アメリカ大統領選挙でトランプ氏が優勢と伝えられているが、背景としてリベラル勢力の弱体化が指摘されている。日本でも、岸田政権が自民党の裏金問題で支持率を落としているが、対抗する野党が大きく支持を伸ばしているわけではない。
リベラルをめぐっては、個人の自由を尊重するあまり、それを他人に押し付けて論争になることも。対話を生む空間はどう作ればいいのか。『ABEMA Prime』で議論した。
ネット掲示板「2ちゃんねる」創設者のひろゆき氏は「リベラルとリベラル仕草がごっちゃになっている」と指摘する。
「本来のリベラルは論理的に物事を考える。“人類皆平等がいい”というのは合理的な論理だけど、実際の社会では友達が大事、同じ民族が大事だってことで、論理が感情に変わっていく。これがリベラル仕草。例えば表現規制の話にしても話し合いで落としどころを探るのではなく、“私はこれが見たくない”“反対する人からは発言権を奪おう”となってしまう。成田悠輔さんの話もそうだ。自分たちの主張する権利を取られそうになると感情で動く。こういう人たちがリベラルを名乗っていて、みんなもそう思ってしまっている」
また、ドワンゴ顧問の川上量生氏は過去にXでリベラルに言及している。「リベラルなオタクがなぜ左翼ではなく保守派となり、自民党の支持層を形成したのか」「自民党よりも野党のほうが自分たちの『自由』を奪う可能性が高いと判断したから」とし、日本のリベラル勢力は反省すべきとしている。また、Xで発信する人たちについては「書き込んでいる人のレベルがだいぶ下がっている」「議論が好きな人は、知ったかぶりで喧嘩売るとかやめたほうがいい。議論に付き合ってくれる、まともな人がどんどんいなくなるだけ」と苦言を呈している。
川上氏は「botみたいな人、要するに“自分の意見を言う”“反対する人の邪魔をする”ことが唯一の目的みたいな人が増えている。それが大多数かどうかはわからないが、まともな議論をしたい人は去っていく」との考えを述べる。
ある調査で、ネットでの議論が不毛な理由として「誹謗中傷する人」の存在が上位にあげられている。ひろゆき氏は「議論はできると思うが、それは話し合える人同士の場合だ。“俺たちはリベラルだ”と言って、その気がない人、誰かの発言権を奪おうとする人とは不可能」との見方を示す。
政治学・社会思想史が専門の白井聡・京都精華大学准教授は「無理だろう。私もXなどを使って自分の言いたいことを発信しているが、基本的には言いっぱなしで、論争はしない。しかも、日本は匿名でやっている人が多い。僕は顔を晒して本名で発言しているが、匿名でクソリプをつけてくる人はお話にならない」と指摘。
こうした意見に、川上氏は「昔は社会で発言ができず、閉じ込められている人がたくさんいた。そういう人たちがネット空間に出てきて、ろくでもないコメントをするわけだ。ただ、それは社会が生み出した矛盾で、今まではないものとして無視してきた。僕たちはそれを受け止めるべきだし、寄り添うべきだ」とした。
白井氏は、リベラルを「国家権力の介入を最小限にとどめて、個人の自由と経済活動の自由を尊重する思想」と定義。アメリカと日本のリベラルは「社会民主主義」とほとんど等しく、人民・民族・性差・宗教など個人のアイデンティティを尊重して、ポリコレなどの社会正義の実現を訴えるものとしている。
「古典的自由主義の価値を見直すことが大事だと思う。川上さんが言うように矛盾が生じうる中で、国家権力を使って自由を実現することは常にはできない。日常で自由がどんどん減ってきていると感じるが、一方で、自由であるためには自我をきちんと確立する必要がある。群れることを前提にできない中では強い個人が求められる。それができず、リベラルを批判する側も権威主義と同一化していく現象が今起きている。これはアメリカでも日本でもそうだと思う」と述べた。
川上氏は「今、減っている自由は、権力によるものではなく、国民自身が減らしていると思う」と指摘する。
ひろゆき氏は「法律上許されていることであればある程度個人の判断で、揉め事は民事でやればいいはずなのに、なぜか社会の問題にしてしまう。“これはやっちゃいけない”という暗黙の了解ルールが増えていて、日本はその反発が大きくなっていくのではないか」と推察した。(『ABEMA Prime』より)
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