちゃダメだな』『誰も助けてくれない』と思ってから(ゲームを)やめることになった」
ゲーム依存を脱し独り立ちすべく、沖縄の大学に進学した三森さん。そこでもともと好きだった絵の勉強に励んだのだが。
「フラッシュバックを繰り返してしまったというか。幼少期のこととか、親に対する苦しみ、悲しみとかで。自殺未遂じゃないが、死のうか死ぬまいか、みたいなことやってたりとか、鬱っぽくなっていった」
そのときに依存したのが「買い物」。購入したのは、使いもしない本や画材。捨てるとわかっていても、買うという行為をやめられなかったという。
「そうしてる間だけは、自分の心の中にあった満たされなかった気持ちとか、(買う行為で)勝手に愛情を得た気分になっていた」
弱る心を奮い立たせるべく、三森さんはさらなる刺激を求めるように。買い物と並行して依存したのが「塩分」だった。
「味噌汁の中に味噌をスプーン10杯ぐらい、ボトボトボトッて落として飲むと、すごい舌しびれる。そうしてると、『死にたい』とかっていう気持ちがなくなるというか、感覚的に気持ちが上がる。『私って今生きてる』みたいな。一種の自傷行為だ」
強烈な濃さの味噌汁を1年ほど飲み続けた結果、体重が8キロ増え、足のむくみがまったく取れない状態に。
「内科に行ったら『精密検査を受けたほうがいい』と言われて。大きな病院に行くと『腎臓が深刻』『あとちょっと(発見が)遅れてたら人工透析手前でしたね』と言われた。ネフローゼ症候群だった」
入院したことで体調はみるみる回復。食事制限のおかげで、塩分への依存はなくなった三森さん。
大学卒業後は、イラスト制作と飲食店のアルバイトを掛け持ちした。しかし、どちらの仕事も忙しく、三森さんは疲労を吹き飛ばすアイテムを探し求める。
「調べたら『カフェイン錠剤』というものが出てきて『これだよこれ!』と思った。一錠飲んだら体に合ってたのか、めっちゃ目が冴えたような、体がシャキッとしたような感じがして。『なんだこの魔法のような錠剤は』と感じた」
飲むのは平日だけと決め、依存しないよう気を付けていた三森さん。そんな中、やりたかった絵の仕事が2件も舞い込み、引っ越しも重なってスケジュールが回らなくなってしまう。
「その時に、やっちゃいけないと思ってずっとやってこなかった、『2錠飲む』ことをやり始めた。気づいたら最終的に3錠飲んでいた」
錠剤を連続服用しないと起きていられないほどのカフェイン依存に陥ってしまったのだ。
「今ここで抜かないと本当にやばいと思って(カフェイン錠剤を)抜いた。抜いたら、すっごい眠くて。離脱症状すごいひどくて、3日ぐらい本当に起きれなかった」
残りの錠剤はすべて捨て、二度と口にはしなかったという三森さん。カフェイン依存の恐ろしさを知ってもらおうと、自身の体験を漫画にしてSNSに投稿したところ、思わぬ反響があった。
「200人ぐらいしかフォロワーいないようなTwitterだったが、またたく間に5000人ぐらいにフォローされた」
これが依存症に関するコミックの出版につながった。そして本の監修者である依存症専門家との出会いが三森さんの心の穴を埋めてくれた。
「その人に初めて自分の今まで隠してきたことを話した。そのとき受け入れてくれて、『でもそれって、生き延びるための依存だったんですよ』と言われ、それがかなり心に沁みた」
専門家の一言で救われた心。今度は自分が誰かを救いたいと現在三森さんは依存症に関する講演会やオンラインでの自助グループ活動を続けている。
「(依存症を)やめられない自分っていうのを責めないというところから始めて欲しい。自分自身が今のその状況とか、苦しいこととかを生き延びるために、今そういう依存行為をしているというふうに考えて、あまり後ろ向きに捉えないで欲しい」
(『ABEMAヒルズ』より)
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